ボルボ V90クロスカントリー
VOLVO V90 CROSS COUNTRY

二つの世界初を含め15以上の安全ディバイスを標準装備

北欧神話から採ったトールハンマー型ヘッドライト。後続車の選別には予想以上に便利だった。

自動運転サポート関連のスイッチは主にステアリングの左側にまとめられている。分かりやすい。

同一車線内の操舵も含めたパイロット・アシストII作動時には緑のステアリング・マークが点灯。


前車との距離を調整しながら、加速、減速、巡航、停止を行う。前方の歩行者等にも対応する。

右折時に対向車がいる場合に自動ブレーキをかける機能もボルボが世界で最初に開発・採用した。

対向車がいるのにセンターラインを越えた場合は、ステアリングを自動修正して元の車線に戻す。


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 今年2月に発表され、9月にデリバリーが開始されたボルボの最上級クラスであるV90クロスカントリーを試乗する機会を得た。首都高速から海ほたるを往復するコースで、全車に標準装備した運転支援機能「パイロット・アシスト」を試すことにした。
 V90クロスカントリーのボディは全長4940mm、全幅1905mm、全高1545mmとグラマラスである。V90をベースに、最低地上高を55mm高めたクロスオーバーモデルだ。最近のSUVとは違い、ボルボらしいスタイリッシュなワゴンに仕上げている。
 地下駐車場から地上に上がる螺旋通路では、グラマラスなボディに気を使うが、ひとたび道路に出てしまえば広々とした室内空間と安定感のあるボディが運転にゆとりをあたえる。ステアリングの操舵感はしっかりとした重さで好感が持てた。デリバリー前に試乗した際には重過ぎると感じたが、重めにセットされていただけで、ユーザーの好みで調整が可能だ。
 試乗車のグレードはT6 AWD Summum(サマム)。パワートレインの2.0リッター4気筒スーパーチャージャー付き直噴ターボは、最高出力235kW(320ps)、最大トルク400Nm(40.8kgm)を発揮する。
 高架になっている首都高の入口は上り坂だ。最大トルクが2200〜5400回転で発生するから、アクセルペダルを軽く踏み込むだけで1870kgの車体を軽快に加速させてくれる。大排気量車の豪快な加速ではなく、必要かつ十分な軽快な加速感だ。タイヤが245/45R20と45%の扁平率でありながらも道路のつなぎ目では、路面からの突き上げをあまり感じない。足回を軽量化と高剛性を両立した新開発の専用サスペンションを採用した効果も要因の一つだ。
 ボルボといえば「安全」のイメージがある。2つの世界初の安全技術を含む15種類以上の先進安全・運転支援技術「IntelliSafe(インテリセーフ)」を標準で装備した。「2020年までに、新しいボルボ車での交通事故よる死亡者や重傷者をゼロにする」とする安全目標「VISION 2020」を目指す姿勢は、さすがボルボである。
次は「レベル3」を飛び越えて一挙に「レベル4」?
 注目したのは運転支援機能の「パイロット・アシスト2」。2016年モデルのXC90で採用した「パイロット・アシスト」をバージョンアップしたもので、2017年モデルXC90にも素早く切り替えている。
 パイロット・アシストを有効にするには、ステアリング左側スイッチの7つのボタンを操作する。設定速度、車間距離を選んでパイロット・アシストを有効にしたら、スピードメーター内のステアリング・マークが緑色に点灯し、運転支援機能が働いた。車線の中央を維持するようにステアリングが自ら制御する。感覚的には、中央よりやや左よりをキープする。パイロット・アシスト2では、前走車がいなくても車線維持走行が可能となり、作動域も50km/hから140km/hまでに拡大した。高速道路での断続的な渋滞に遭遇したケースで真価を発揮するだろう。
 ただし現在は、自動運転「レベル2」の段階だ。あくまで運転支援であり運転の責任はドライバーにある。ステアリングから手を放すと状況にもよるが約15秒でピッピッと警告音がして運転支援機能が一時保留された。
 首都高速での試乗ということで、速度にもよるがRのきついコーナーでは、ステアリング操作をドライバーが介入すべきとボルボ担当者からアドバイスを受けた。試乗中には幸運にも渋滞にはまった。渋滞最後部に近づくと、ブレーキがかかり完全に停車。前の車が走り出すと自動で追従する。
 停車時間が4秒を過ぎると運転支援機能が保留されるが、アクセルを踏むかステアリングの運転支援機能復帰スイッチを押せば自動追従を開始した。停車後4秒で機能が保留されるのは、自動運転への依存、過信を防ぎ、運転の主体はドライバーにあることを喚起させるためだ。
 ボルボは今後、自動運転「レベル3」を飛び越えて、ドライバーが運転に全く関与しない完全自動運転の「レベル4」を目指すという。

報告:怒谷彰久
写真:佐久間健 ボルボ・カー・ジャパン

最終更新:2017/10/15