らしさのデザイン面からの考察

松尾 良彦

大きく多様に。でもデザイン・テイストは変わらず
 英国のミニは、名設計者アレック・イシゴニスが創案した小型車の設計=横置きエンジンによるFFレイアウトに2ボックスボディを組み合わせたコンパクトモデルだ。十分な居住空間を持つまったく新しいこのレイアウトは、それまでのFR車やRR車を旧態化させ、今日に至る小型車の規範になった。ミニは世界中の小型車が同様な方式を採用する偉大な創始車なのである。
 しかし英国産業は衰退する。21世紀に入り英国の重要な自動車会社は外国資本の傘下に入った。ミニもその例外ではなく、BMWの系列となったが、BMWの優れた経営陣は有名なアイコンを活かし、新しい戦略によって現代にミニを復活させるのに成功したのである。
 ミニが持つ特徴的なデザイン・スタイルを今日的なスケールサイズに拡大し商品力を向上させ、個性的な高級小型車に仕立て直した。また、車種を増やし、ワゴン車のクラブマンやコンバーチブル、さらにSUVをクロスオーバーにまで展開して多様なニーズに応えた。
 スタンダード・ミニも、当初はオリジナル車に準じて2ドア車だけであったが、世界的なファミリーユースに対応して4ドア車も設定したし、スポーツタイプも追加した。英国時代のミニとは比べ物にならないほどの大バリエーションなのである。
 今や世界中のカーデザインのトレンドは同一化し、エンブレムやラジエーター・グリルを隠すとどこの車か判別できない傾向にすらある。そんな中にあってこの車だけは、伝統的なスタイル、すなわち、丸目ランプ、伝統的なグリル形状、立ったウインドーシールド、水平なルーフドリップなどによって一目でミニと判別できる。
  インテリアも“らしさ“の追求に余念がない。丸を基調としたインパネに加え、シートバック上部をラウンドさせている。さらにカラーリングのセンスもいい。内外とも魅力的で高級感のある個性的小型車としたそのデザイン戦略は成功している。ミニが世界的人気車であり続けているのは、こうしたデザインに対するこだわりと無縁ではないだろう。

報告:松尾良彦

全幅は1800mmを超えた。オリジナル・ミニとは比較にならほど成長。でもデザインは上手く継承。

全長も4315mm。これもオリジナルからは想像もできないほど長い。でもルーフラインなどに面影が。

リアも変わったと言えば言えるが、やはり“ミニ”らしい。デザインでも成功した稀有な例だ。


最終更新日:2017/10/02