アルピーヌ A110 プルミエール・エディション
ALPINE A110 PREMIERE EDITION

名門の復活! 日本はまず限定50台

 真夏のような日差しに包まれた6月末のフランス大使公邸(東京都港区)。玄関アプローチで新アルピーヌA110が、裏庭では新旧A110が待ち構えていた。フランス車だから大使公邸を利用したわけではない。日仏両国が外交関係を結んでから160年にあたるのを祝う意味もあった。もちろん駐日フランス大使も出席した。ルノー巧みなり。
 アルピーヌの創設は1955年。ルノー4CVをベースにA106というモデルを世に問うた。初代A110(英語ではエイ・ワンテンと読む)が登場したのは1962年のこと。1973年にはWRCマニュファクチャラーズの初代チャンピオンに輝く。古い世代にとってはこのころのイメージが強い。ルノーの傘下に入ったのもこの年のことだ。さらに78年にはル・マン24時間も制覇した。
 数々の栄光に包まれながらアルピーヌは1995年に生産を終えたが、ちょっと複雑な経過を経て2016年に復活宣言をする。現在の正式名称はソシエテ・デ・オートモビル・アルピーヌ・ルノーという。ルノーのワンブランドである。
 2017年のジュネーブショー、アルピーヌのブースには新A110プルミエール・エディションがいた。今回、日本に入ってきたの同じ新しいアルピーヌA110だ。プルミエール・エディションの生産台数はアルピーヌの創立年にちなみ1955台と決められた。
 そのうちの50台が限定モデルとして日本でも買える。7月10までに全国14か所のディーラーかアルピーヌのホームページで申し込みを受け付ける。ただし、現段階で完売状態だから、7月15日(フランス革命=パリ祭の翌日)にこの会場で抽選が決まっている。
車重1110kg。パワーウエイトレシオ4.4kg
 全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm。最近のクルマとしては幅が広すぎないのがいい。初代は全長×全幅=3850×1520mm! 今から見れば、コンパクト中のコンパクトカーだった。サイドウインドーの狭さは衝撃的ですらあった。
 新A110はプラットフォームとボディにはアルミ(96%)を採用し、リベットと接着剤、溶接を組み合わせて接合することで、軽量化とともに強固な構造を実現した。車両重量は1110kg(23kg分のプルミエール・エディション専用装備を含む。)他メーカーのスポーツモデルより200kg以上軽いと言う。ポルシェ・ケイマンだって1360kgはあるのだ。
 サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンで、ダンパーにハイドロリックコンプレッションストップを採用。ロールバーは不要だという。ヤル気満々だ。ギアはゲトラグの7速AT(7DCT)。
 エンジンは1.8ℓ直列4気筒直噴ターボで最高出力は185kW(252ps)。日産・ルノーの共同開発だ。この決定にはGT-R好きのゴーン社長も当然絡んでいる。ボディが軽いから性能的にはこれで十分で、0-100km/hを4.5で駆け抜けるという。これをミッドシップに搭載する。先代はRRだったから駆動方式は少し異なる。
 デザインは先代モデルのイメージをかなり忠実に引き継いでいる。4灯のヘッドライト、滑らかなボディライン、ボンネット中央のスパイン(背柱)などがその例だ。この発表会のために来日したデザイン担当のデアン・デンコフは説明する。
 「フロントとリアを曲線で繋ぎました。ボディサイドのくぼみやルーフの微妙な凹凸はデザインと同時に剛性のアップにも貢献しているのです」
 「リアフェンダーを強調するため(マッスル感をアピールするために)にテールランプを内側にセットしました。個人的には斜め後方からのスタイルが一番好きです」
 「リアガラスを湾曲させたのも初代のDNAです。250km/hで走ってもダウンフォースを得られるように、フロントのアンダーカバー、リアのディフューザー(バンパー下)に細心の注意を払いました。だからスポイラーは不要なのです」
 カーボンやアルミを駆使した軽量シートはイタリアのサベルト(sabelt)社製。現時点でのステアリング位置は左のみ、ボディカラーもブルーだけだ。生産は過去のアルピーヌ同様フランス北西海岸、大西洋に面する町・ディエップだ。
 プルミエール・エディションの納車は9月から始まり年内に終わる予定だと言う。抽選をクリアした幸運な50名は7月17日〜24日に申込金を払わなければならない。
 抽選に漏れた人はどうするのか? 案ずることはない。秋までにベーシックモデルの「PURE」とラグジュアリータイプの「LEGEND」の詳細が発表される。こちらは限定モデルではない。年産4500台のカタログモデルで年末までに導入される予定だ。
 それにしても790万円というプライスは安い。ほぼ現地並みの設定だとアルピーヌ・ジャポンは胸を張る。自動運転もいいけど、このプライスで手に入れられる「運転する喜び」、そそられる。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

いくつも伝統を大切にしながら今日的デザインに昇華させた。復活ではなく継続と言った方がふさわしい。

前後重量配分は44:56。前後のダウンフォースを巧みに設定してスポイラー類を一切排除した。試行錯誤の連続。

サイドのくぼみや湾曲したリアガラス、目立つリアフェンダーは初代A110譲り。それでいて十分新しい。

タイトさが嬉しいインテリア。走行モードは、ノーマル、スポーツ、トラック。スロットルレスポンスやパワーステアリングアシスタンス、シフトスピード、ESCなどを変化させる。

エンジンはリアトランクの前。ラゲッジルームはリア=95ℓ、フロント=100ℓ。意外に広い。

世界ラリー選手権やル・マン24時間レースで大活躍した初代アルピーヌ。写真は74年のコルシカ・ラリー。


最終更新日:2018/07/04