ダイハツ DAIHATSU ミラ イース MIRA e:S
ほどほど低燃費 & 超お買い得プライス。歓迎!

 前々から思っていた。「コンマ単位の燃費競争って本当に意味があるんだろうか」。そもそもカタログデータと実燃費は必ずしもシンクロしないものだ。もうひとつ、「最近の軽自動車は価格が高すぎる」。ここに一石を投じたのがダイハツのミラ イースだ。
 ベスト燃費は35.2km/ℓ──決して悪くない。悪くないが数値自体は先代と変わらないのだ。ベーシック・グレードの価格は84万2400円(B)。先代の70万円台には及ばないが十分安い。
 「ハイブリッド車と同レベルの燃費を半額の価格で、ということです。初代はホンダ・インサイトの半分に設定しました」と、三井正則社長。2代目は対象ハイブリッド車の価格が上昇した分だけ"半分"価格も少しアップした。ただしこれはベーシックモデルの話。それでもベーシックモデルの価格を低く抑える意味は大きい。
 「プライスを優先しました。電子ディバイスなどに頼りすぎると価格を上げざるを得ませんから」と同社の役員は明言する。その一方で80kgの軽量化に成功している。ボディやサスペンションを軽くするだけでなく、リアハッチやフロントには樹脂を採用した。
 エンジンの改良も大きい。試乗してみなければ確かなことは言えないが、アクセルワークにリニアな加速を目指したという。ほぼ全域でトルクをアップした。一部に不満のあった加速感は、発進時・追越時ともに大きく改善されたはずだ。イースはベーシックモデルだから、エンジン自体は自然吸気のみ(3気筒 49ps 57Nm)。トランスミッションはCVT。駆動方式はFFと4WDだ。
 というわけで、ベースモデルはたしかに安い。燃費と価格はこれで文句なしだとしても、安全性の点では少し物足りなさが残る。そこで注目したいのが「スマートアシストIII」だ。これは、世界最小のステレオカメラと前後4つのコーナーセンサーよって、対歩行者も含めた衝突警報機能&緊急ブレーキ、オートハイビーム、先行車お知らせ機能などを持つディバイス。なかでも前後誤発進抑制制御システムは、最近よく話題にのぼる高齢者や女性ドライバーにはとりわけ喜ばれる機能だろう。
 ただし、前述のように、これを付けると最廉価モデルのプライスが一挙に97万2000円に跳ね上がる(B"SAIII")。それでも現在の軽自動車としては高くはない。燃費や価格だけでなく安全性も当然大切だ。B以外にL(87万4800円)、L"SAIII"、X"SAIII"、X"SAIII"(120万9600円=FF)がある。
 イースは単にベーシック軽自動車というだけでなく、ダイハツにとってはとっても重要なモデルだ。その理由の一つが「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の第一歩だということ。これはイースがDNGAのすべてを具現しているということではない。あくまでも第一歩だ。DNGAは次の軽自動車で実現し、小型車へと展開してゆく予定だという。
 もうひとつ発表会で気が付いたこと。それはインテリアの質感の高さだ。ダイハツはモノトーン、ツウトーン(上級グレード)という点をアピールするが、個人的にはツウトーンはあまり好きじゃない。そんなことよりクオリティの高さを褒めておきたい。見た目だけじゃなく、感触、さらに指でトントンとやった時の音に安っぽさがほとんどないのがいい。
 新しい原点回帰──これからの軽自動車造りの大切なポイントだと思う。
報告:神谷龍彦
写真:飯塚昭三/ダイハツ

エクステリア・デザインは大きく変わった。丸っぽい形からカクカクに。すっきりしている。

軽量化のためにリアハッチとルーフスポイラー、フロントフェンダーなどに樹脂を採用した。

このスカイブルーが今回の新色。派手すぎず地味すぎず、ほどよい強さのボディカラーである。

インテリアの質感は大幅にアップした。デザインだけでなく、たたいた時の音が安っぽくない。

エンジンは3気筒。データには表れないが中回転域を中心にトルクを上げた。加速がリニアに。

約10km/h以下では前方や後方の誤発進を制御する。対自動車・対歩行者認識機能も向上しした。 


最終更新日:2017/05/15