スズキ スイフト

良くできてるんだけど、もうひとつ物足りない。

単眼カメラとレーザーレーダーによる衝突被害軽減システムを採用(セーフティパッケージ)。RSはフロントグリルに赤いサイドバーが入り、ルーフスポイラーやリアフォグも標準装備。

重心を下げてフロントグリルのデザインを思いっきりスポーティに変えた。フェンダーの張り出し感も強調して、パワフルなエクステリアに。やりすぎないモディファイは好感が持てる。

リアドアを開けるにはCピラーガーニッシュのハンドルを引く。ピラーガーニッシュ類をブラックアウトしてルーフが浮いているように見せる。基本的には16インチタイヤが標準となる。


円筒型のメインメーターのゼロは真下から始まる。二つのメーターの間のディスプレイにはアクセルやブレーキ操作などが表示される。ステアリングホイールはD型で乗降の際に便利だ。

パワーユニットは1.2ℓ自然吸気、1.2ℓハイブリッド、そしてRSt専用の1ℓ3気筒ターボ。JC08燃費は20.0〜27.4km/ℓ。ノイズはかなり改善されたが、パワー面ではやや不満も。

新型スイフトが軽量化に成功したのは、設計とエンジニアリングが開発段階から協力して最適なカタチを追求したからだと言う。できるだけ抵抗のないスムーズな形や素材の見直しができた。


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 120kgの軽量化を達成したニュー・プラットフォーム(HERTECT)もいい、全モデルとも基本的に乗り心地は悪くない、運転席に5度ほど傾けられた内装も好感が持てる、円筒の奥に納まったスピードメーターとタコメーターも見やすい。しかし──。

 4代目スイフトの特徴の一つは、先代では特別仕様車だった「RS」がカタログモデルになったことだ。シリーズ全体のモデル展開は、1.2ℓ直4(91ps)、マイルドハイブリッドの1.2ℓ直4+モーター(3.1kgm)が基本である。RSにもこれらのエンジンが用意されている。
 RSにはさらに1ℓターボ(102ps)3気筒もある。グレード名はRStという。バレーノの1ℓターボと基本的に同じエンジンだがパワーは9ps少ない。その理由はバレーノがハイオク仕様であるのに対してスイフトはレギュラー仕様であること。
 トランスミッションはRStのみ6速ATになる。ほかは5速MTかCVTだ。RStはシリーズ最強バージョンではあるが、RS自体は単純にスポーティグレードではないのだ。
 乗り心地は相当良くなった。RSは若干固いが、特に不満というほどではない。RS以外はかなり柔らかいが、一般道や街中ではこれで問題はない。
 この差は足回りのセッティングした場所による。RSは先代同様ドイツをはじめとするヨーロッパで、それ以外のグレードは日本でチューニングされた。ダンパーやパワーステアリングのセッティングが異なる。足回りは単純に硬軟の問題ではない。パワーとのバランスもさることながら、使われ方に大いに影響される。街中では柔らかいほうがいい。
 1ℓターボのノイズはバレーノよりも少ない。ただ、急加速時のターボ音を気にする人もあるかもしれない。ターボだからパワーよりもトルクが重要。スイフトの1ℓターボの最大トルクは15.3kgm、これを1700〜4500回転でフラットに発生する。これは先代スイフトの1.6ℓ自然吸気に勝る。ただし高回転の出力は実感としても劣る。
 RStの6速ATはCVTのようなフルスロットル時のタイムラグがなくていいのだが、シフトレバーを勢いよく上から下に引くと、Dを通り越して一番手前のM(マニュアル)ポジションに入るケースがあった。他のグレードのMTは各ギアへの入りはスムーズだが、そのあとのグニャグニャ感が少し気になった。
 1.2ℓは標準的な性能。ここでもボディの軽さが活きる。この軽量化(840〜970kg)はまさにスズキらしく、各部の見直しを図った結果だ。超抗張力鋼板を増やすといったような手法ではここまでできない。
 バレーノとどこが違うのか? メーカーは「バレーノはファミリー向き、スイフトはよりパーソナル」と説明する。基本的的にのんびりドライブがしたければバレーノ。ハンドリングも素直だし乗り心地もいい。派手さはないが、けっこうおすすめのインド生産車だ。
 じゃあスイフトがパーソナルかというとちょっと疑問符が付く。パーソナル=スポーティと解釈すれば、物足りない。販売台数は少ないかもしれないが、スイフト・スポーツのようなイメージ・リーダー・モデルが必要だと思う。6速MTでもっとパワーもある──。実際、年内には発売されるという噂もある。世界で楽々500万台以上売ったモデルなのだから、期待値は高い。というよりそれだけ期待させるクルマなのだ。
価格は134万3520(XG 2WD)〜184万5720円ハイブリッドRS 4WD)

報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健

最終更新:2017/02/06