ボルボ?60
VOLVO V60 [3]

足回りにボルボらしいやさしさを感じた



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 国内外を問わず、今やクルマの基本形はSUVとなってしまったかのようだが、ボルボVシリーズは希少な(?)古典的ステーションワゴンだ。SUVはデザインでいろいろ変化を付けてはいるが、結局のところ背の高いオフローダー風のクルマと言える。その中で、オーソドックスなワゴンというだけでちょっと肩の力が抜ける。V60はそんな気持ちにさせるクルマだ。
 エクステリアに関してざっと触れておくと、“フライングブリック”に先祖返りしたという声もあったが、イメージ的には70年代初頭のP1800ESまでさかのぼった感じ。サイドビューは、1960年代のスポーツクーペであるP1800と同様のウイングシェイプを横のラインに取り入れているというから、ノスタルジック路線なのだろう。ただ、その中にも現代の機能美を取り入れているのは好感が持てる。
 先代のV60 と比較して全長が125mm伸び4760?、全高が45?低くなって1435?となったことで、かなり“シュッとした”感じとなった。一方、全幅は15?狭くなり1850?となったのは、日本の道路環境や駐車場事情を反映したものという。インテリアは「スカンジナビアンデザイン」。機能性というよりは、癒し系重視の感もあり、好みの問題はあるだろう。室内空間は2870?のホイールベースを活かしたっぷりとってあるから充分に広く、ラゲッジスペースは529リッターのクラストップ。後席を倒せば1441リッターというから、旅にでるような使い方も充分に可能だ。
 今回試乗したV60T5インスクリプションで、同モメンタムの装備を充実させた仕様。XC90から導入されたSPAプラットフォームを使用し、走りの良さはもちろん、ボルボらしく衝突時の衝撃吸収性能に充分気を使っている。走り出してまず感じたのは、当たりの硬すぎない足回り。この辺はBMWやアウディなどのドイツ車とくらべると明らかで、ボルボ的にはワゴン用にかためたのかもしれないが、それでもやさしい感じがした。
 高速道路に入ってアクセルを踏み込むと力強い加速を見せる。駆動方式がFWDなので、軽いのが効いているのか?とも思ったが、1700kgと結構な重量級だ。どうやら245ps/5500rpm、350Nm/1500‐4800rpmを発生する2リッター直4 DOHCターボエンジンの要素の方が大きそうだ。ドライビングモードは「エコ」「ダイナミック」など4モードが選択できる。「ダイナミック」でワインディングと行きたいところだったが、それは叶わなかった。

インターフェイスがもう少しわかりやすくなれば……
 V60には、安全性向上や運転支援を行う16種類以上の「IntelliSafe(インテリセーフ)が全車標準装備となっている。その中でも新基軸として触れておきたいのは「対向車対応機能」だ。これは対向車との衝突が避けられない場合、衝突警告、前席左右の電動シートベルトと自動ブレーキの作動を同時に開始し、衝突速度を最大10km/h低下できる。たかが10km/hとはあなどれない。ここが生死の境目になることは十分有り得る。それは現時点での、このクルマの大きなセールスポイントとなるだろう。パイロットアシストや全車速追従機能付きACCも標準装備で、より洗練された印象を持った。
 ただ、これはボルボだけに限らないがインターフェイスはもう少しわかりやすくすることが必要だと思う。電子デバイスの使いこなしには得手不得手がある。本当にこうした装備の恩恵を受けたい年配の人が使いこなすことができず、必ずしもなくてもいい人が、使い慣れたスマホのように使いこなす構図が見える。そういう意味では、センターディスプレイのタッチパネルも使いやすいとは言いづらい。ボルボにはその辺でも、最善を目指してもらいたい。

報告:飯嶋洋治
注:画像は公式ホームページより抜粋

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