アウディ A1 スポーツバック 35 TFSI S line

車内も荷室も広くなって車幅は変わらず

A1とA1スポーツバック、S1含めてシリーズとしては全世界で90万台以上、日本でも3万台売れた。

グレードは内装重視のアドヴァンスドとスポーティさを意識したS lineがある。試乗車はS line。

操舵の初期は多少軽め。乗り心地はややかため。試乗車のタイヤはBSのトランザ215/45R17。


インテリアは直線基調になった。センターの大きなディスプレイの下にはエアコンなどのスイッチ。

リアシートは見た目以上に広くなった。95?伸びたホイールベースの効果は大きい。

新設計の1.5リッターターボ。1.0リッターエンジンは来年第二四半期に導入。e-tronも来年。


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 普通の車である。それも素晴らしく良くできたフツーのクルマである。
 ちょっと見にはQ2に似ている。とくに幅広で直線的なCピラーが──。ボディのエッジはQ2の方が変化に富み個性的だ。個性的なら何でもイイというものでもないが、Q2のデザインはいい。A1はスポーツクワトロへのオマージュをボンネット下の三つのスリットやオーバーフェンダーでアピールする。それに反論する気はないが、スポーツクワトロってそんなに偉大か? という疑問を抱かなくもなくもない。
 Q2はSUV、A1はハッチバック、ジャンルが違う。例えば全高などはQ2の方が約65?高い。これは当然だ。A1の1740?の全幅(先代と同じ)もQ2より50?以上狭い。これは必ずしも当然ではない。意思の問題だ。ホイールベースは95?、全長は55?伸びているにも関わらず、最小回転半径はQ2と同じ5.1mに抑えている。ラゲッジルームも65リッター増えた。
 どうやらアウディもコンパクトカーの全幅に関しては正常心を取り戻したようだ。とは言え、大柄なA8、あの悠々たる乗り心地と小回りも利く堂々とした巨体、あれはあれとして惹かれるものがある。
 内装はうまくクオリティを演出している。スキがない。ただ、A8などに採用されたタッチレスポンス式ディスプレイ(MMIナビゲーションシステム)は今日的ではあるけれど、目で確認しないとやや不安が残る世代には使い勝手はさほど良くない。この辺りはスマホ世代には関係ないことなのかもしれない。
 「それでも!」とオジサン世代には抵抗感を抱く(人もいる)。その点、留飲を下げさせてくれたのが今回のセンターコンソール部だ。上部はタッチパネル(もう仕方ないか)。各種情報はここで処理する。しかし、エアコン類のコントロールはその下スイッチやダイヤルが担当する。触れて分かる。小さな幸せ、である。

来年には1リッターモデルが入る。様子見もあり?

 一時は同じグループのVWは青、アウディは赤とランプ表示のカラーを分けていたが、最近はそんなバリアはなくなった。代わりに両ブランド共に幅を利かせてきたのがナビとメーターの組み合わせを何種類も変えられるバーチャルコックピット(10.25インチ)だ。日本で初めて採用されたのはTTだったと記憶している。
 たぶん一番いいのはメーターパネルのマップを最大限表示させ、速度計とタコメーターを両左右にチョコン示すことだろう。そういえばバーチャルコックピットとセットオプションのナビゲーションパッケージのディスプレイも大きくて見やすい。
 エンジンは新設計の1.5リッター4気筒ターボ。最高出力は110kW(150ps)、最大トルクは250Nm。これまでの1.4リッターに代わるエンジンだ。来年の第二四半期には1リッター3気筒が追加されるらしい。先代は約9割が1リッターだというから「待ち」もありだろう。
 新エンジンは箱根の山道でもパワー/トルクに過不足はなかった。過剰か不足かと言えば過剰に近い。少なくとも街中ではこれで十分だ。ハンドリングもいい。やや軽すぎるきらいはあるが全体としては穏やかだ。ただ、乗り心地は少しかたい。減衰力も同じだ。不快ではないが路面によってはコツンとくる。
 ケチの付け所がないほどパーフェクトだとは思わないが仕上がりのレベルは高い。バランスがいい。あえて不満を言えば365万円から始まるプライスタッグ。排気量や装備などの違いはあるがVWポロと比べるとやはり高い。
報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健

最終更新:2019/11/25