昨年は,200万円を切る価格で販売されたホンダ・インサイトや,年間販売台数トップの座に輝いたプリウスを代表とするハイブリッドカーの普及が,100年に一度といわれた不況下のなか,自動車業界において唯一の明るい材料だったと思う。
ハイブリッドカーが躍進する一方,三菱i-MiEVやスバル・プラグイン・ステラといった電気自動車も,企業や自治体などに少数ながら正規販売された。今年は,i-MiEVの増産や,電気自動車用にプラットフォームから新開発した日産リーフの発売が予定されており,今後は電気自動車が一般的に認知されることになるだろう。
元々,電気自動車の歴史は古く,1873年に実用化されている。1899年には100km/hを記録した電気自動車もあったというから,性能面でも優れていた。そもそも電気(モーター)の動力変換効率は,80〜90%と内燃機関(ガソリンやディーゼルエンジン)の30〜40%に比べて非常に高い。さらに,運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生ブレーキの活用に加え,太陽光や風力などの様々なクリーンエネルギーから電気を生み出せる利点もある。しかし,現在では内燃機関を利用した自動車が主流だ。この原因は,航続距離の短さといわれている。
航続距離を延長し,電気自動車を普及させる最大のキーポイントは,バッテリーにあると思う。最新の電気自動車には,リチウムイオンタイプが搭載されているが,非常に高価なうえに航続距離もまだ十分ではない。しかし,将来的にはより高効率のバッテリーが開発されることは間違いないし,本格的普及による量産効果により価格を抑えることも可能だ。その技術進歩の速さは,長年の研究により熟成されている内燃機関の比ではないだろう。
充電インフラの整備や衝突時の安全性,LCA(ライフサイクルアセスメント)など,本格的な普及には多くの問題を抱えている電気自動車だが,開発競争は待ったなしの状態。内燃機関を搭載する自動車よりも基本構造が簡単なため,新たなメーカーの参入が考えられるからだ(現に中国では多数のメーカーが開発に着手している)。他国に先駆けてハイブリッドカーや電気自動車を開発してきた日本メーカーの優位性もいつまで続くか分からない。本格的な開発に着手したときには,特許をすべて抑えられていたというような事態にならないよう各メーカーに願いた。
更なる性能向上と低価格化が期待される リチウムイオン電池(i-MiEV用電池セル)