「2台前を見た運転」で渋滞は減らせるか?

丸茂 喜高

帰省シーズンになると、ニュース番組などで渋滞の緩和方法や旅行時間の短縮方法について取り上げられることがある。そこでは、前方を走行する車両(先行車)との車間距離をなるべく空けることや、頻繁な車線変更は行わずに、ひたすら走行車線を維持することなどが挙げられる。これらのことが普及すれば、それなりの渋滞軽減効果は期待できると考えられるが、何か他に策はないであろうか。

渋滞の原因は種々あるが、最終的に鍵を握っているのは、自動車を運転するドライバの反応である。先行車の速度変化に対して自車の加減速が遅れたり、先行車との車間距離の変化に対して過剰に反応したりすることが、後続車両に伝播することで渋滞が発生しやすくなる。このようなことを防ぐには、いったいどのようにすれば良いのか。模範的な解答としては、先行車の速度変化に対して遅れることなく、かつ、あまり過度に反応しないことである。これらを実現するためには、先行車がこの先、加速するのか減速するのか、その速度変化を予測する必要があり、一般に人間が何かを予測する動作は疲労を伴う。

先行車の速度がなぜ変化するのかを考えると、先行車の前を走行する、2台前の車両(先々行車)の加減速による場合が多い。先々行車の速度変化がわかれば、先行車の挙動をさほど注視しなくても、予測した運転が可能になる。実際、直接視認可能な先々行車の有無で、ドライバの運転操作を解析してみると、先行車のみでなく先々行車の情報も用いながら、アクセルやブレーキのペダル操作を行っていることがわかる。

先々行車が視認可能であっても、減速の場合はブレーキランプによる予測ができるが、加速の場合にはそれを知らせる直接的な情報がないため、どうしてもドライバの視覚に頼らざるを得ない。そこで、先々行車と自車との相対関係を活用し、ドライバに加減速操作の予測を支援するシステムが提案され、それにより先行車との衝突リスクの変動を抑制し、無駄な加減速を回避することで燃費にもよい影響を及ぼすことが示された。さらに、自車の安全性や燃費といったミクロ的な効果のみでなく、周辺車両も含めたマクロ的な観点から、交通流シミュレーションにより渋滞軽減効果も確認されている。

先行車が、背の高いトラックやバスなどの場合には、2台前方の車両を目視する術はないが、職業ドライバの場合、比較的予測した運転が行われており、大型車は加減速も緩やかであるので、これらの車両にはそのまま追従してもよい(前方を見渡せない事によるストレスは避けられないが)。2台前の車両の動きが重要だとはいっても、肝心の1台前の車両と衝突しては元も子もないため、先行車に注意しつつも先々行車の挙動に意識を向ける運転が、多くの車両で実現することを願ってやまない。

<参考文献>
1.丸茂喜高、田中健太、福山雄大、鈴木宏典:先々行車の挙動を考慮したドライバの追従制御モデルの検討、自動車技術会論文集、Vol.44、No.5、pp.1281-1286 (2013)
2.田中健太、丸茂喜高、鈴木宏典:先々行車の挙動を考慮した評価指標の呈示が運転行動に及ぼす影響、ヒューマンインタフェース学会論文誌、Vol.15、No.2、pp.131-139 (2013)
3.H. Suzuki A. Tanaka Y. Marumo and T. Nakano: Driver Assistant System to Anticipate Pre-Preceding Vehicle and Its Effect on Traffic Flow,12th International Symposium on Advanced Vehicle Control (AVEC14) pp.582-587 (2014)

報告:丸茂喜高


最終更新日:2017/08/27