三菱 エクリプス クロス
MITSUBISHI ECLIPSE CROSS

コンパクトクラスのSUV。最後の純三菱車

本当はグラベルでの走りも試してみたかったが当日はウエットのターマックのみ。だが、S-AWCによる安定性は確認することができた。

三菱がこだわったのがウェッジシェイプの「前傾姿勢」だ。サイドシルエットはアスリートのクラウチングスタイルをモチーフとした。

リヤビューは前傾したリヤウインドウと、それを二分するチューブ式LEDテールランプだ。ルームミラーで見ても邪魔にはならなかった。


ブラックとシルバーというモノトーン基調のダッシュボード。前方の視界を確保するために水平基調を採用した。

シートファブリックはスポーツファッションアイテムからインスピレーションを受けたブラックを基調とした落ち着いたデザインを採用。

エンジンは新開発1.5リッター直噴ターボ。可変バルブタイミングの進角作動速度を30%アップさせ、発進時のレスポンスを向上させた。


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 コンパクトSUVとしてデビューしたエクリプス・クロス基本的なプラットフォームはアウトランダーをベースとしており、サスペンションのホイールベースやトレッドなどのディメンションはほぼ同じだ。ボディのフォルムもアウトランダーを彷彿とさせるが、ボディサイドのプレスラインは三菱車としては初採用で、前傾姿勢を連想させるウェッジシェイプのデザインとなっている。
 搭載されるエンジンは新開発の1.5リッターターボ。ボディサイズはアウトランダーより全長で30センチ近くも短くなっており、実際に運転してみると「本当に1.5?」と思ってしまうほどの加速感を味わうことができる。
 エンジンは最近の主流である、いわゆるダウンサイジングターボで、直噴ターボを採用した三菱初採用となる4B40型エンジンだ。ターボラグを減少させるために小型の斜流タービンを採用。IHI製で、大きさで言えばTD025となる。例えばコルトバージョンRのタービンがTD035なので、軽自動車用よりもやや大きめのタービンといったところか。
 最大出力は150PSだが、ピークトルクは24Kgf-mとアウトランダーに搭載されている2.4リッターエンジンの22.4Kgf-mを上回り、出力曲線を見ても、2.4リッターNAエンジンの最大トルク発生回転が4200回転なのに対し、2000〜3500回転で発生する。確かに爆発的な加速感はないが、アウトランダーより500Kgも軽い車重とも相まって、市街地からワインディングまで「かったるい」と思わずに運転できる。
 エンジン本体はエキマニ一体型のシリンダーヘッドを採用している。ヘッド内部にマニホールドを設けることで、上下にウォータージャケットを配することができ、排気温度を下げて出力効率を高めている。
 また、ブースト圧をある一定以上に上げないためのウエストゲートバルブは、従来は排気圧によってアクチュエーターを作動させるのが主流だったが、この4B40型では電動モーターを採用した。排圧が高くなると、設定した圧以下でバルブが開いてしまうことがあったが、電動モーターならその心配がないわけだ。
ランエボで得た4WDのノウハウをさらに進化
 三菱と言えばパジェロやランサー・エボリューションに代表されるように、4WD駆動方式の先駆者でもあるが、駆動方式にはもちろん4WDが採用されており、三菱のお家芸でもあるアクティブヨーコントロールのAYCをはじめ、アクティブスタビリティコントロールのASCなどを組み合わせたスーパーオールホイールコントロール(S-AWC)を採用。
 前後のトルク配分もオート、スノー、グラベルを選べるようになっており、このあたりはランサー・エボリューションからの技術が継承されていると言っていいだろう。ランサーはセンターデフで制御しているが、エクリプス・クロスではセンターデフはなく、リヤデフの前に組み込まれている湿式多版クラッチの滑り具で前後のトルク配分制御している。
 試乗当日はあいにくとウエット路面で、多少ハードなコーナリングも試してみたが、限界を超えそうになると「カカカ」とブレーキで横滑りを制御してくれることを体感できた。ラリーをたしなんでいる身としては、もう少しドライバーに制御させて欲しいという思いはあるが、安全を考えれば仕方のないことなのかもしれない。
 また、室内の使い勝手ではヘッドアップディスプレイが採用され、スイッチを操作することでメーターパネルから透明のパネルがせり上がってくる。単にパネルが上下するだけでなく、メーター上部の蓋が動いてパネルが上下するギミックでなかなか凝った作り。必要もないのに動かしたくなる。ただ、ディスプレイの枠が少々目障りだった。
 センターコンソールにはi-Phoneやアンドロイドと連携してアプリを使用できるスマートフォン連携ディスプレイオーディオ(SDA)も採用。7インチのディスプレイを装備し、そこにスマホのアプリを表示し操作できる。ただし、スマホ購入後に新たにインストールしたアプリは表示できず、デフォルトでインストールされているアプリのみが表示されることになる。
 だが、Bluetooth接続による音楽再生やハンズフリー通話も対応でき、駐車時の安全確認をサポートするマルチアラウンドモニターなども装備され「今どき」のクルマに仕上がっているのは間違いない。ただオジサン世代では、スマホと同じように、すべてを完ぺきに使いこなすのは難しいかもしれない。
報告:若槻幸次郎
写真:佐久間健

最終更新:2018/06/16