トヨタ 新型プリウス

スムーズで滑らかな走りに加え、好燃費も達成してくれる新型プリウス。

フロントウインドーの傾斜角はレクサス LC並みに強められた、スタイリッシュなプロポーション。

歴代のプリウス同様、リアゲートを備える5ドア セダン。テールランプは最近流行の一文字タイプ。


上級グレードは2Lエンジンにモーターを組み合わせる。リアにモーターを備える4WD(E-Four)も設定。

ステアリングホイールの上方から見るトップマウントメーターが独特。意外と見やすい。

Zグレードは合成皮革の8ウェイパワーシートを標準装備。長時間のドライブでも疲れにくい。


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 5代目にフルモデルチェンジした新型プリウス。昨年11月にワールドプレミアされ、ハイブリッド車(HEV)は今年1月から、プラグインハイブリッド車(PHEV)は3月から発売された。先日、あらためて試乗する機会を得たので、その印象を報告しておこう。

発売後10カ月以上経つが高人気が続く

 発売以来、圧倒的な人気を集めている新型プリウス。今年上半期(4月〜9月)では5万4005台(前年比382.7%)を販売し、登録車ではヤリス、カローラ、シエンタ(いずれも派生車種含む)に次ぐ第4位を占めている。

 あまりの人気ぶりに、一部のディーラーではこの夏以降はオーダーをストップしていたほど。ショールームには展示車はおろか、カタログさえも置いていない状態。それでも10月後半からは受注が開始された。とはいえ、オーダーから納車まではグレードなどによるが、2年近く待たされることもあるようだ。

 さて、今回の試乗車はHEVではトップグレードとなる「Z」。新型プリウスも歴代のアイデンティティを継承し、トライアングルシルエットの5ドア セダンというスタイルを継承しているが、従来型までとはプロポーションが異なる。長く、広く、そして低いボディスタイルはセダンというよりはスペシャリティクーペに近い印象だ。

 フロントウインドーは、トヨタ(&レクサス)車の中ではもっとも傾斜角度が強いレクサス LCに匹敵するほどの傾きで、ボンネットとほとんど連なっている。最近のトヨタ車に共通のハンマーヘッドのフロントマスクは近未来風で、個人的には気に入っている。一文字のテールランプはリアビューのワイド感を強調している。トヨタが「一目惚れするデザイン」と謳うのも納得できる。

熟成したハイブリッドシステムによる「虜にさせる走り」

 これだけ傾斜角度が強いと乗り降りしにくいのでは…と思ったが、頭をぶつけるようなことはなく、スッと乗り降りできる。シートなどの位置関係が絶妙なのだろう。ちなみに、試乗車(Zグレード)は8ウェイの電動アジャスト付きのスポーツシートで、合成皮革の表皮が標準装備。このシートの出来が良く、長時間のドライブでも腰にくることはなかった。

 コクピットに着くと、ステアリングホイールの上方から見るトップマウントメーターが目をひくが、これが思ったより見やすい。運転支援システム(ADAS)やオーディオなどのスイッチ類もステアリングホイールにセットされ、慣れればブラインドで操作できる。センターダッシュのディスプレイオーディオもタッチ式で扱いやすい。一部の操作は慣れを必要とするものもあるが、エアコンなどは物理的スイッチも採用しているし、最近のクルマに乗り慣れている人なら問題なく扱うことができるだろう。

 スタートボタンを押してシステムを立ち上げ、Dレンジに入れて走り出す。エンジンを始動せずにモーターで発進し、ある程度の車速まで上がるとエンジンがかかってアシストする。高速道路などではエンジンが主体となって走ることもあるが、クルージング状態では高速でもモーターだけで走行する。

 この、一連のパワートレーンの動きは、アクアからセンチュリーまで(レクサスもそうだが)大きく変わらない、トヨタのHEVらしいものだ。それでも、バッテリー容量などの関係か、従来型よりは街中走行でもモーターのみで駆動する領域が広がっている。しかも静かで滑らか。これこそが「虜にさせる走り」なのだろうか。

 市街地でも、郊外路でも、そして高速道路でも、走りはいたって快適だ。今回はワインディングロードで走りを試すような機会はなかったが、ハンドリングは素直。タイヤは195/50R19のヨコハマ ブルーアースGTを装着していたが、これが少し硬く、また室内騒音が低いぶんタイヤのロードノイズが気になるかなという印象だった。

トヨタセーフティセンスのスキルはきわめて高い

 ドライブモードはセンターコンソールのスイッチで、エコ/ノーマル/スポーツ/カスタムと切り換えられる。エコでは発進が少し緩やかで、気温の高いときはエアコンの効きが今ひとつとなるが、市街地を流している限りはタルさを感じることもない。スポーツでは加速が鋭く、ハンドリングも少々重くなる。普通に乗っている限りはノーマルでも十分に走る。

 安全運転支援システムのトヨタセーフティセンスは、さらに進化したようだ。レーダークルーズコントロールは全車速追従機能付きで、車線内を安定して走行を続ける。車線変更時の補助やカーブの速度抑制機能なども備わり、スキルはきわめて高まっている。もちろん過信は禁物だが、やはりADASは、ある程度のレベルまで標準装備を義務づけていくようにしたもらいたいものだ。

 短時間だがリアシートにも乗ってみたが、ヘッド&フットスペースに不満はない。シートバックは従来型より3度寝かせたそうで、リラックスして座れる。リアドアハンドルはサイドウインドー後端にあり、少し扱いにくさも感じるが、ここはデザイン優先だったのだろう。子どもには高い位置になるが、おとなが開閉してやれば問題ないことだろう。

 ラゲッジスペースは家族4人の小旅行には十分以上の広さがあり、リアシートバックを全倒すれば、ちょっとしたワゴン並みに使うことも可能だ。シートまわりの物入れやUSB端子なども十分に備わっている。

 今回、取材の足も兼ねて3日間で431.6km走り、平均燃費計の数値は26.4km/Lを記録した。高速道路と市街地の割合は、ほぼ半々。ドライブモードはノーマルが中心で、オートエアコンは25度にセットしたまま。もちろんエコランなどはせずにこの数値だから、たいしたもの。

 「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」を備えた新型プリウス。高人気が続くのは無理もないと、あらためて納得させられてしまった。

報告/写真:篠原政明


■ トヨタ プリウス Z(HEV・2WD) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4600×1780×1430mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:1986cc
●最高出力:112kW(152ps)/6000rpm
●最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4400−5200rpm
●モーター最高出力:83kW(113ps)
●モーター最大トルク:206Nm(21.0kgm)
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・43L
●WLTCモード燃費:28.6km/L
●タイヤサイズ:195/50R19
●車両価格(税込):370万円

最終更新:2023/11/08