日産セレナe-POWER
NISSAN SERENA e-POWER

ブレーキペダルへの踏み替え回数が大幅に減る

100%モータードライブのセレナe-POWER。ガソリンエンジンは効率の最もよい2400rpmを通常使う。

動力としてのe-POWERはもちろん、上部だけ開けることのできるリアハッチなど、ミニバンとしての実用性も高い。

e-POWERは分類としてはシリーズハイブリッドに入るが、在りものを効率よく使ってコストを抑えて完成させている。


100%モータードライブだからこそのワンペダルドライブ。これによりブレーキペダルへの踏み替え率は7割減った。

車速によりエネルギー回生のレベルを変えて減速感を調節、違和感のないように制御している。

ノートに始まった日産のe-POWER作戦は見事に成功し、ワンブランドとしてのミニバントップの座をトヨタから取り返した。


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 セレナe-POWERについては車両の発表時点で概略を説明して本ウェブ上に掲載されているが、ここであらためてセレナe-POWERについて主にワンペダルの有用性について説明をしてみる。
 日産の100%電動車の最大の特徴的は「ワンペダルドライブ」と呼ぶブレーキコントロールシステムである。これはモーターによる減速回生を最大限利用する技術で、セレナe-POWERでは最大0.15Gの減速を行える。ガソリン車のエンジンブレーキでは0.05Gほどだから、その差は大きい。これによりアクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替えは7割減と大幅に減っているという(ちなみにeペダルと呼ぶ通常の機械式ブレーキと強調するリーフでは0.2Gの回生力を出し踏み替えが9割減)。
 なお、アクセルペダルをパッと離すか、ゆっくり離すかでその後のGの出し方を変えている。すなわち、急な離し方をするということは緊急性が高いと判断して、強い回生ブレーキ力出すわけである。また、車速に応じて減速Gの出し方も変えている。50km/h以上では0.15Gの回生力を徐々に下げ、100km/hでは0.08G程度まで下げることで高速走行時に違和感のないように制御している。ブレーキペダルを踏まないということは停止までエネルギー回生を行っているということで、燃費・電費の向上をもたらしているのはいうまでもない。

雪道でのワンペダルの有用性と4WDについて
 試乗会では特に低ミュー路での体験はできなかったが、ワンペダルは雪道などのドライビングに大きな効果を生むシステムだ。雪道ではブレーキペダルに踏み換えるのは結構緊張するものである。特に初心者が雪の下り坂に遭遇した場合など、踏み替えには勇気が要るほどだろう。しかしワンペダルならアクセルを戻すだけなので、コントロールは格段に楽になる。
 なお、日産は近々セレナe-POWERに4WD車を設定すべくテスト中だ。日産はもともとFFのガソリン車にリヤモーターを設置した4WD「e-4WD」というシステムを持っているが、これはエンジンで発電した電力を使うため時間的な遅れがあった。しかしセレナe-POWERではリチウムイオンバッテリーの電力でリヤモーターを駆動するので、素早い駆動が可能になっている(リヤモーター用には電圧は下げている)。スタート時に前輪のスリップを検知してリヤを駆動するものもあるが、セレナe-POWERの4WDではスタート時には常にリヤモーターも駆動する。雪路ではそのまま4WDで走るが、ドライ路面ではリヤの駆動はその後解除される。圧雪路では2WDでも結構走れるが、積雪路ではやはり4WDの効果が非常に高く有効である。今冬に間に合うよう4WD車の早い発表が待たれる。
 セレナe-POWERは燃費・排気ガス対策だけでなく、クルマに楽をもたらす。運転が「楽」になるとともに「楽」しさをもたらす、クルマというわけだ。

日産が取り組む電動化への方向性
 最後に日産の電動化の方針について紹介しておこう。日産は「ニッサン インテリジェント モビリティ」を掲げているが、その中の「もっと走りの快感を」を実現するためのひとつが、「インテリジェントパワー」である。その中身は車両の電動化であり、パワーソースの選択の自由度を確保ししながら、100%モーター駆動の走りを提供しようというものだ。そのシステムとしてはBEV(バッテリーEV)、FCV(燃料電池車)、e-POWERなどが考えられるが、当面日産はBEV(バッテリーEV)とe-POWER(シリーズハイブリッド)の2本立てで、さらに厳しくなる燃費、排気ガス問題に対応していく方針を取っている。e-POWERは今後さらに多くの車種に採用されていくだろう。
報告:飯塚昭三
写真:佐久間健 
イラスト:日産自動車

最終更新:2018/11/10