5月24〜26日の3日間、恒例の「人とくるまのテクノロジー展2017横浜」がパシフィコ横浜にて開催された。今年は主催の自動車技術会の創立70周年ということで、特別展示として、時代の転換点を乗り越えてきた技術の結晶を、初代クラウンを始めとして1950年代以降の実車や部品を並べて、その進化の歩みを紹介していた。それにしても、若者の自動車離れや紙媒体の自動車雑誌は氷河期を迎えていると言われる中、かくも多くの人が集まるのかと感心するほど、会場は毎日賑わっていた。
自動車のテレビCMを見れば明らかなように、クルマをアピールするのに技術的解説などなく、雰囲気でユーザーに訴えるものばかりだが、技術に興味を持つ人も多いことを心強く思った。もちろんその多くは一般ユーザーではなく、裾野の広い自動車関係者であるとは思うが、それでも自分の専門外の技術にもきっと興味を持って知識を吸収しているものと思う。業界の中に身を置くものとしてうれしい限りである。
この展示会は現在先端を行く自動車技術が数多く展示され、その分野も多岐にわたっている。私としての興味はやはり高効率を追求したハード面の技術だが、今年も電動化や軽量化の技術展示が多かった。電動化は車両の駆動の電動化だけでなく、ポンプ関係やターボなどで特に進展している感が強かった。また、軽量化は構造や材質面での新技術が、エンジンからサスペンション、ボディ、その他あらゆる部品に及んでいることを実感した。
ここでは数ある展示の中から、私が強く興味を持つハイブリッド技術のひとつを紹介しよう。トヨタの「Multi-stage THSII」はレクサスLC500hに搭載された新開発のハイブリッドシステムである。従来とどこが違うかというと、トランスミッションが搭載されたこと。トヨタのハイブリッドシステム「THS」は元々トランスミッションがない。というより、システムがトランスミッションの役割もしている。たとえばエンジン回転数が同じなまま車速が伸びていく場面というのはまさにCVTと同じ役割をしているわけだ。これを電子式CVTという言い方もしていた。
しかし、THSの歴史を見ると、かつてエスティマハイブリッドが「THS-C」としてベルト式CVTとTHSを組み合わせたことがある。また、最近ではFR用THSでリダクションギヤ付を付けたりもした。これはいわば2段切り替えのトランスミッションと考えることもできる。今回の「マルチステージTHSII」は4速のATを組み合わせたものだ。
これを採用した背景にエンジンを5.0L・V8から3.5L・V6に替えたことがある。これは大きなFRシステムをより小さくコンパクトにする方向性のためだが、出力が若干落ちるが駆動力(トルク)は落としたくないとして、トランスミッションを付加したものだ。これにより従来より広い車速域でエンジンを使用できるようになり、発進駆動力が向上するとともに、高速でも効率の高い領域でエンジンが使えるなどのメリットを出している。トヨタの大型のFR車用ハイブリッドとしては、今後これが標準となっていくのだろう。
なお、プリウスPHVでは初めて発電機も駆動に使うようにしたが、このシステムでは採用していない。
※「人とくるまのテクノロジー展」は6月28日(水)から30日(金)までポートメッセなごやで開催されます。
報告 & 写真:飯塚昭三
自動車技術会創立70周年記念の特別企画で展示されたスバル360。
サスペンションバネの軽量化の例(ニッパツ)。手前のコイルスプリングは中空で、後ろはCFRP製のスプリング。右は中空のスタビライザー。
マルチステージTHSIIのカットモデル。左端が発電機で動力分割機構を挟むように駆動モーター、そして左端が4速のAT(同様のカットモデルはアイシンのブースにもあった)。