今回はクルマではなく自動運転に関する講習である。担当したのは、ドイツから来日したマイク・ボレス博士。要点は3点。94%を占める自動車事故のヒューマンエラー(居眠りやよそ見などのケアレス事故)をなくす、ライフスタイルをもっと快適なものにする、さらに自動運転の段階の説明があった。
BMWでは自動運転を5つのレベルにわける。レベル1はフットフリー(アクセル、ブレーキなどの制御がいらない)。レベル2はハンドフリー(ハンドル操作がいらない)。レベル3がアイズフリー(ドライバーがよそ見していてもOK)。レベル4がブレインフリー(ドライバーがまったく運転操作をしなくていい)。レベル5が完全自動運転(ドライバーがクルマに乗っていなくて良い=無人OK)。現在レベル2のクルマが売られ始めているがレベル2までは事故の際、責任比率がドライバーになるため比較的簡単に出来るものだという。
さて2つめのライフスタイル。BMWが現在の問題点としてあげたのが自動車保有におけるコストだ。試算ではクルマ1台、月1000ドル(約10万円)、年1万ドル(約100万円)と説明。このコストを減らすことが自動車所有率増加=販売台数増加。と考えていた。ではどうやってこの経費を減らすのか?だが、自動運転化によるカーシェアリングが提案なされた。レベル5のクルマであれば家に置きっぱなしになっている時間帯にカーシェアリングしてもらいお金を稼ぐことが可能になるという。例えるのならタクシーの代わりということだ。タクシードライバーの代わりがクルマのAIになるだけ。
今まで通勤時、駅までクルマで行くには家族に送ってもらう、または駅の近所で駐車場を借りるしかなかった。しかしレベル5であれば、朝、駅までクルマで行き、自分が降りればクルマは勝手に家の駐車場に戻っていく。夜、駅に到着時間をスマホなどからクルマに指示をすれば時間に合わせてクルマが駅まで迎えに来てくれる。
最後に株式会社三菱総合研究所、次世代インフラ事業本部の杉浦孝明氏とマイク・ボレス博士とのディスカッションが行われ、レベル2から3へ進化する難しさ、コネクティッドカー(IoT)について、高齢化社会における自動運転化の重要性などいくつかの項目が話し合われたが、ここで注目したいのが自動運転化で一番変わるのが「高齢化社会と自動運転」と「パラダイムシフトの移動」だ。 高齢者社会では加齢による判断ミス、反応ミス、突然死による事故をなくすことが出来る上、過疎地の交通インフラの代替として有効となるだろう。
もうひとつのパラダイムシフトの移動だが、今までドライバーは「運転」しなければならなかった。しかしレベル3以降のクルマであれば「運転しなくていい」のだ。電車やバスの中での移動のようにスマホをいじったり、新聞や本を読んだりできる。さらに到着地点を気にしなくてもいいので集中して会議や資料の作成など仕事もできるだろう。
いわゆる「死に時間(何もできない無駄な時間)」といわれていた移動時間を寝たり、仕事をしたり、自分磨きをしたり、ゲームをしたり自由に当てることが出来る。これが究極の自動運転の最大のメリットなのかもしれない。
BMWは電気自動車に力を入れ、燃料電池、水素電池、充電インフラへも積極席に取り組み、環境負荷をかけず自動車産業を発展させるための取り組みのひとつとして2021年には完全自動運転のクルマを発売するという。
最後にレベル5マシンで変わるライフスタイルをぜひ見て欲しい。言葉ではなかなか伝わらないが、動画をみればアナタもきっと自動運転車社会が待ち遠しくなるだろう。(リンクは別画面に飛びます)
https://www.press.bmwgroup.com/global/video/detail/PF0004746/bmw-auf-der-consumer-electronics-show-ces-2016-in-las-vegas
報告:中野貴子
撮影:中野貴子 BMW
新5シリーズは7シリーズ並の自動運転支援を備えているという。レベル2と3の差は大きい。
自動運転は、クルマだけでなくライフスタイルそのものを変える。BMWらしさを如何に残すか。
BMW本社から来日したマイク・ボレス博士と三菱総合研究所の杉浦孝明氏。両氏とも答えは明確