2024年6月30日から7月5日まで、2023年12月には発表された新型スイフトHYBRID モデルの試乗車を借り出して、一般道および高速道路を約200km走行してテスト行なった。
【製品概要】
2004年に世界戦略車としての初代スイフトが誕生して以来、翌年にスイフトスポーツが投入され、2010年に二代目のスイフト、2011年に二代目スイフトスポーツ、2016年に三代目のスイフトがデビュー。順調に代を重ねており、国内外のスズキブランドをけん引する小型車の主力車種として成長している。スズキの資料によれば「世界累計販売台数は約900万台に達した(2023年12月)」と発表されている。
四代目となる今回の新型は『エネルギッシュ×軽やか「日常の移動を遊びに変える」洗練されたスマートコンパクト』をコンセプトとして開発された。ラインナップはHYBRID MZ、HYBRID MX、XGの3タイプでそれぞれ2WDと4WDを設定。ミッションはCVTであるがパドルシフト付きのモデルもあり、HYBRID MXの2WDには今では少なくなった5速マニュアルトランスミッション(5MT)仕様も用意されている。ボディ塗装は3層コート塗装を採用し、全13色のカラーを選べる。搭載されたエンジンは、新開発となるZ12型で、3気筒・DOHC・4バルブ・高圧縮比13.0で最高出力は60kW(82PS)/5700rpm、最大トルクは108Nm(11kg-m)/4500rpmのスペックである。シリンダーヘッドなどの改良によって高速燃焼化をはかり、燃費性能を向上したという。HYBRID MZ、HYBRID MXにはマイルドハイブリッドを採用。モーター機能付き発電機ISG+リチウムイオンバッテリーのシステムは、スズキ国内販売で5MTにも初めて搭載された。今回テスト車のスイフトHYBRID MZ(2WD・5MT)は、厳しいWLTCモード燃費で24.5km/Lを実現。
テスト者:小林謙一
車種:スズキ スイフトHYBRID MZ(2WD・CVT)
寸法:全長3860mm 全幅:1695mm 全高:1500mm
車重:950kg トランスミッション:CVT
定員:5名
タイヤ:ブリヂストン・エコピア 前後とも185/55R16 83V
タイヤ指定空気圧:前250kPa 後220kPa
テスト時の天候:主に晴れ/曇り 室内温度25℃設定
全走行距離:約200km (高速道路80%+一般道20%程度・渋滞含む)
消費燃料:6.87L(レギュラー)※156.5km走行後の給油
平均燃費:22.8km/L(22.78?/L)
価格(税込):216万7000円(試乗車はオプション込みで246万2130円)
メーカーオプション:全方位モニター付メモリーナビゲーション・スズキコネクト対応通信機装着車 13万3100円
ディーラーオプション:フロアマット(ジュータン)<スタウト> 1万7820円、ワイヤレス充電器 4万9830円、ETC2.0車載器 4万6640円、ドライブレコーダー(前方録画用) 4万7740円
【短評】
今では珍しくなってきた日本の道路状況に最適な5ナンバーサイズに加えて、実用的な使いやすい4ドアハッチバックのスイフト。四輪駆動タイプ(4WD)も用意されていて、寒い地域などでも運転に対する安心感は高いだろう。コンパクトクラスとしては、内外装も全体の質感は高く、全体に高評価となった。特に今回のテストでは、燃費の良さを高く評価。お買い得な経済性の高いファミリーカーとして筆頭といえる一台
【外観および内装デザイン】
今では数少なくなった5ナンバーサイズが好ましい。1695mmの全幅、4m以下の3860mmの全長は日常の買い物や送迎など、一般道を多用する方には運転しやすくて最適なサイズ。四代目となるスイフトの外観は、三代目のデザインが継承されており、スイフトらしいまとまりのある、デザインの破綻もなく、男性的でも女性的でもない、中立的なデザインで全体がまとめられているといえる。内装に関しては、コンパクトクラスとしてはかなり思い切ったデザインを採用。ひとクラス上の印象を受けた。
【運転の楽しさや走り感】
新開発された1.2リッター3気筒エンジンは、エンジン音も静かで低速トルクも充分。軽い車体もコーナリング時の楽しさに寄与している。また、走り感に関しては、このクラスとしては充分。より走りを楽しむには、HYBRID MXの5MTタイプかパドルシフトが付いたHYBRID MZを選択したい。ステアリングは、上級モデルには革巻きのステアリングが標準装着されており、質感は高い。ハンドリングに関しては、FFらしさはほとんど感じさせない素直なハンドリング特性。操舵感覚は、過敏ではなくニュートラルであるから運転しやすく、ワインディングなどでも楽しい。
【ブレーキ性能や静粛性】
ブレーキの立ち上がりは穏やかだが、踏み込んだ時には強力に利くスズキらしい制動特性で、他車からの乗り換え時には慣れは必要と思われる。走行中の室内の振動は少なく、3気筒エンジンのデメリットは全く感じなかった。一般道でも静粛性は高い。ただし、高速道路の荒れた路面状況によっては、タイヤ付近からのロードノイズがかなり室内に入る。
【乗り心地と室内居住性】
サスペンションはストロークがあり、乗り心地はしなやか。道路の継ぎ目からくる車体へのショックも吸収が良く、車体のボディ剛性は高い印象であった。室内居住性に関しては、フロントウインドの過度な傾斜も少なく、前席は身長176センチの私には狭苦しさは感じなかった。後席の足元空間も問題ないスペースを確保されている。フロントシートは、初代から歴代のスイフトのシートサイズが大きく好ましい。肩の部分もサポートされていて、座面の広さもある。リアシートも大きさも座面の硬さも適度であり、両シート共に高く評価したい。
【操作機器、メーター類】
操作系のスイッチ等はすべて運転席から届き、操作もしやすい。メーター表示もすっきりしたデザインでまとめられており、ホワイトで表示されていて見やすい。唯一、CDオーディオの上にある空調のスイッチ表示の文字が小さく、夜間照明のオレンジ色も見にくい。
【利便性、使い勝手、燃費】
ボディサイズも5ナンバー枠であり、日常に使うにはベストサイズの1台。4ドアもハッチバックも便利。実測燃費は、今回156.5?走行時に6.87L給油し、22.78km/Lを記録した(高速道路75%+一般道25%程度・渋滞含む)。WLTCモード燃費(24.5km/L)に近く、250?クラスのスクーターと同等の数値と考えれば、燃費性能はかなり高い。
【品質感やお買い得感】
外観の細部のつくりや、内装の材質感など、全体の品質感は高いし、販売の中心となるモデルは、HYBRID MX(2WD・CVT)になると思われるが、200万円以下の価格設定は近年の国産車の普通車の価格と比較するとお買い得なモデルといえる。将来発表されると思われるスポーティモデルの四代目スイフトスポーツの登場にも期待したい。
■スイフトの3大魅力点
1.コンパクトなサイズの取りまわしの良さ
2.使い勝手が良い4ドアと便利なハッチバック
3ターボ付軽自動車以上に経済性の高い燃費性能
■改善希望点
一般道では静粛性は全体的に高いが、高速道路では路面状況によって発生するロードノイズと、唯一見にくい空調関係のスイッチの文字と夜間の照明色。
報告/写真:小林 謙一










