※画像クリックで拡大表示します。
日産自動車から2020年6月に発売されたコンパクトSUV「キックス」は、同社の軽自動車を除くと2年9か月ぶりのニューモデルとなる。実は2016年8月のブラジルを皮切りに中国やアメリカなどではすでに発売されているが、日本にはタイで生産されるフェイスリフトモデルを導入した。
出力19%、トルク2%向上。ノートとは別物?
日産自動車のコンパクトSUVというとヨーロッパでは2代目モデルに進化しているジュークが思い浮かぶが、車幅の大きさや後席の使い勝手などが考慮され、今回は導入が見送られたという。
ベースが4年前のクルマでは…と思われる方もいるかもしれないが、そこは最新モデルらしくデザインからメカニズムに至るまですべてがブラッシュアップされている。まずはパワートレインだが、日産独自のハイブリッド技術であるe-POWERを全車に採用している。
同社のノートと比べて最大出力で19%、最大トルクで2%とスペックが高められただけではなく、e-POWERならではの力強い走りや高い静粛性を引き出すための制御面を大幅に改良したという。それを支えるボディもさらに進化。車体主要部位の高剛性構造などでボディ剛性を強化し、高応答ダンパーやウレタンバンプストップなどと相まって、乗り心地や操縦安定性が高められた。
乗り心地と見切りの良さで街中でも安心
実際に走らせてみても、発進から中間加速での力強さは電気自動車そのものでスムーズに流れに乗ることができたし、低速域でエンジンがあまりかからないため静粛性も抜群だった。S(スマート)やECOモードを選択すれば、アクセルペダルだけで加減速できるワンペダル走行も可能である。
ワンペダルドライブはノートのようなギクシャク感はほとんどなくなったが、身体に感じるG自体大きめなので、多少の慣れは必要なのかもしれない。今回は短時間での試乗だったため、高速道路での直進安定性、ワインディングロードでのハンドリングは試せなかったが、街中では落ち着いた乗り心地と見切りの良さで安心してドライブを楽しむことができた。
SUVとしての使い勝手の良さも見逃せない。後部座席のスペースは十分に確保されていて解放感が高く、リアシートを倒さないでもゴルフバッグが3個搭載できるラゲッジスペースも実用的だ。欲を言えば、長尺物を収めることができる助手席フラット機構やリアシートの4:2:4分割可倒機構が欲しいところだが…。また、進化したプロパイロットやSOSコールなどの最新の運転支援技術も標準装備されている。
インテリアのデザインやドアトリムの素材などに若干の古臭さは感じられるものの、国内外のライバル車種と比べても引けを取らないクルマに仕上げられていると感じた。e-POWERによる走りが気に入れば275.99万円からという価格設定は、むしろお買い得かもしれない。
報告:小堀和則
撮影:佐久間 健