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世界市場で急速に拡大するSUV市場だが、本来はJeepに代表さるようなオフロード性が重視された4輪駆動モデルが主体で、アメリカが発祥の地といっても過言ではない。一方で近年急速に販売台数が拡大しているのが乗用車系のプラットフォームを活用して広範囲なユーザー層の日常生活を対象としたクロスオーバーSUVで、オフロード性は決して高くないが、セダン、クーペ、ハッチバック、ステーションワゴンなどの伝統的、古典的な車種に比べてよりアクティブなライフスタイルをアピールできるモデルといってもいいだろう。
1リットル3気筒ターボは動力として不足なし
現在国内では商用車を除いた軽を含む総販売台数の約1/4がSUVで、その比率は上昇中だ。国産車ではレクサスのSUV比率は国内、米国市場とも8割近くと非常に高く、昨今のトヨタのクロスオーバーSUVへの注力も半端なものではない。
欧州系ブランドのSUVも注目に値するもので、アウディ(Q2、SQ2、Q3、Q3 Sportsback、Q5、SQ5、Q7、Q8)、BMW (X1、X2、X3、X4、X5、X6、X6)、メルセデスベンツ(GLA、GLB、GLC、GLCクーペ、GLE、GLEクーペ、GLS)など実に多岐にわたるSUVをそろえている。そのような中で、フォルクスワーゲンのSUVはこれまではなぜかTiguan(ティグアン)しかなかったが、ここへきてT-Roc、T-Crossが導入され、SUVへ注力し始めたことが分かる。今回T-Crossに短時間だが試乗する機会が得られたので、以下その印象をお伝えしたい。
T-Crossはポロをベースにしており、試乗したTSI 1 st Plusの車体寸法は4115×1760×1580?、1リットル3気筒ターボエンジンと7速DSG が組み合わされたモデルで、VWのSUVの中で最もコンパクトだ。1リットルエンジンながら発進性、市街地における加速などにおいて不足を感じることはなく、Sモードではかなりの走り感が得られ、3気筒に起因する振動なども全く気にならなかった。
ステアリング・ハンドリングも、オンセンターフィールが良好で操舵時のリニアリティーに富み、市街地はもちろん、ワインディングロードでも気持ち良く動いてくれる上に、乗り心地も、前席に関しては良好で、走りの領域は車体の剛性も貢献しているのだろう、総じて好感が持てた。
後席の乗り心地とロードノーズがやや気になった
室内居住性は、後席も含めてファミリーカーとして十分で、荷室も十分なスペースがあり、フロントシートの着座間、ホールド性も良好だ。ただしこのグレードに装着されている18インチ45偏平タイヤに起因してか、後席の乗り心地とロードノイズが気になった。ファミリーカーという位置づけから見ると、乗り心地、ロードノイズ、タイヤ交換時のコストも含めて16インチタイヤの方が望ましいのではないだろうか?
外観スタイル、内装デザインも決した悪くはないが、外観スタイルは正直言ってかなりコンサバティブな造形で、もう一歩思い切った新しい挑戦がほしかったと思うのは私だけだろうか? 内装はアームレストを除いて全てハードプラスティックで、質感があまり褒められないのもちょっと気になった。価格帯は299万9000~335万9000円(試乗モデル)とやや高めだ。T-Rocも含めてSUV戦略を強化しつつある今後のVWの世界市場における販売動向に注目してゆきたい。
原稿:小早川 隆治
写真:佐久間 健