マツダCX-3

なぜディーゼルモデルだけなのか? 乗って納得。

走りは基本的には穏やかだ。日常使用域のエンジン音は驚くほど静か。感心。

急加速時にはディーゼル音はそこそこ高まる。それでも期待以上の静かさ。納得。

ベースはデミオ。車幅は1700mm越え。でも、SUVとしてはコンパクトな方。


インテリアの質感も高い。とくに赤の使い方が巧みだ。強調し過ぎないのがいい。

ピストンに組み込まれたナチュラル・サウンド・スム―ザーの効果は驚くほどだ。

鼓動デザインの一翼を担う新ロードスター。すでに月産500台の6倍以上を受注。


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 「これは今までのクロスオーバーカーとは違います。CX-5の弟分ではなくて新しいモデルとして開発しました」とマツダの担当者は力説する。その意気やよし。ただ、最近はどこのメーカーも同じようなことをアピールする。時代が動きつつあることの証左でもあろう。わざわざそんなことを言わなくても、ここ数年でマツダ車のデザインは随分洗練された。挑戦しても挑戦しても、どこかに滲み出ていた泥臭さがほぼ完璧に払拭された。のみならず、マツダ車のデザインは一種の魅力にすらなりつつある。レクサスと同じであの個性的な顔つきに好き嫌いあるだろうが、インテリアの質感も含めて、この間の進歩は素直に認めていい。
 CX-3は全車ディーゼルエンジンを積む。と言うかディーゼル車しかない。驚き、かつ感心した。よくぞここまで思い切ったものだと。でも、「なるほど!……試乗してみて納得した。このエンジンはいい。すごくいい。どこが? エンジン音だ。ディーゼルにつきものだった「キンキン」というノック音が劇的に少なくなった。ただ、全域というわけではない。エンジン単体や実車走行テストの結果を見て、3.5kH(キロヘルツ)前後のディーゼルノック音を大幅に減らしたと言う。

小さくて大きな発明。ディーゼルの弱点を払拭。

 静粛さに貢献しているのが「ナチュラル・サウンド・スム―ザー」と呼ぶ小さな部品。日本語では「動吸振器」ということになる。左右にバネと重りを配した棒のような小さなパーツである。これをピストンピンに組み込む。こんなもので? と最初は思ったが、その効果は絶大だった。ピストンとコンロッドの振動を吸収してサウンド的にディーゼル離れを実現する。ちょっと日本人の職人技っぽい。
 効果をはっきり実感できるのは、発進時やゆるやかな加速の時。これまで静かと言われたディーゼルとは次元が違う。現在、世界でもっとも静かなディーゼル車だろう。アイドリング時には耳を澄ますとわずかにノック音が聞こえてくるが、全車にアイドリングストップが装備されている現在ではまず問題はない。ただ、この「ナチュラル・サウンド・スム―ザー」、標準装備ではなくてメーカーオプションで、上級車種のオートマ車でしか選べないのが残念だ。つまり現時点ではMTの「ナチュラル・サウンド・スム―ザー」仕様はないということだ。
 エンジン&シャシーはデミオの流用。ただ、1.5リッターディーゼル(SKYACTIVE-D 1.5)の最高出力は105馬力と同じだが、最大トルクはデミオの250Nmに対してCX-3は270Nmとわずかにアップしている。ディーゼル特有の比較的低回転からトルクの太さが感じられるが、最高出力の発生回転数が4000rpmだから、それほど息の長い加速は楽しめない。
 トランスミッションはAT、MTともに6速だが、試乗車のMT(4WD)はちょっと引っかかり感があった。サスペンションは4WDの方が少し柔らかめで、若干ヨーイングがあるが、快適性は高い。全高は1550mm、全幅は1765mm。サイズ的にもほどほど。大き過ぎないのがいい。消費税込み価格は236万6000円(XD/FF)〜302万4000円(XDツーリングLパッケージ/4WD)。
 ついでに付け加えると、5月20日、ロードスターが正式に発表された。この4代目ロードスターの価格は249万4800円から314万2800円(消費税込み)。大きな特徴は、アルミの採用拡大などで先代よりも100kg以上の軽量化に成功したことと、ルーフの開閉が片手で簡単にできるようになったこと。オープンスポーツカーにとっては避けて通れない操作だが、実際に使ってみるとこの手動式がもっとも簡単でもっとも速い。今や希少種になったライトウエイト・スポーツカー、少なくともおじさんの心は大いにくすぐられる。

PHOTO:佐久間 健

最終更新:2015/05/24