※画像クリックで拡大表示します。
使い勝手に優れたミニバンと、扱いやすいコンパクトカーの両方の長所を併せ持つのがコンパクトトールワゴンだ。その代表的なモデルとして高い人気を集めているのがスズキ「ソリオ」。20年12月に登場したその新型モデルは、コンパクトなボディサイズはそのままに、後席の快適性や荷室容量を拡大し、より心地よく、より使い勝手の良さを高めたのがその特徴。発売以来、好調なセールスを続けていることも納得できる高実力車だ。
小さなボディに凝縮された高効率のパッケージ
新型ソリオは、先代と同じく標準の「ソリオ」と専用デザインの「ソリオバンディット」の2本立て。そのうち今回は「ソリオバンディット」に試乗した。
プラットフォームは先代からのキャリーオーバーだが、ボディは一回り拡大され、全長を80mm(バンディットは70mm)延長。これにより室内スペースを拡大しているが、それでもボディサイズは全長3790×全幅1645×全高1745mmと小さいことには変わらない。
一方で、室内は小さな外観からは想像できないほど広々。特に後席は足元、頭上ともにスペースに余裕たっぷり。両側スライドドアに加えてフロア高も低いので、乗り込みやすいのも好ポイントだ。後席シートは左右独立してスライドでき、さらにリクライニング機構やアームレストも装備されているので、荷物や状況に合わせて最適な使い方ができる。シートの座り心地もよく、家族でのロングドライブも楽にこなせる。荷室スペースも拡大されたので、大きな荷物を積むことが多いアウトドアレジャーにも使いやすくなった。
前席も視界が広く、見晴らしがいい。インパネは上部に張り出しが少ない直線基調で、視界を妨げず運転しやすい。センターメーターを採用するが、表示も大きく視認性も問題なし。さらにバンディットには、運転に必要な情報が目の前に表示されるヘッドアップディスプレイも装備されているので、この点で不安を感じることはないだろう。インパネ周りは余計な加飾などはなく、機能本位にまとめられているので操作性も良好だ。
優しい乗り味でロングドライブも楽しい
バンディットはスポーティなルックスだが、足回りはソフトで乗り心地優先のセッティング。しかしロールはよく抑えられていて気にならず、コーナーでの安定感は高い。ただ前後のピッチの納まりが若干遅く、荒れた路面で大きな揺れが続くのは若干気になった。ステアリングも軽く、低速域では扱いやすいが接地感を伝えてこないタイプなので、カッチリとした操舵感を好むドライバーだと不安に感じるかもしれない。もちろんサイズは全然違うが、基調としては大型ミニバンに近い乗り味だ。
が、それ故に家族での旅行など、ノンビリしたペースでの長距離移動にも向いている。ステアリングやアクセル操作への反応も穏やかなので、気を遣うことなくリラックスしてドライブすることができる。
搭載するエンジンは1.2LのNAだが、これをモーターがアシストするマイルドハイブリッド。発進時はこのモーターがエンジンをアシストし、スムーズにパワーを発揮してくれる。ターボのようなパワフルさはないものの、アクセルを踏み込んでも荒さはなく、中速域からの加速も必要十分。日常の中で不満を感じることはないだろう。
総じて見ると、この新型ソリオは背の高いコンパクトカーというよりも、小さいミニバンと捉えたいモデルである。乗り心地も含めてミニバンが好きだが、3列目シートは不要というユーザーに最適。安全装備や快適装備も充実しており、幅広い使い方が出来る楽しいモデルだ。
報告:鞍智誉章
写真:カーアンドレジャーニュース