スズキ ハスラー
売れに売れた先代。2匹目のドジョウもいそうだ

 2015年のRJCカーオブザイヤーにも選ばれたスズキのハスラーが2代目になった(発売は2020年1月20日から)。初代は凄まじく売れた。おそらくスズキも予想だにしなかったほど。
 だから2代目もエクステリアのイメージは初代を踏襲する。その最たるものは丸型ヘッドライトとスクエアなグリルだ。これで誰でもハスラーと分かる。このあたりを見る限り初代と大差はないが、サイドに回ると印象はガラッと変わる。Cピラーにクオーターガラスがあるのだ。これでリア左右の視界は向上する。しかもBピラーがボディと同色になったからクロスオーバーSUVらしい力強さが増した。
 細かい説明をすればホイールベースは35mm延び、前後乗員間も35mm広がった。前席の同乗者同士の距離は30mm広がり、頭上空間も増えた。全高は15mm増えただけだが、室内の解放感はグ〜ンと大きくなった。しかも最小回転半径は4.6mと先代と変わらず。全長4.4m未満という厳しい軽自動車の枠の中でよくやるものだと思う。
 そういえばCMもそうだ。先代ハスラーはCMに鳥山明のアニメ「Dr.スランプアラレちゃん」を採用したが、新ハスラーは世界的アーチスト「キース・へリング」のイラストを選んだ。コスト的には分からないがユニークであることは間違いない。もともとスズキのコマーシャルは、ワゴンRの水原希子といい、広瀬すずや草刈正雄といい、キャラクター選びが上手い。時代感性が鋭い。

新鮮インパネ、便利装備、すべてハイブリッド

 エクステリアはキープコンセプトだが、中身は大幅に進化している。真っ先に目を引くのはダッシュボードだ。インパネには右からのカラー液晶メーター、オーディオなどのディスプレイ(9インチ)、インテリアアッパーボックスとならび、それぞれが大きなカラーガーニッシュで囲まれる。(カラーはオレンジ、ブルー、ホワイトの3色)。
 また、荷室側からも操作可能なリアシートスライドや、荷室下に防汚タイプラゲッジアンダーボックスを採用するなど使い勝手も向上させている。あまり目立たないが、こもり音や雨音を低減する「高減衰マスチックシーラー」を軽自動車で初めて採用した。
 パワートレインにも手が入る。自然吸気エンジンは新開発だ。スズキの軽としては初めてのデュアルインジェクションシステム、つまり1気筒あたり2つのインジェクターを配し、燃料を微粒子化することで燃料と空気の混合気を均質化した。結果、低速から中高速までの実用速度域で優れた燃費性能と軽快な走りを実現したという。ターボエンジンにはNAほどの変化はない。
 CVTも新開発だ。低中速域のスムーズな走りと高速域のハイギアード化によって燃費性能と静粛性を向上させた。またマイルドハイブリッドを全車に搭載した。ISG(Integrated Starter Generator=マイルドハイブリッド)の高出力化によってジェネレーターのパワーも増えた。

夜の歩行者も検知、オプションで全方位モニターも

 安全面での進化も著しい。夜間の歩行者も検知し衝突被害を軽減する「デュアルカメラブレーキサポート」に加え、後退時の衝突被害軽減「後退時ブレーキサポート」、「ふらつき警報機能」などをほぼ全グレードに標準装備する。さらに、ターボ車には、全ての車速での追従機能を備えた「アダプティブクルーズコントロール」(スズキ軽初)や「車線逸脱抑制機能」(スズキ軽初)を標準装備。
 ただし、前後、サイド(左右)の計4カ所に設置したカメラの映像を合成・処理し、自車周辺を俯瞰的に見ているような映像をモニターに映し出すカメラはメーカーオプションになる。
 「もっと走れる! もっと積める! もっと安心!……」をコンセプトに開発されたあたらしいハスラーのボディカラーは11色。このうちバーミリオンオレンジとデニムブルーが新色だ。月間販売目標台数は先代より少し強気の6000台。消費税込み価格は136万5100円(G 2WD〜176万6800円(Xターボ4WD)。

報告:神谷龍彦
撮影:佐久間 健

これが新色のひとつバーミリオンオレンジ。フードの先端を持ち上げることで顔の厚みを増した。

リアクオーターに窓を新設。最低地上高は180mm。アプローチアングルは1度増えて29°に、デパーチャーアングルは4度増えて50°に。クロスオーバー的要素はしっかり維持・拡大している。

2トーンカラーもある。ルーフの色はホワイトとガンメタの2色。ボディカラーによって決まる。

大胆なカラーガーニッシュで囲まれた3種のメーターやディスプレイ、グローブボックス。

環状骨格構造の採用や構造用接着剤の多用により高い操縦安定性と優れた乗り心地を確保した。

高減衰マスチックシーラーの効果。同じ高さから落としたボールの弾み具合に、減衰性の高さが表れている(右)。この新しいマスチック剤の採用により、車内の静粛性、車体の制振性を高めている。

自然吸気エンジンは新設計。デュアルインジェクターを採用して実用域での走りと燃費を改善。


最終更新日:2019/12/29