自動車は二酸化炭素の排出を止めることができるか

後藤 俊之

 毎年のことだが今年もまた暑かった。気象庁によると8月中旬は東日本と西日本で観測史上最高の暑さだったという。
 8月中旬の平均気温は東日本が平年比で2.4度も高かった。西日本も平年比2.3度高く、いずれもこれまでの1位の記録を大幅に塗り替えた。気象庁ではなぜ異常な高温になったのか、これから検討するといっているが、この高温はなにも日本だけのことではなく世界中で起きている。今年の夏は北極海の氷もなくなり、北太平洋から北欧のバレンツ海まで北極経由の航路が開かれた。北極海の氷が夏には無くなってしまったのだ。
 この異常高温が地球温暖化のせいであることは、もう語りつくされているので、これ以上いう必要はないが、それにしても大気の中の二酸化炭素の量をなぜここまで増やしてしまったのか、何がそうさせたのか、その行為は厳しく追及しなければならない。
 異常高温だけでなく異常低温も起きており、日本では1984年に気象台始まって以来の寒波に襲われた。さらに異常豪雨、異常干ばつは世界各地で発生している。BS放送を見ているとよく分かるが、要するに地球全域にわたって異常気象が続いている。猛暑と干ばつが極端化してしまったのだ。
 大気に放出された二酸化炭素の寿命は、最低200年以上は残るというので、今、二酸化炭素の排出をゼロにしても今後200年以上は温暖化したこの地球と我々は付き合っていかなければならない。しかしながら、二酸化炭素の排出は急にはゼロにできないので、これからは、今よりさらに温暖化した、これまで人類が体験したことのない未知の地球に住む覚悟をしなければならない。
 温暖化してしまったこの地球は、異常豪雨と異常干ばつだけではない。海水温も当然のことながら上昇しているので、海水膨張による水面の上昇、また海流の流れも変化して漁業にも大きな影響を与えてしまうことも覚悟が必要だ。海岸に近い低地に住む居住者は移住が必要になるし、日常に食している魚の種類も変わってくる。
 二酸化炭素の上昇は産業革命のときから始まったので、産業革命以前を基準にして、そこから2度以内に抑えるという国際的な取り決めも、中国をはじめとする途上国群が真面目に守るとは思えない。東シナ海に石油、天然ガスがあるかもしれないと国連が発表したとたんに尖閣諸島は自分のものといい始めた中国に、化石燃料の燃焼を控える気が全くないことは明らか。いまだに続いている石炭の大量消費と二酸化炭素の大量排出、そのうえ、これに石油が加わるのであるから、地球温暖化の主役から降りる気が中国にないことは明らかだ。
アメリカも同様で、シェールガスを今後も掘り続けるであろうことから化石燃料の燃焼行為は今後も続けていく筈である。今でもアメリカの一人当たりの二酸化炭素排出量はインドの30倍であるから、シェールガスの掘削がこれから本格化すればアメリカの排出量はさらに増えるかもしれない。
 日本の二酸化炭素排出量に占める輸送部門の比率は18%になっているので、この中に自動車は含まれている。一番多い産業部門が34%を占めているので自動車が排出する二酸化炭素の量もかなりのものだ。その自動車がいかにして二酸化炭素の排出量を減らせるか。その方法に自動車業界は早急に着手しなければならない。ここで結論を先にいうと、今後自動車が生き残る道は自動車燃料の変更と、もう一つの道は電気自動車化だ。燃料の変更はアルコール燃料にすることだが、エタノールやメタノールを使うためには植物の固いセルロースを糖化するためのブレークスルーした技術革新が求められている。これが実現しないとアルコール燃料の普及は難しい。
 電気自動車にも問題は山積している。まずモーターだ。電気自動車が使用するモーターは高回転が求められる。そのためにはレアアースを含んだ永久磁石ではいけないので、永久磁石を使わない電気自動車用モーターが必要なのだ。そのためにはモーターのもう一段進んだ技術革新が必要とされている。もう一つはバッテリーの充電時間の短縮もやらなければならない。時間短縮にはマイナス極の新材料が必要といわれていて、その材料をバッテリーメーカーは今、懸命に探している。この二つに問題解決の目途が付けば自動車には明るい未来が開ける。逆に言うとこの問題を解決しない限り、自動車の存在は将来危うくなるということだ。


最終更新日:2013/09/17