日産 リーフ e+(イー・プラス)
NISSAN LEAF e+

62kWh、458km(WLTC)の衝撃!

 「グローバルでは38万台以上売れました。世界で最も売れているEVです。50か国に輸出され、50億キロ以上走っています。その間トラブルは一度もありませんでした」。
リーフe+の発表会。壇上に登場したダニエレ・スキラッチ副社長の発言は威勢がいい。
 日産にとってEVは初めてではない。過去に作ったことがある。のちに吸収する東京電気自動車(その後たま電気自動車に社名変更)が生産していた「たま」がそれだ(1947年)。最高出力は4.5ps、航続距離は96km、最高速度は35km/h。1099台生産されタクシーなどに使われた。しかし、鉛酸バッテリー用の鉛の高騰とガソリンの低価格化の影響で1951年にたまは姿を消す。
 さて、時は移って2010年。日産はリーフをEVとして登場させる。この時のリチウムバッテリーの容量は24kWh、最高出力は90kW、航続距離は200kmだった。その後航続距離は280kmまで延びたがまだまだ十分とは言えなかった。
 2017年に2代目になる。バッテリー容量は40kWhに向上、最高出力は110kW、航続距離は400km(JC08モード)まで延びた。今回追加された「リーフe+」のバッテリー容量は62kWh、最高出力が160kW、航続距離が458km(国際基準のWLTCモード JC08モードだと570km)。大雑把に言えば1.4〜1.5倍に延びた。注目すべきは航続距離のアップと、バッテリーの容量は増えたのにサイズは大きくなってはいないことだ。
 というようなリーフe+自体に関する詳しい説明はダニエレ副社長からはあまりなくて、むしろEVを活用する社会についての解説の方が多かった。それを象徴するようにステージの中央にリーフe+、その左右にシースルーの家の模型がつくられ、家族をイメージしたモデルも登場した。

リーフ的ライフ完結サイクル
 日産はインテリジェント・モビリティの充実をアピールする。具体的にはインテリジェント・パワー(バッテリーの強化や走行距離の延長)、インテリジェント・ドライビング(プロパイロットやe-ペダル)、インテリジェント・インテグレーション(スマートフォンアプリによる各種コネクテッドサービス)である。
 しかし、日産がこの日用意したステージはそうしたクルマの説明用ではなくてむしろEVの蓄電機能を利用したライフスタイルの提案だった。つまり、クルマ(Vehicle)とホーム(Home)をつなぐエネルギーの利用方法だ。これをV2Hと呼ぶ(これに対してビルへのエネルギー供給はV2Bと呼ぶ)。
 つまり、回生ブレーキによる余剰電力や深夜電力、太陽光発電からのエネルギーをクルマに貯めておけば、日常の電源としてはもちろん災害等時にも使えるのだ。その使用可能日数は40kW(併売)で3日、新型で4日程度とされる。十分とはいえないまでもこれなら緊急時には相当役に立つ。それに災害の場合もっとも復旧が速いのは電気だから。突き詰めていえば、車載バッテリーの利用によって電気の供給、利用、供給、再利用というサイクルがほぼ完成するのだ。
 バッテリーパックのサイズや形状をほぼ変えずに高出力化できたのにはもちろんそれなりの工夫がある。8セルを1モジュールとしていた従来の方式を変え、モジュールの枠を取り去り288セル(従来は192セル)を3列並列とした。それにともなって、車高を5mmアップし最低地上娘は15mm短縮した。ここでもスペースを稼いだのである。だから居住スペースは減っていない。ただし、プラットフォームは基本的には初代と同じ。つまり入れ物にバッテリーの形状とサイズを合わせるという方法は変わっていない。
 それでも62kWhの効果は大きく、これまでやや苦手としていた高速での加速も向上した。80km/h−100km/h加速は15%、同じく80km/h−120km/h加速は13%短縮、最高速度は10%増えたという。
 ではライバルは何か? EVが増えるであろう近未来はともかく、現時点ではテスラのモデル3だろう。価格はe+Xが416万2320円、e+Gが472万9320円。テスラは1ドル109円で換算すると501万円。テスラの方が高い。ただワン充電当たりの走行距離はテスラの方がEPA測定で約50kmほどリーフe+を上回る。
 リーフe+の日本発売はニッサンにちなんで1月23日。米国はこの春。欧州は今年半ばの予定である。e+は従来のリーフに比べると50万から70万円ほど高いが、その性能さと安心感を考えればむしろ“安い”と思う。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健 怒谷彰久

ダニエレ・スキラッチ副社長とリーフe+。スピーチはクルマよりもライフスタイルが中心だった。外観でe+と分かるのは、フロントスポイラー下部のブルーのライン、ブラックのホイールセンターキャップ、それと充電キャップを開けると見えるe+マークくらいのもの。

ブルーのe+デザインのキャップが62kWhの証明。急速充電時間は20秒増えて60秒になった。

パワーユニット。2代目はモーター、インバーター、PDM(パワーデリバリーモジュール)一体化。

床下に配置された62kWhのバッテリー。モジュールの枠やハーネスをなくして288個のセルを収納。

インパネは変更なし。プロパイロットやLEDヘッドライトは両モデルとも標準装備となった。


最終更新日:2019/01/15