スズキ・バレーノ/青池 武

インド・スズキが生産するバレーノに乗ってみた。とくに1000cc3気筒ターボが気になる

インド製でも十分に楽しく、走りが出来るコンパクトカーである

1200と1000ターボの足の違いは、タイヤとホイールサイズだけ。タイヤ性能を十分に引き出す設定ともいえる

3気筒1000ccターボなので、エンジンルームの換気性能は高い。それによる効果なのか、インタークーラーは十分に性能を発揮しているようだ


過給が開始されるまで開いているウエストゲートバルブ、という構造のため少しターボ周りは複雑な構造を見せる

確かに冷却効率が高いところへインタークーラーは取り付けられているが・・・エンジン効率が高いということか

ウエストゲートバルブの作動が逆となることで、何がいいのかを説明する画像。確かに、普段閉まっているウエストゲートバルブであると、排気ガスは狭いタービンの間をすり抜けるような形となるため、排気ガス抵抗が発生し、ポンプロスとなる。それがないことで効率は高い


※画像クリックで拡大表示します。

1000ccで3気筒というものは特別新しいものではないが、ターボが付いて、3気筒特有の振動騒音がない。実にスムーズでそれはまるで4気筒のごとくである。更にそのターボの過給圧制御に興味がそそられた。
なんと、過給圧制限に使用するウエストゲートバルブが逆作用する。つまり、普段はウエストゲートが開いていて、排気ガスの流れはタービンに疎外されることが少なく、スムーズに排出される。つまり、ふん詰まりがないので効率が確保し易い。
開発は日本、製造はインドで現地の部品調達率は80%程になるらしい。その仕上がりは問題を発見できなかった。というより、問題が出ないような造り方は当然で、更に要所要所では日本人スタッフが目を光らせている。ただし、これは、長く続けてはいけないように感じる。それは、現地の方が「我々を信用していないんだ。それなら問題を見つけても、指摘されるまで動かないでいよう」などという気持ちを持ってしまう。そうなって欲しくないからである。
さて、その1000ターボだが、これがまたすばしっこいというより、素直で感触のいい走りをする。
過給が必要となる領域までウエストゲートバルブが開いていることも関係するのだろうが、大きなトルク変動がない。つまりターボラグがない。それはまるで排気量の大きな、1500cc以上の自然吸気エンジンのごとくであり、それでいてエンジン重量が軽いため、ハンドリングが優しい。
常時タービン・コンプレッサーが回転していないのに、ターボラグの発生がないということは、自然吸気状態(過給圧がかかっていない)でのエンジン効率が高いことを意味する。
ただ、この開いた状態から閉めて過給圧を発生させる制御はかなりややこしく、ドライバーの求める状況を先取りするような形で開閉を行うようである。
なんで〜と感じたのは、数キロ下り坂を走ってきて、エンジンルーム内に鎮座しているインタークーラーやそれに接続されるパイプを手で触れたとき「アレッ、暖かくない、いやそれ以上に冷たい」。
過給をさせながら走行したわけではないので、熱くはなっていなくても不思議ではないが、冷たいのだから????エンジンルームの熱で、同じ温度(雰囲気温度)であって当然のはずだが。
ひとつ気になるのは、ブレーキオーバーライド(アクセルペダルを踏んでいてもブレーキペダルを踏んだときに、スロットルバルブが閉じる制御)が敏感すぎること。
左足でブレーキペダルを踏むドライバーにとって、ブレーキオーバーライドが有っても良いが、それが機敏すぎると走りの部分で性能を阻害することがある。
つまり、コーナー深くまでブレーキペダルを踏まず、というよりアクセルを開けたまま状態からステアリングを切り、アンダーステアとなる寸前で、それを回避するためにブレーキペダルを軽く踏みながらアクセルを踏む、という行為が感覚的ではなくなる。
しっかりとアクセルペダルを戻し、スロットルのアイドル接点を接続させた状態からブレーキペダルを踏み、その後アクセルペダルを踏む、という操作に切り替えないと、アクセルペダルの操作に対して、エンジンは何も反応しない。
プログラムの基本的な考え方は正しいのだが、もっとアクセルペダルからの信号を受け付けて、アクセルペダルをその状態から更に踏みつけるような場合には、ある程度エンジンが反応すべきであると思う。そのようなプログラムが組み込まれた車種はあるように捉えている。
ミッションはパドルシフトもあるステップ6ATを採用している。本来なら燃費のいいCVTといきたいところだが、実は、副変速機付のCVTでは、1000ターボのトルク(NAの1600並み)に対して、耐久性が問題となるからである。ということは、そのうちミッションを改良した、もっと燃費のいいバレーノ1000ターボの出現があるということか?
また、1200よりスポーティなハンドリングという感覚を受ける。サスペンション周りなど1000ターボ用として開発したのかというと、そうではなく、違いはホイールとタイヤのサイズ。1200の175/65R15に対して、1000ターボは185/55R16を採用した。フロントの軽さとタイヤによって、かなりの違いを感じさせる。それは走らせていて楽しいという表現とも結びつく。
報告&写真:青池 武 

最終更新:2016/05/24