日産の高級ミニバン「新型エルグランド」の開発責任者、一野健人氏(2-2)によると、目指したのは「大切な人たちとの遠出を楽しめる、プレミアムグランドツーリングミニバン」。これを実現するため、「乗る人みんながくつろげる極上の快適空間」と、「どこまでも走りたくなる運転の楽しさ」という2点にこだわって開発したのだという。そのための3つの柱が、「第3世代e-POWER」(発電特化エンジン+大容量モーター)、進化した「e-4ORCE」(前後モーター駆動力とブレーキ制御)、「インテリジェント・ダイナミック・サスペンション」(スポーツセダンの代名詞であるスカイラインから採用している電子制御サスペンション)で、これら3つを統合制御することで、極上の快適性や運転の楽しさが提供できたとしている。
背が高く幅広くなった
新型エルグランドのボディーサイズは全長4995mm、全幅1895mm、全高1975mm、ホイールベース3000mm。全長はライバルのアルファードと同等となり、全幅は前モデルより45mm、全高は95mmアップした背の高い、大型のものに変身している。
デザインコンセプトは「The private MAGLEV(リニアモーターカー)」。撮影したプリズムホワイトカラーの新型のボディを見ると、確かにハイスピードでありながら静かでスムーズに走る「リニアモーターカー」をイメージさせ、加えて威厳とダイナミックなプレゼンスを兼ね備えている。
日本の伝統工芸である「組子」をモチーフにしたというフロントグリルのデザインは、「ノート」や「アリア」にも共通するデザインランゲージである「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」を具現化したもの。同様のデザインは、軽量化を追求したというアルミホイールの緻密なデザインにも投入されている。広いサイドパネルの面構成は日本庭園の考え方を取り入れたといい、それが「くの字」型に切り立ったリアエンドに繋がっている。
日本の美意識を表現した“紫檀(したん)”のインテリア
インテリアのカラーは、日本の美意識に息づく気高さを象徴する色、という紫と青をあしらった“紫檀(したん)”を採用。シート素材はナッパレザー並みの感触と高い耐久性を持つという、日産が開発した次世代素材の「テーラーフィット」だ。
運転席に乗り込むと、しっとりとしたシートの肌触りの良さとともに、アイポイントの高さとウエストラインの低さという視界の良さが相まって、とてもいい。眼前の2スポークステアリングの奥には14.3インチ×2の大画面統合型インターフェースディスプレイ(国内モデル初)が広がる。お馴染みのブラックの木目パネルには、空調スイッチをはじめ、P、R、N、D/Bのシフトボタン、e-pedalやEVモードスイッチが並び、幅広のセンターコンソールも同様の木目調で、START/STOPボタンやドライブモード、パーキング、オートホールドなどのボタンが装備される。その奥には便利な2基のマグネット式Qi充電スペースがある。
第3世代e-POWERを搭載
搭載するパワートレインは第3世代となる「e-POWER」。フロントモーターは151kW(205PS)/330Nm、リアモーターは100kW(136PS)/195Nmを発生し、システム最高出力は約340PS、最大トルクは大排気量V8エンジン並みの500Nm以上を誇っている。発電専用となるエンジンは1.5L直列3気筒ターボエンジンの「ZR15DDTe型」で、140PS/228Nmを発生。排気量が1500cc以下なので、自動車税が30500円となるという経済性も注目だ。
このシステムは、モーター、発電機、インバーター、減速機、増速機を5つの主要部品を一つにまとめた「5-in-1 e-POWER パワーユニット」で構成されており、コンパクトかつ高剛性であることが特徴になっている。
走りはいかに
日産グランドライブでの走りを体験してみると、道路のつなぎ目やうねりのある路面では、路面に合わせた減衰力の最適制御を行うインテリジェントダイナミックサスペンションの効果で、上下動も振動もしっかりと抑えられた、極上レベルの乗り心地を発揮(特にコンフォートモードで)。ワインデイング路では、これに加えて新型e-4ORCEが前後左右のタイヤの駆動力配分をコーナーの入り口、中盤、出口に合わせてコントロールしてくれる(6つのドライブモードごとに制御が異なる)ので、特にスポーツモードなどにしておくと、背の高いミニバンらしからぬ見事なコーナリング性能を発揮する。
また100km/h前後で巡航する高速路では、その(加速時点から続く)静粛性に驚かされる。一体成形された第3世代e-POWERブロックの振動のなさ、BOSEやパナソニックと共同開発した新世代アクティブノイズコントロール、高剛性のボディと高性能遮音ガラスの採用など、徹底的な音対策によって、その静かさはこれまで体験したことのないレベルまでに到達していることがわかる。
さらに停車時には、カックンブレーキにならない姿勢で上手に止まってくれる日産初の「スムーズストップ」が効果を発揮。同乗者がいる際に、止まる寸前でブレーキを軽く緩めてショックを与えないようにするあの操作を、エルグランドは勝手にやってくれるのだ。
唯一注文があるとすれば、あまりにも優れた乗り心地のドライバーズシートに比べると、2列目ではほんのわずかだが路面の振動を伝える量が大きくなることぐらいか。
価格は標準グレードの「X」が689万7000円。「G」が757万9000円。上級グレードのAUTECHバージョンが717万9700円〜824万7800円。「VIP」が869万8800円。アル/ヴェルの“刺客”としての資格は十分にある。(了)
報告:石原 彰











