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快適性や走行性など、日常に期待されている性能をベースにしながら、アウトドアテイストをそれぞれに組み合わせて”増殖”を続けているSUV。新型車開発陣と話をしていると、そこに本格的から身近なといったコンセプトが付くことがあり、それぞれに細やかにライフスタイルを提案し、そして、それぞれにキャラクターを込めていることがある。それでSUVを名乗っていいのか、つまりは、悪路走行性能を語れないのにSUVを語っていいのか? と思うことがあるが、こうした否定的な意見を訴えるのは、比較的、かつての”ヨンクブーム”、”アウトドアブーム”に対して、頑なに”懐かしさ”を重ねたがる世代であり、メインストリームではないことも、時に感じたりする。
ちなみに、SUVというジャンルがおぼろげながらに姿を現したのは、80後半〜90年代にまで遡る。そこそこにヘビーデューティな走破性が与えられていたが、全体としてはカジュアルに通じるようなライトテイストが与えられ、そこにスキーを初めとしたアウトドアブームが重なって、大ヒットに至る。その後は、そこまでの走破性は不要とばかりにモノコックボディをベースとしたモデルへ、そして、かつてはSUVのラインナップがなかったブランドまで加わって、現在へと繋がっている。
昨今では、ピックアップトラックにもその流れが押し寄せている。ただし、大きく異なるのは、ヘビーデューティテイストをキープ、いや、それ以上にアップさせながら、一方で、日常における快適性や安心感を重視したモデルだ。そもそも、このピックアップトラックはキャビンはもちろんだが、ベッドに荷物をわんさかと積み込んで、いや、積み込むことを前提としたセッティングが施されており、日常性を語ることは不得手だったはず。ところが、昨今のモデルでは、普段でも不足のない乗り味を織り込みながら、道なき道を突き進める走破性を合わせ持つという、まさにハイバランスなモデルへとスイッチさせているのだ。もちろん、マーケットがそれを求めているという背景はあるものの、実際に使われるシーンとて、すべてが不整地というわけではなくオンロードのほうがむしろ多いことから、快適性が期待されるのは、当たり前のこと。言い換えると、まさに、それこそがピックアップトラックに求められているグローバルな性能、つまり、イマドキ、となる。
そんな期待に応えるべく登場したのが、三菱自動車工業のトライトンだ。カテゴリー、サイズとしてはいわゆる1トンピックアップトラックで、かつては国内で生産されていたが、現在ではその生産拠点をタイへと移し、豪州やアセアン地域で人気を集めているモデル。ただし、国内では大きすぎるというボディサイズもあって、先代は国内ラインナップは消えていたが、最新型は、ワールドプレミアこそタイで行われたものの、国内への再導入も発表。その特徴は、質実剛健をダイレクトに表現したデザインにあるが、同時に、さきほど述べたような、乗り心地からハンドリングにおけるまで日常における快適性、さらにはアッパークラスを語れるほどの質感を備えていることなど、国内マーケットにも十分に通用するところもトピックとしている。
いちばん衝撃を受けたのはステアリングフィール。これまでのピックアップトラックは、ホイールベースが長いこと、油圧式パワーステアリングを採用していたことなど、それなりにバランスが整えられていた。つまり、ピックアップトラックでは当たり前とされてきた緩さを感じさせるようなまったりとした動きに見合ったものとなっていた。ところが、新型トライトンでは、ベースとなっているラダーフレームから一新し、長きに渡って使われることを想定した設計もあって、相当にコストが掛けられた。そこに電動パワーステアリングを組み込んだことで、そのフィーリングは乗用車そのもの。走りにおける曖昧さは消え去っており、たとえば、リアタイヤがかなり後方にあるようなフィーリングはなくなり、その分、クイックなステアリングギア比を組み合わせることを可能とし、それこそ、結果としてといわんばかりに乗用車かのようなフィーリングを手に入れていた。
乗り心地も好印象。かなり大きな凹凸があるシーンへとハイスピードで突入すると、ゴツンといった衝撃を伝えてくるものの不快さには届いておらず、それ以外では、空荷状況であっても不足ないフィーリングがあり、それはまさ不満はなし、と評価したくなるほどのハイレベルぶり。ちなみに、サスペンションとしては、ストローク量を多く確保したレイアウトのほか、リアではリーフスプリングを3枚と減らしながら、ショックアブソーバーの容量(径)を増やすなど、そう、懐の深いシャシーを提供していることもプラスに働いているという。
エンジンは、新型トライトンとしてはフラッグシップとなる、2.4Lツインターボディーゼルエンジンを採用。パワースペックとしては150kW/470Nmとなり、その極太トルクに感激しつつも、その数値以上に好印象だったのは、なだらかに、そして、滑らかに加速していくフィーリングのほう。極低回転域から不足ないトルクを発生させつつ、どの回転域からもさっと加速し、特に高速道路では、そのままに高回転へと導いてくれる。イマドキのSUVのように8速あったほうがいいのにな、と思わせることもなく、気持ち良さを堪能できる。
悪路走破性は、パジェロに採用されていたスーパーセレクト4WD?により、FRモード、センターデフフリーとなるフルタイムモード、センターデフロックとなるパートタイムモード、さらにはその状態でローギアを組み合わせたローモードを提供。さらには、リアデフをロックする機構を組み合わせており、まさにハイレベルの操縦性と走破性を愉しめる。ちなみに、走行シーンに応じて適切な制御を行うドライブモードは7つ用意され、さきほどのトランスファー切り替えに組み合わされ、それぞれのシーンに期待されるハイレベルの走りを提供してくれる。ちなみにハードウェアとしてはクロカン的な走りを提供しながら、不足になる部分をソフトウェアで制御してくれている、そんなスタンスが心地よさを生んでくれている。
こういったフィーリングは、実用性や機能性だけを最優先させてきた、かつてのピックアップトラックには見られなかったところであり、まさに質感と表現できるものだ。もちろん、キャビンにもそれらは多く見られる。たとえば、ホリゾンタルアクシスコンセプトを採用したインパネは水平基調をダイレクトに表現したものであり、構成するパーツを少なくしたこともあって、まさに飽きが来ないテイストを実現。センターに備えられた標準装備となる9インチサイズモニタは、スマートフォン連携ナビ機能を与えられており、こちらもまさにイマドキであり、不満なし。シートは下半身をしっかりと支えるクッションパート、じんわりと肩を含めた背中をサポートしてくれるシートバックと、実に考えられた組み合わせとなっていて、操る愉しさと快適性をハイバランス。リアシートはひざ前のスペースを大きく確保したことにより、ゆったり感がすこぶる高くなっている……、など、まさに美点だらけだ。ベッドサイズは、サイズの追求はもちろんだが、2x4材をそのままに仕切りとして使えるギミック、リアバンパーコーナーに足を掛けられるようにしたこと、さらにはベッドフロアまでの高さを抑えたことなど、使う人のことを考えた内容となっていることも、うれしいポイントだ。
この走りから装備に至るまで、自分に馴染む感覚は一体どこから来るのだろうか。開発に深く携わった増岡 浩氏にうかがってみた。ちなみに、増岡氏は、パリダカールラリーで総合2連覇を果たし、最近では、新型車の開発、後輩テストドライバーの育成、さらには、アジアンクロスカントリーラリーにおいてチーム三菱ラリーアート総監督を勤めている。そして、さきほどの質問に対しては、ピックアップトラックでありながらも、扱いやすさをしっかりと作り込み、そして、誰でも安全に、そして安心して走ることができるモデルを目指して開発したことだと、氏は語る。なるほど、シートの作り込みひとつとっても、それはたんに速さを求めるのではなく、座り心地だけではなく操縦性まで求めたもの、か……、と、納得できるポイントは数多い。ちなみに、今年の8月に開催されたアジアンクロスカントリーラリー2024での優勝は叶わなかったものの、悪路走破性をはじめとした三菱が誇ることができる性能をあらためて確認でき、今後のモデルにフィードバックさせていきたいとのこと。三菱の新型車は、こういったSUVに限らず、ワクワクさせてくれそう、そんな期待を感じさせてくれる。
■ 三菱自動車工業 トライトン(GSR) 主要諸元
●全長×全幅×全高:5360×1930×1815mm
●ホイールベース:3130mm
●車両重量:2140kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:2439cc
●最高出力:150kW(204PS)/3500rpm
●最大トルク:470Nm(47.9kgm)/1500-2750rpm
●トランスミッション:6速スポーツモード A/T
●駆動方式:エンジン縦置き4WD
●燃料・タンク容量:軽油・75L
●WLTCモード燃費:11.3km/L
●タイヤサイズ:265/60R18
●車両価格(税込):540万1000円
(報告:吉田直志 写真:青山朋弘)











