【JAIA 2018】テスラ モデルX
TESLA MODEL X

宇宙から来た乗り物

跳ね上げ式のリアドア。ガルウイングではなくファルコン(隼)ウインドーと呼ぶ。

宇宙ロケットの打ち上げにも成功した。イーロン・マスクの夢はさらに大きく膨らむ。

全長5030弌∩管2070弌B腓い。プラットフォームは先に出たモデルSと共通。


インパネは予想外にすっきりしている。点灯ですら中央のモニターを介して行う。

動力源は前後アクスルに1基ずつのモーター。だからボンネットの下はこんな具合。

SUVらしくラゲッジスペース十分。2列目は分割可倒式、3列目は畳むこともでる。


※画像クリックで拡大表示します。

 筆者にとってテスラに乗るのはセダンのモデルSに続いてこれが二度目。初体験だった前回は長年クルマの世界にどっぷり浸かってきた自分にとって予想を裏切る新鮮な驚きの連続で、正直言って当初はいささか懐疑的だったのが気付いてみればすっかり『テスラ教』を前に頭を垂れる自分がいた。
「改宗」の理由は例えばこうである。ダッシュボードは一種病的なほどスッキリしていてライトのスイッチひとつ見当たらないと思いきや、実は中央のモニター画面を繰ることによってそれが現われるという発想の意外さに心奪われ、はたまた走行機能に関することでさえ、得意のインターネット常時接続によってOSそのものが適宜ダウンロード/アップデートされるというクレバーさに舌を巻かされたりしたものだ。
 そうなるとはじめは素っ気なく見えたマスク(フロントグリル)が映画『スター・ウォーズ』の“ストームトルーパー”を想わせて好感を抱くようになったり、モデルSのクルマそのものと三次元相似形を成すリモコンキーがそのボンネット部分を押すと同時に実車のそれも浮き上がってみせるなどという新手の演出も単なるギミックの誹りを超えて憎からず思えてくるから不思議だ。
クルマじゃないクルマ
 今回のモデルXは2016年に日本に導入が開始された同社初のSUV。リチウム電池容量やモーター出力など例によって複数のスペックが用意されたプラットフォーム自体はモデルSと共有ながらフロアから上の「上屋」をそっくり造り換えた、いわば現行主力レンジのボディバリエーションだ。
 しかし、その「バリエーション度合い」が従来の常識を覆す思い切った代物なのである。全長5030×全幅2070mm、ホイールベース2960mmはモデルS同様その昔なら“フルサイズ”と呼ばれた堂々たる体躯だが、なかでも驚かされるのがクローズドで1680mm、そしてオープンでなんと2200mmにも達する全高そのものとその空間利用の有り様。この点はまさにアメリカ車ならではと言うべきで、日本では機械式はむろんのこと平場でも室内駐車場の多くに収まらず、アイデア自体が開発時点で却下されるに違いない。
 せっかくゆったりしたラウンジ風のリアシートにパセンジャーを迎えるのであればストレスなしにできればいいに決まっている。開口部は広くスクエアに、また開閉に伴ってドア自体が乗降の邪魔にならないようにというわけで、彼らはEVでありながらそれ(電動式)に要する消費電力などものかはといったノリで“ファルコン(ハヤブサ)ウィングドア”と呼ばれるダブルヒンジ/跳ね上げ式のリアドアを独自に編み出した。実際、アクセシビリティは例外的に秀逸ですんなりと室内に入ることができ、文字どおりハヤブサが羽を拡げたかのような独得の佇まいもスーパーカーなどとも違う、それ自体が一個の「見物」なのである。
無国籍良品
 モデルSでもすでに感じられた、かつての“アメ車”らしからぬしっかりした足取りは幸い腰高で車重2.3トンにも及ぶこのモデルXでも損なわれずにいることが確認された。EPSステアリングはむろん選択可能なモード次第だが、デフォルト状態でもよくできたヨーロッパ車のそれのようにシュアな手応えと良好なフィールを持ち、曖昧さとは無縁である。
 テストに供されたのはスターティンググレードの“75D”(1115万円から。ほかに“100D”と“P100D”有り)だったが、75kWhのバッテリーを備え、前後アクスルに1基ずつのモーターを介しての加速は車重ゆえか発進直後こそモデルSの記憶とはやや懸け離れた緩慢さが見られるものの、一旦動き始めてからのきわめてトルキーな感覚はやはりスーパーEVの名に恥じず、0-100km/h:5.2秒のメーカー公称値(P100Dは実にスーパーカー並みの3.1秒!)を信じさせるに充分だった。NEDC(新欧州ドライビング・サイクル)での航続距離は75Dが417km、100Dが565km、P100Dが542kmと謳われている。
 時恰もこの日の前日、テスラを率いるイーロン・マスクが並行して進める“スペースX”の事業で“ファルコンヘビー”なる大型ロケットになんとテスラ・ロードスターを積み込み、フロリダ州のNASA宇宙センターから打ち上げることに成功した。目下“モデル3”の量産に手間取っている同社ではあるが、夢の大きさも並外れているのは確かだ。
報告:道田宣和
写真:怒谷彰久

<道田 宣和> 最終更新:2018/02/14