2008年次活動報告

■RJC研究委員会リポート/豊田メタル見学会(2009.01.22)

自動車リサイクルの再先端技術を学ぶ!!

自動車リサイクル法の施行から3年、その成果はまだ見えない部分もあるが、自動車リサイクルの技術的進歩については目を見張るものがある。当初リサイクル実効率は80%と言われたものが、この数年で大きく進化、今、リサイクル実効率95%に迫るまでにレベルアップしている。その最先端技術を誇る「豊田メタル」において自動車リサイクルの最新工程を見ることができた。
油脂類の抜き取り、エアコンフロンガスの回収、エアバッグの解体、ワイヤーハーネスの除去など前処理を済ませたELV(End of Life Vehicle)は愛知県半田市の豊田メタルに運び込まれる。

 

2000馬力シュレッダーによって破砕されたELVの「鉄」は製鉄原料に再利用される。 前処理を終えたELVをプレシュレッダーに投入、粗破砕することから豊田メタルのリサイクルは始まる。 プレシュレッダーに投入後、数分にして粗破砕され、次行程へのコンベアーに載せられる。 破砕されたELVから出現したコイン。年間400万円に及ぶコインが選別されている。


 ELVは2000馬力のシュレッダーマシンにより破砕され、数度に渡る選別を経て再資源として活用されている。自動車の主材である「鉄」はそのほとんどが再資源化され、製鉄材料として利用されるのはもちろん、さまざまな非鉄金属も資源として再利用できるまでに選別分類されている。これまで、資源としての見込みが立ちにくかったシュレッダーダスト[ASR(Automobile Shredder Residue)]も再利用可能な新たな資源として製品化され、出荷されている。
 ASRの組成は樹脂、発泡ウレタン、繊維、ゴム、木、紙などの可燃物、鉄、ガラス、ワイヤーハーネス、非鉄金属などの不燃物が混じりあったもの。これを細密に分別を繰り返すことで純度の高い素材に分類し資源としての再利用を図っている。

 

シュレッダー後、リサイクルユースの為に数度の選別を行う。

選別精度を向上させる決め手は人間力。

破砕されたワイヤーハーネスは被覆と分離され、銅線のみが集められ、資源として製品化

ASRの一部は製鉄用助燃剤として製鉄会社に渡される


 これまで、利用価値が無いものと考えられ、その多くが埋立処理されていたASRだが、防音材などへの再利用が進み、トヨタ自動車が生産する新型車の50%以上にASRを製品化したリサイクル材が利用されている。
このように自動車リサイクル技術は進化し、実効率90%以上が確立されている。
豊田メタルには自動車リサイクル技術を向上させる目的で設立された「自動車リサイクル研究所」が併設されている。

 

自動車リサイクル研究所では、燃料の抜き取りを安全迅速に行うなど、解体作業の安全と工程削減に向け様々な研究が行われる。 シュレッド作業の前処理のひとつ、エアバッグの処理を電気的に一括処理するシステムもリサイクル研究所で開発、世界に向けて発信している。 解体作業を安全迅速に行う為の特殊工具の開発もリサイクル研究所の役目。多くの解体業者、シュレッダー業者にノウハウの公開も行う。 豊田メタルは1970年に設立。行政、カーメーカーに先駆けて自動車リサイクルに取り組む。


 こうしたリサイクル実効率の向上に自動車リサイクル研究所の果たす役割は大きい。ELVに残された各部品のリサイクルを始め、環境負荷物質の適正処理、リサイクル効率向上のための解体性の研究など、その研究開発は多岐に渡る。中でもリサイクル処理工程で多くの工数を要するエアバッグの処理に対し、電気的に一括して処理するシステムの開発や、残存燃料の抜き取りを安全且つ迅速に行う形状の検討や特殊工具の開発製造など、これからの自動車のリサイクル性向上に果たす役割はおおきい。そして、自動車リサイクル研究所で開発された工具を始め解体性向上のための様々な事案はすべて公開され、それらのノウハウは解体事業者などへ提供されている。

【中田 和夫】

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