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この感触、なんと言ったらいいのだろう。シルクのように滑らかでシュバルツバルト(黒い森)のように静かで、とても心地よい。もちろんエンジンを回せば控えめに声を発するが不快な要素は一切ない。
高速道路の直線ではすこぶる安定性しているし、ワインディングでの手ごたえもしっかりしている。しかも低速での小回りも利く。「100」から数えると8代目(A6としては5代目)にあたるニュー「A6」は、メルセデス・ベンツともBMWとも異なる快適性を手に入れていた。
シングルフレームはA6から始まった 13年前のこと
アウディでまず思い浮かぶのはシングルフレームグリルだ。その先鞭をつけたのがこのA6である。2006年、そう13年も前のことだ。最初に見たときは驚いた。それまでの、どちらかという地味なフォーシルバーリンクスと何と違うことか!と。
最近のレクサスや、まるで銀歯のようなトヨタ車の一部のグリルほどではないが、いかにも派手にうつった。アウディがここまでやるか? しかし登場から10年以上たつとさすがにこちらも慣れてくる。グリルが必要以上に目立たなくなった。
この顔の故かどうかは分からないが、アウディは見分けにくいとも言われる。細部はもちろん異なるが、アウディの思惑通りにA4、A6、A7、A8の顔の印象は似ている。しかしサイズははっきり異なる。実物を前にするとそれが実感できる。
A8はド〜ンと5170?、A6はちょっと謙虚に4950?、A4は控えめに4750?。A6のホイールベースは2925?でA7と共通。全幅も同じような展開になる。A8は奔放に1945?、A6はほどほどの1885?、A4は現在の標準とも言える1840?。
この中でぼくが最も評価していたのはA8だ。昨年のRJCのイヤーカー選びではA7の後塵を拝したが、個人的にはA8のゆったりした感じの方が好ましいと思った。軽井沢のワインディングで乗ったA7はやや足が固すぎた。
しかし、新A6に乗って少し印象が変わった。価格は別にしてもA6の存在意義は思っていた以上に大きい。どこがどうというわけではない。ただ、ドライビングフィールがA8と比べると微妙に進化している。統一性が取れたというか。乗り心地は変わらないのにしっかり感が増したというか。
38万円払ってオプションのドライビングパッケージを選ぶと、ダンピングコントロールサスペンションとダイナミックオールホイールステアリング(4輪操舵)が装備される。ダンピングコントロールサスペンションの乗り心地は想像以上だった。コイル式なのにまるでエアサスのようだ。
もっと印象的だったのは4輪操舵だ。60km/hを境に低速域では最大5度までの逆位相に、高速域では1.5度まで同位相に後輪を動かす(A8と同じ)。その効果は絶大で、高速でも低速でも抜群の安定感を見せた。ただこれ自体はアウディの専売特許というわけではないが。
しかし、この比較的大きなボディにとっては最小回転半径が50cm短くなるのはとても魅力的だ。具体的には5.7mが5.2mになる。この数値はA3とほぼ同じである。A8にも採用されていたが、このわずかの間に自然さが増したように感じた。違和感はない。
ディスプレイ化についてゆけない世代も?
国内に導入されるA6のエンジンはさしあたり3リッターV6直噴ターボ(250kW=340馬力/5200〜6400rpm 500Nm/1370〜4500rpm)のみ。セダンもアバントも正式には55 TFSI quatrroと呼ばれる。「55」というのはニューA8から始まった呼称である。数値は最高出力によって5単位ごとに変化する。55は245〜320kWのモデルが守備範囲。たとえばA8のV8モデル(338kW)は60、モデルの多いA4は35、40、45となる。
A6のエンジンはマイルドハイブリッド。A8、A7に続く3番目の電動化モデルだ。?6は48Vで最大12kWを回生しリアのリチウムイオンバッテリーに蓄える。55〜160km/hの間での最大40秒間のコースティング(惰性走行)ができ、ストップ&スタートの作動域が22km/h以下に伸びたのもA8などと同じだ。2リッターのTFSIとTDIも年内には加わる予定だ。
駆動方式はクワトロのみだが、新世代クワトロシステムによってFWD走行もできる。センターデフにクラッチを採用したからだ。通常走行でタイヤのスリップがない場合は効率を優先してクラッチを切り前輪駆動で走る。4輪駆動が必要と予測されるときはクラッチが瞬時に繋がる。もちろん前後トルク配分は自動可変される。こうした変化はドライブしていてまったく感じさせない。
インパネもA8の流れを汲む。水平基調のベースに、メーターとセンター上(10.1インチ)と下(8.6インチ)、計3つのディスプレイが組み合わされる。このディスプレイが目に煩ければブラックアウトにすることもできる。当然のようにスイッチ類は大幅に減る。仕上げは最上級。気品すら漂う。
センターのディスプレイは上下ともにタッチレスポンス式。しかもスイッチの感触が味わえる。ディスプレイのアイコンに触れると音と同時に細かい振動が指先に伝わってくる。A8の試乗会でも試そうとしたがうまくゆかなかった。今回はスタッフの人に頼んで機能するようにセットしてもらった。サウンドもバイブレーションも適度だ。楽しい。
でもね。個人的にノスタルジックなことを言わせてもらえば「ワンスイッチ・ワン機能」の方が分かりやすい。AI化で多くのことができるようになったけど、ほんとにそんなにいろいろできることが必要なのか? という疑問は心の奥に依然として淀んでいる。
それとは反対にぜひ進めてもらいたいのが各種のセーフティアシスタンスだ。アウディは、というかドイツメーカーは実質的にほぼステアリングから手を離せるレベル3に近い。これらの充実が、最近とかく問題になる高齢者の事故防止につながるかもしれない。携帯電話が待ち合わせの方法を変えたようにハードがソフトに影響を及ぼすことも多い。
“積める”静かなアバントもいい。TTに次はない
アバントもステーションワゴンとしてトップクラスに位置する。旧型に比べてホイールベースを12?延長。同時に室内長は21?も増えた。リアシートはセダン同様に3分割式だ。Dピラーの傾斜をねかしたが積載量は変わらない。
最後にTTS。エンジンは2ℓリッターで最高出力は210kW(286馬力)。A6に比べると大したこないように思うかもしれないが、100km/h加速は4.7秒 。速い! 5.1秒のA6をも凌ぐ。乗った印象もスポーツカーらしく俊敏だ。ただA6が示した“優しさ”はあまりなくて、スポーツモードでの乗り心地は一般道ではかなり固い。
バーチャルコクピット以外は伝統的なスイッチが並ぶ。コレ、コレ、コレですよ、やっぱり。ボディも昔ほど大きさを感じなくなった。ただしTTの未来はあまり長くはない。次は(数年後?)EVの新スポーツカーになるらしい。これも時代の流れってヤツだろう。
一抹の寂しさとともに「大歓迎! A6」である。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健











