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今回の目的はプロパイロット2.0の体験なので、スカイラインそのものの評価はできず。なにしろハンドルも握らない試乗なのだから‥。アクセルペダルを踏むことも、ごく短い下道区間ぐらいでしか、なかった。
注目の手ばなし運転(ハンズオフ)モードは、ナビのルート案内による高速道路内の走行で、条件が揃ったときのみ。ただ今回乗ったかぎりでは、トンネル内などでなく、車線規制などもなければ、ハンズオフ許可には比較的すぐになるようだった。
私が運転席に座った30分弱では、車線規制もあって条件が整わず、なかなかハンズオフにならなかった。もっともハンズオン状態とはいえ、従来のプロパイロットと同じ同一車線内走行、ACCなどはずっと働いていた。その際の驚きは、やはり車線内走行がスムーズなこと。レーン中央をピタリと走り、プロパイロットを初採用したセレナなどで顕著だった車線内のジグザグ走行などはなく、隣に大型トラックが走っていても、安心していられた。
これはやはり盤石の監視体制あってのこと。「7個のカメラ(前方3個)、5個のレーダー、12個のソナー」で車両周囲を検知し、GPSで自車位置を把握し、高精度3D地図データと常時照合しながら走行する。セレナなど基本的に単眼カメラ1個だけで前方を検知していたのだから、その差は大きい。これだけ備えれば、これくらいはできるともいえるのだろうが、問題はコストがどれくらいかということか。
ドライバーも監視。前方注意を怠るとしっかり警告音
ステアリングを握っていても、ぎこちない動きをしないので、気持ちよい。ステアリングはバイワイヤなので、極端をいえば、ハンズオフのときなどステアリングホイール固定も理屈ではできるはず。ただ、ドライバーがすぐ復帰できなければいけないし、ステアリングは常時しかるべく動いている。ステア・バイワイヤはこのスムーズな走りに貢献しているとは思われるが、プロパイロット2.0ができるかの決め手は、電動パワステであるという。
ハンズオフ・モードに入っても、手をはなさない限りとくになにも変わらない。モードに入ったら早速写真を撮ってみた。手をはなすだけなら最近の運転支援システムでは、警告が出るまで数十秒ぐらいは事実上できるのも珍しくない。ただ走行中に撮影行為というのはさすがに「後ろめたさ」を感じたが、同乗のスタッフもどうぞと勧めてくれた。もちろん、あくまで車両前方を視界に入れて注意し、いつでも運転に復帰できるのが前提だ。
ダッシュ上には監視カメラがあり、ドライバーが前方注意を怠ると警告が出て、ガイドをやめることになる。試しに右横を向いて見たが、しっかり警告が出た。考えてみれば、昔からクルマにはダッシュやコンソール上にエアコンやオーディオなどのスイッチがあり、それを操作する行為は認められていたわけだ。プロパイロット2.0では、運転支援が手厚いので、多少そういうことに余裕があるということになるのか。プロパイロット2.0でも、手ばなしはしてもよいが、運転をしなくてもよいわけではない。まあ、ほぼ前方注意だけが「運転」になるわけだけれども。
追い越しや分岐は制限速度内。後に車列できることも
もうひとつの目玉である、車線変更アシストは、追い越しの条件が整うと、システムが「提案」をしてきて、同意のボタンを押すと車線変更して、追い越し車線(右側車線)に入る。その動き自体は車線内走行と同じで安定している。しかしあくまで法定速度で追い越しをするので、交通量が多いとすぐに後方にクルマがつかえて、後続車をイライラさせ、こちらはヤキモキすることになる。高速の出口でも同じで、指示に従って出口のランプに出て行くのだが、そこで制限速度が40km/hなどになるので、そこまですぐに減速する。するとたちまち後方にクルマが何台もつらなる。
それを避けるには、アクセルを踏んでオーバーライドすればよいようだが、結論からいえば、ハンズオフ走行時には、少なくとも交通量の多い区間では、淡々と走行車線を走るのがよさそう。他車との間合いをとって流れにのるべき要所では、ドライバーが介入して自分でやったほうがよさそうというのが、今回の率直な感想。
スタッフによると、ハンズオフができること自体より、ハンズオフができるくらいシステムの信頼性があることが大事とのこと。それはたしかに納得した。まあハンズオフ走行は数年前に、CMでもやっちゃっている看板的技術だし、アピールしないわけにいかないだろう。
運転支援システムが高度になると、それを使いこなすにもそれなりに習熟が必要ということも実感された。使うのはあくまで人間、というのはたとえ自動運転になっても、根本は変わらないのだろう。自動運転のその先?の未来はわからないけれど‥。
まだ進化の過程にあるのは間違いないとはいえ、プロパイロット2.0は運転者の負担が減り、少なくとも両手を休ませることができるなど、身体と神経を休ませて安心して長距離運転ができる。なにより、技術の進歩をおおいに実感させられた。
報告:武田隆
写真:佐久間健