
同、オーロラホワイトのRWDモデル。同じポイントを通過しているが、操舵量、ロール量ともに大きくなっているのがわかる。振り回している感じがあるので、運転して楽しいのはこちら。ただし、2台ともステアリングの正確性という点では今一歩、という感じ。
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「シール」のクロスオーバーSUV版
昨年のRJCにおけるBYDは、eスポーツセダンの「シール」がインポート・カーオブザイヤーの6BEST、搭載するLFPブレードバッテリーとCTBボディ構造がテクノロジー・オブザイヤーの最優秀賞を獲得した。Cd値0.219の滑らかなラインを持つミドルクラスの4ドアボディと強力なモーターを搭載した“速さ”、LFP(リン酸鉄リチウムイオン)を使用したブレードバッテリーをシャシーに直接搭載したCTB(cell to body)の“ボディ”、さらに500〜600万円という“コスパ”が評価された結果で、今回試乗した「シーライオン7」は、そのプラットフォームを共有してクロスオーバーSUVスタイルに仕上げた新型モデルだ。日本でのBYD車としては、コンパクトSUVの「ATTO3」、コンパクトハッチの「ドルフィン」、セダンの「シール」に続く第4弾で、モデル名のシーライオンは「アシカ」を意味し、数字の7は本国モデルにある5や6より大きなサイズであることを示している。
ボディサイズは全長4830mm、全幅1925mm、全高1620mm、ホイールベース2930mmというミドルクラスのSUVで、車重は2230kg〜2340kg。最高出力230kW(312PS)、最大トルク380Nmの改良型8-in-1永久磁石リアモーターを搭載したRWDと、それに160kW(217PS)/310Nmのフロントモーターを組み合わせたAWDの2モデルがあり、車重の増加分に合わせてシールよりもわずかにトルクアップがなされている。0-100km/h加速はRWDが6.7秒、AWDが4.5秒。件のブレードバッテリーの総電力量は82.56kWhと共通で、一充電走行距離(WLTCモード)はRWD が590km 、AWDが540kmと十分だ。
高級感や使い勝手はさらにアップ
現在主流のクーペSUVスタイルをとるシーライオン7をデザインしたのは、アウディやアルファロメオで腕を振るったヴォルフガング・エッガー。顔つきはオーシャン・エックスフェースと呼ばれるBYDの「海洋シリーズ」に共通のもの。ブーメランシェープのLEDライト、ウェーブチェイシング・ウエストラインと呼ぶダイナミックなショルダーライン、クーペテイストのリアハッチとダックテール形状のリアスポイラー、水平に配された雨滴形状のLEDリアコンビネーションライトなどを盛り込んだ。総じてスマートな仕上がりを見せるが、全体としては極めて常識的なスタイルともいえ、飛び抜けて個性的な部分はない。各パーツの“チリ”の部分などを見ると組み立て精度の良さを感じさせ、製造レベルの高さを感じさせる。
インテリアも同様で、ナッパレザーにキルティングを施した12way電動調節2メモリーポジションシート(運転席、助手席は6way)をはじめ、ダッシュボードやドアトリム、センターコンソールなど、目に入ったり触れたりする部分のほぼ全てにレザーを使用していて、ベースとなったシールより明らかに高級感が増している。スペースは前後席とも広々で、2.1平方メートルというルーフのほぼ全面を使った大型ガラスサンルーフのおかげで室内は明るい。前58L、後500L(最大で1769L)というラゲッジ容量も十分だ。
太い握りのステアリング右側にはウインカレバーを配置。小型のシフトセレクターやドライブモード、スタート/ストップボタンが並ぶセンターコンソールには、充電性能が50Wに上がったワイヤレスの冷却機能付きスマホ置き場があり、試乗時間中は重宝させてもらった(シールは2台が同時に充電出来たが、シーライオンは1台になった)。ATTO3にあったギターの弦のようなドアポケットは個性的で面白かったけれども、シーライオンは上級モデルだけあって、そうした突拍子もないところはお目にかかれないのだ。
さらに、BYDの“十八番”である各機能を集約した縦横回転式の15.6インチタッチスクリーンは、高性能化された8155チップを搭載したことで、タッチの反応や処理速度が向上して使い勝手が良くなった。カラオケ機能が装備されているのはBYDらしいところだ。
あえていうと、さまざまな機能をここで呼び出してそれらが広い画面に映し出されるのは老眼の進んだ筆者の目には優しいのだが、それぞれの文字サイズが意外と小さいので無駄な空間が多いのと、各パートが同じ色で並列的に表示されるので判別しにくい点が、少しだけ気になった。
走りは速くて静か、なのだけれど
試乗会は、大磯ロングビーチの広大な駐車場に設定されたスラロームを含む周回コースと、会場周辺の道路で行われた。まずは一般道を制限速度で走ってみると、3面防音・熱線吸収ガラスなどによるライブラリーレベル(BYDによる)の室内の静かさや、直進性の良さ、段差のいなしなど、快適さに関わる部分で気になるところは全くなし。強力なモーターのおかげで追い越しも一瞬で終わる。最近多くなったDMS(ドライバーモニタリングシステム)は、DAM(ドライバー注意力モニタリング)とDFM(ドライバー疲労監視)を兼ねたもので、あくびをすると「疲労が検出されました。休憩をとってください」、よそ見をすると「道路から目を離さないでください」と細かくチェックする親切ぶり。まあ、ちょっと煩わしいのも確かではある。
スラロームではAWDとRWDの両方を試した。駆動方式の違いは当然走りにも比例していて、AWDはボディの動きに安定感があり、RWDは逆に操舵量が大きくなる。背の高いSUVなのにこうした場面を豪快にクリアしていく点は感心するばかり。一方でステアリングから伝わってくる路面への接地感や、狙ったラインへの正確性など、ドライバーを喜ばせる情緒的なところではまだ突き詰めるところがある、という印象。パワートレーン、パワステ、足回りのミクスチャーが一つになっていない感じだ。こうしたポイントで感心させられることしきりだったBEVのアウディQ6などに比べると、さすがに差を感じてしまう。得意科目の“電気”の部分やボディ内外の作り、コストパフォーマンス(RWD495万円、AWD572万円)ではすでに高いレベルに到達したり、他を凌駕したりするところを感じるBYDだが、最後の走りの部分では今一歩。ハイパワーなBEVを調教できる、感性と技術的知識を備えた「匠」のような開発ドライバーを引っ張ってきさえすれば、一気に解決しそうなのも確かなのだけれど。(了)
報告、写真:石原彰










