メーカーコンフィデンシャル BMW
トヨタとの提携を最大限活かす。独自方式は中止
───BMW燃料電池車プレゼンテーション

 BMWグループの「燃料電池車に関するプレゼンテーション」が9月26日に行なわれた。1997年のCOP3(京都会議)で温室効果ガスの削減目標が定められたのを皮切りに、さまざまな対策が進められてきたが、現代でも地球温暖化に対する対策が大きな課題であることに変わりはない。2015年11月にパリで行われたCOP21では、「パリ協定」として地球温暖化を摂氏2度未満(理想は1.5度)に抑えることが目標として掲げられた。

 今回来日したパワートレーン研究部門執行役員のマティアス・クリーツ氏によれば、BMWの本国では、2020年までにCO2を1990年比で40%下げることと、将来的には80%以下にすることが同意されているという。また、ドイツ政府の気候保護計画2050(ドラフト・バージョン 2016年6月9日発行)では、

  • 基本的に2050年までに運輸業界においては、化石燃料の依存から脱却を目指す。
  • 電動化技術が、既存の内燃エンジンの高効率化を補完する。
  • 余分な電力を、水素または合成燃料の生産に使用する。
  • 運輸業界における再生可能エネルギーと環境に優しい交通社会を作り上げるために、フィーベート・システム(燃費の悪い車には課徴金を課し、燃費の良い車には税額を減免するシステム)を確立する。

 が挙げられ、これをもとに2017年上半期中に、ヨーロッパの法案により、新し作られる車両の温室効果ガスの排出目標が規定されることになっているという。

 技術的な開発期間としてみれば、BMWとしては、2020年はもちろん、2050年でも「明日に等しい」という認識を持っており、これに対応するための現在、開発を行っていると説明された。

 

通勤や都市内はEVでいいが、長距離にはやはりFCEV

 

 このような状況の中、BMWは、大きくBEVと、FCEVの開発戦略を打ち出している。BEVとは、いわゆる電気自動車でバッテリー電源によってモーターを駆動するもの。すでに「i3」が市場投入されて一定の評価を受けているのはご存知のとおり。ただ、どうしてもバッテリー充電ということで航続距離の問題がありBMWとしては通勤や都市内の移動を考えた小・中型車に適した技術という位置付けだ。

 では、大型車や長距離移動に適し、そしてCO2排出を抑える切り札?は何かというと、FCEVだという。いわゆる燃料電池車だが、これは酸素と水素を反応させて発電しモーターを駆動して、排出されるのは水ということになり、エコという意味では(水素の精製過程によるが)期待ができるものとなる。

 今回のプレゼンに持ち込まれた燃料電池システムはトヨタとの共同開発によるもので、今後とも協力体制の中で開発されていくという。ただし、「BMWらしい走り」を実現するために高圧水素タンクはフロントアクスルとリヤアクスルの間にトンネル状に配置、駆動輪をリヤとすることなどのこだわりを見せている部分も多い。動力性能は150kW(200PS)で、0-100km/hが8.4秒ということでスポーティカー並みといえるだろう。重量配分は当日確認したところ、56:44程度とのことだった。航続距離は水素充てん量7.1kgで、700kmという頼もしさ? だ。さらにBMWとしては、将来的にこうしたFCEVを従来の内燃機関搭載モデルの10%増し程度の価格で投入することを考えているという。

  このようにCO2削減という意味ではメリットの多いFCEVの普及には、水素ステーションのインフラ整備が喫緊の課題となる。これは私企業が推し進めるには無理があり、政府、業界、エネルギー団体、などを含めた強固な体制が必要となるだろう。また、日本では都市ガス改質水素を燃料に使うとなると、CO2が排出されるため「Well to Wheel」の概念からいうとまだ改善の余地が多い。つまり、水素生成過程で発生するCO2も規制の対象になるということだ。

報告:飯嶋洋治

写真:怒谷彰久

 

トヨタの燃料電池に手を加えて5シリーズに搭載。ただし、BMWらしい走りにこだわって、MIRAIがFFなのに対してこちらの駆動方式はFRとした。

 

プレゼンターはドイツから来日した執行役員のマティアス・クリーツ氏。余談だが、クリーツ氏に同行した女性通訳の出来栄えが出色だった。

 

「技術的には市場への投入準備は完了している。問題はインフラのセットアップと、高いコストだ。顧客は現行モデルの約1割アップならOK」だとか。

 

最高出力200馬力、0−100km/h加速8.4秒。水素の充填は3秒。4.5kg入れれば450km、7.1kgなら700km走れると言う。水素タンクは車体中央下。

燃料電池部分は原則としてトヨタ製だが、電気モーター、ポンプ、コンプレッサー、コントロール系などはBMW独自開発。市場投入は2020年ころ。