日産 スカイライン ハイブリッド(1)

慣れれば離せなくなる安全親切機能

運転支援中のステアリングの挙動は極めて安定している。レーンの中央をピタッと走る。安定感高し。

カメラやレーダー、GPS、3D高精度地図データなどで周囲360度を常に監視。反応は穏やかだ。

ハイブリッドでもモーターと合わせれば最高出力は374ps。低速トルクが太いから加速は十分だ。


ナビ連動走行中。ただし、ステアリングマークなどがグリーンだからハンズフリーはできない。

表示がブルーに変わったらステアリングに手を添えて右上のスイッチを押せば、追い越しを始める。

ステアリング右下のブルースイッチが自動運転支援開始、右上の白いスイッチが追い越し承認。


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 セレナのプロパイロットとは安心感がまったく違う。
たとえばセレナで感じた何となくレーンの左側により過ぎているような印象は姿を消していた。うん、これがレーンの真ん中というなら、感覚的にも納得できる。レーンを外れそうになると戻そうとする力もはるかに優しくなっていた。レーンを外れることにクルマからの非難は聞こえない。
 走行中のステアリングもセレナのようにユラユラしない。これは、タイヤとハンドルを電気的につなぐ「ダイレクトアダプティブステアリング」のお陰かもしれない。
 この“穏やかさ”は高速道路の同一車線内の走行ではもちろん、「プロパイロット2.0」になって新たに追加された分岐や追い越し時の車線変更ではますます重要な要素になる。極端に言えば運転支援技術を受け入れやすいかそうでないかにまでつながる。
 「様々な機能がありますが、私が本当に凄いと思うのは車線中央を走行する、その精確な制御です。カメラ、レーダー、ソナー、GPS、3D高精度地図データ(HD=ヘッドアップディスプレイも)を組み合わせて使用することで、車両の周囲360度の情報と、道路上の正確な位置を把握し、ハンドルに手を添えていても、手を放していてもクルマがふらついたりすることは一切なく、常にピタッと車線中央を走り続けます。とにかくその精確さが圧倒的で、今まで乗ったクルマとはまったく次元が違うのです。」
 「高速道路上で周囲の車両の複雑な動きをリアルタイムに把握することで、熟練したドライバーが運転しているような滑らかな走行を実現しています。熟練したドライバーと聞いて、皆さんはどのようなイメージをされますか? それは、決して乗員を不安にさせることのない、スムーズで余裕のある大人の運転。耳元で“運転、とってもダンディですよ”とささやかれる、そんなドライバーなのです」
 と日産の資料(H次長が書いたらしい)には書かれている。
 ちなみに、スカイラインのパワートレーンは3種類あるが、今回試乗したのはV型6気筒3.5ℓ(225kW=306ps)とモーター(50kW=68ps)を積むハイブリッドGTである。

「車線変更しますか」とクルマが聞いてくる

 ステアリングホイールの内側についているボタンは基本的には現行プロパイロットと変わらない。ただ、直線と矢印をセットにした車線変更スイッチが追加されたのが新しい。このスイッチは、「車線変更しますか」とクルマが聞いてきたときの承認に使う。
 ではプロパイロット2.0は現行プロパイロットとどう違うのか?
 大雑把に言えば、同一車線内での支援が複数車線支援になったこと、一定の条件下でハンズオフ(ステアリングから手を離す)が可能になったこと、さらに細かく言えば、カーブの大きさに応じた減速機能、標識認識による設定車速変更、停止30秒以内なら前車に追従して走れる機能などもあげられる。これらの機能を支えるのが、ZF製の3眼カメラと3D高精度地図データである。地図データの精度は驚異的だ。前後に1m、左右に5?の誤差でクルマの位置を把握するという。この機能は高速道路でのみ有効だから、本線への合流はドライバーがやらなければならない。
 こういった機能を利用するのにはナビと連動する「高速道路ルート走行」をセットする必要がある。その区間で、車線変更と分岐の支援機能、そして追い越し時の車線変更と同一車線内ハンズオフ機能が使える。

ステアリングに手を添えるのを忘れないで

 まず、これはセレナと同じだが、ステアリング右下のブルーのスイッチを押す。これで前車追従機能付きクルーズコントロールと同一車線レーンキープ機能が目を覚まし、メーターパネルやヘッドアップディスプレイの各マークがグリーンになる。
 ただし、このグリーンの状態ではハンズオフはできない。条件が整うとグリーンからブルーに変わる。ハンズオフができるのは、3D高精度地図データがあること、中央分離帯があること、そして制限速度内であることが必須条件。このとき、メーターパネル内には周辺のトラックや乗用車、オートバイが表示される。このアイコンがけっこうホンモノっぽい。
 ハンズオフが使えないのは、対面通行、急カーブ、分岐や合流が多い地点、料金所、トンネル、工事区間などだ。こういうときには表示がブルーからグリーンに変わり警告音とともに「ハンドルを持ってください」という言葉が表示される。
 前方に遅いクルマあると「前方におそい車両がいます 安全を確認してください 右に車線変更します」と表示が出る。ハンドルに手を添えて右上の追い越しスイッチを押して承認すれば、自動的にウインカーが作動し車線変更をする準備を始め、タイミングをはかって実行する。元の車線に戻るときも自動的にウインカーを点滅させ車線を変更する。分岐点も同様で、ともにステアリングに手を添えるというのがミソだ。
 いかなる場合でもドライバー・ファーストで、もしアクセルやブレーキ、ステアリングを操作すればそちらが優先される。もちろん事故の時は自己責任になる。
 自動運転のレベル3を達成するまでには越えなければならない垣根がいくつもある。ただ、高速道路をハンズオフ(使えない区間もけっこうある)で走り、足も休ませることができるメリットは大きい。
 この支援機能が浸透するためには何よりもまずドライバーがシステムを信頼できるようになることだ。その観点からすれば、今回得られた信頼は大きい。セレナとは比較にならない。各種操作はオーナーになれば間違いなく慣れる。乗り心地など、クルマとしては多少不満も残ったが、自動運転の視点からは有意義な試乗だった。

報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

最終更新:2019/10/01