ホンダ インサイト(2)

ハッチバックからミドルサイズのセダンに

面が優しい。ゆとりを感じさせる。セダン復権とまではゆかなくてもセダンを再認識させる。

細部のラインのエッジはけっこう鋭い。全体のフォルムはクラシックで細部は現代的だ。

もはやハイブリッドというだけでは評価されない。走りも使い勝手も乗り心地も一流が必要。



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 インサイトは、1997年の東京モーターショーで独自の「ホンダIMAシステム」を搭載したハイブリッドとして発表されたコンセプトカーがルーツになっている。2年後の1999年には世界最高の低燃費リッター35kmを達成した初代インサイトが発表され、軽量でコンパクトな2シーターとして「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を7年連続受賞するなど、世界的にも高い評価を得ている。
 その10年後の2009年には、189万円という低価格で2代目が誕生し、5人乗れる5ドアハッチバックとして大きな話題となったことは記憶に残っている方も多いと思う。そして今回の3代目となるインサイトは、世界的に主流となっているミドルサイズのセダンとして登場した。

環境車という言い訳はきかない。すべてが試される

 開発責任者の堀川克己氏によれば、「その名のとおりインサイトは、時代を洞察し、ためらうことなく大胆な提案を行なってきたクルマです。ハイブリッドが当たり前になった時代に『環境車』だからという良い訳は一切許されません。デザインも走りも使い勝手も、ガソリン車と比べて何一つ劣ることがない、純粋に『いいクルマ』と感じていただける一台を目指して開発を進めました」という。
 今回の新型インサイトは、新開発の「SPORT HYBRID i-MMD」により、リッターあたり34.2km(JC08モード)という優れた数値をマーク。直列4気筒1.5リッターのアトキンソンサイクルDOHC i-VTECエンジンは、最大熱効率は40.5%を実現している。また、新型では、従来のエンジンを主役としてモーターが発電と走行アシストを行なうパラレルハイブリッド方式ではなく、常にモーターがタイヤを駆動するシリーズハイブリッドに進化している。

品格を感じさせるデザイン。3人乗車でも加速は十分

 全体のデザインで最も重視したのは、「品格」で、外観は空力特性を重視したセダンとしてまとめられ、フロントグリルも低くワイドで最新のホンダデザインの手法が取り入れられている印象を受ける。リアも空力特性に優れたトランクスポイラーはこのクルマの特徴の一つだろう。
 内装も同様で、ダブルステッチの入ったインパネやシートなども上質感があり、セダンとして好ましい。先代モデルより大きくなったフロントシートはフォールド性が特に優れていて、運転していても心地よかった。走行中も室内は驚くほど静かであり、今回のモデルが消音に力を入れていることも確認できた。
 走りは、トルクもあり、3人乗車していても加速も十分で高速走行も力不足を感じたことはなかった。ブレーキも剛性が高く、立ち上がりも自然で、効きも悪くない。また、道路ギャップの乗り越えはしなやかで、ミニバンにはない、セダン独自の乗り心地を感じた。
 新型は、従来の経済性の高さに加えて、先代よりもさらに広く大きくなったトランクなど、実用性を向上させており、通勤や家族でドライブなどにクルマを使用する一般家庭には最適なクルマだろう。

報告:小林謙一
写真:武田隆 ホンダ

最終更新:2019/10/20