※画像クリックで拡大表示します。
ステランティス グループがプロデュースする「フィアット」ブランドから、日本仕様としては初のハイブリッド車「600(セイチェント)ハイブリッド」が導入された。まずは、そのショートインプレッションをお届けしよう。
次々と日本市場にハイブリッド車を送り込むステランティス
EV化戦略を進めているステランティス グループだが、欧州市場でのEV需要の減少などを鑑み、「マルチエネルギー戦略」として新型車にはBEV(バッテリー電気自動車)だけでなくPHEV(プラグインハイブリッド車)やMHV(マイルドハイブリッド車)もラインナップしている。
また日本市場ではインフラなどの関係もあり、まだまだBEVの普及率は低く、ハイブリッド車が人気の中心となっている。そこでステランティス グループは、日本市場での拡販のためにはハイブリッド車を多くラインナップするのが賢明と考えたのか、ここ最近48Vハイブリッド車を立て続けに日本に導入している。
2023年に導入されたアルファロメオ トナーレを皮切りに、シトロエン C4、プジョー 308、ジープ レネゲード、そして今回紹介するフィアット 600と、ガソリンターボエンジン(気筒数や排気量は微妙に異なる)に電動モーターを内蔵したDCTを組み合わせた48Vハイブリッドシステムだ。つい最近、日本に導入されたアルファロメオ ジュニアにも同様のシステム搭載車がラインナップされている。
なお、このシステムをステランティス ジャパンでは「マイルドハイブリッド」と称している。とはいえモーター機能付き発電機によりエンジンをアシストするが、モーターのみでの駆動はできないといったものではなく、このフィアット 600でも最大約30km/hまでモーターでの走行は可能だ。それなら単に「ハイブリッド」と謳ってもよさそうだが、日本市場では「ハイブリッド=かなりのモーター走行が可能」というイメージが強いため、あえてマイルドハイブリッドとしているのだという。
見た目は電気自動車の600eとほとんど変わらない
さて、フィアット 600 ハイブリッドだ。1955年に発売された初代「600」や、2020年に発表(日本仕様は2022年に発売)された「500e」からインスパイアされたデザインのコンパクトSUV電気自動車「600e」が2023年に登場(日本仕様は2024年に発売)。その600eが日本で発表されたときに近い将来にはハイブリッド車も導入すると予告されていたように、約9カ月遅れで日本にやって来た。
外観は、独特の目つきをはじめ電気自動車の600eとほとんど変わらない、可愛らしいスタイルは健在だ。違いはテールゲート左下に「HYBRID」のエンブレムが付くのと、その下にデュアルエキゾーストエンドが見えるくらいだ。2スポークのステアリングホイール、丸型のメータークラスター、楕円形のダッシュボードパネルなど、初代600のデザイン要素を受け継いだインテリアも基本的に共通だ。
今回の試乗車は上級グレードのラ・プリマだったので、FIATロゴ入りのエコレザーシートやダッシュボードはアイボリーで明るい雰囲気。室内の広さも600eと変わらないが、ラゲッジフロアが2段式となり容量は385Lと600eの360Lより少し広げられ、リアシートバックを全倒すれば最大1256Lまで拡大する。
パワートレーンは、新開発の1.2L 3気筒ガソリンターボエンジンに電動モーターを内蔵した6速DCTを組み合わせた48Vマイルドハイブリッドシステムで、フィアットでは初めてこのシステムを搭載した。なお、前述のようにシトロエン C4やプジョー 308、そしてアルファロメオ ジュニアのマイルドハイブリッドも、基本的に同じパワートレーンとなる。
走行状況によるが、最大約30km/hまでモーターによる走行が可能。信号待ちの多い市街地走行では、1時間あたり約50%はエンジンを使用しない状態となり、市街地での実用燃費を飛躍的に向上させる。WLTCモード燃費は23.2km/Lで、BセグメントのSUVとしてはトップクラスの数値を達成している。
きわめてスムーズなエネルギーフロー
今回の試乗地は、御殿場市街を起点に箱根のワインディングロードが中心。したがってアップダウンも多いシチュエーションだったので、上りでは発進してすぐにエンジンがかかり、また下りではアクセルペダルを踏まない限りかなりの速度までエンジンは始動せず回生で充電しながら走る。加速時にはターボが効く前の領域でモーターがアシストしてくれ、思ったより速い。
アクセルペダルの踏み加減に応じてエンジンは頻繁にON/OFFし、またモーターのアシストや減速時の回生による充電も短時間でも効果的に行われている…といったエネルギーフローはメーターパネルに表示されるイラストのアニメーションを見ているから分かるのだが、体感的にはほとんど分からない。また、6速DCTのセッティングもうまく、変速もスムーズで、乗り味はかなり洗練されている。
システムでのパワースペックは600eと同等レベルと思われるが、車両重量は250kgも軽いので、走りはかなり軽快。全幅こそ1.8m近いが全長は4.2mとコンパクトで、全高は1.6m以下だが視界も良く、SUVとはいえワインディングロードをそこそこのペースで走るとけっこう楽しめる。ただし、アクセルペダルを戻したときの回生ブレーキの効きはけっこう強く、市街地ならワンペダル走行も可能なくらい。
BEVやハイブリッド車では、この回生ブレーキの効きを加減できるモデルが多いが、この600ハイブリッドにはない。この効き具合は好き嫌いが分かれるところだが、これしか乗っていなければ慣れてしまうだろう。個人的には、効きを加減できるパドルシフトが欲しいところだが、この600eにはDCT用のパドルシフトが備わっているので難しいのかもしれない。
ストップ&ゴー機能付きのアダプティブ クルーズコントロールやレーンポジションアシストといった安全装備や、カーナビ内蔵のスマホ対応タッチスクリーン/ハンズフリーパワーゲートといった快適装備は充実しており、装備的には十分なレベル。
フィアット600eのスタイルは気に入っていたけれど、充電環境などを考えるとBEVでは…と諦めていた人には、この600ハイブリッドは格好のモデルだろう。今回試乗した充実装備のラ・プリマの車両価格(税込)は419万円だが、600台限定でローンチプライスの399万円となる。購入を検討しているなら、早めにディーラーに相談したほうが良さそうだ。
(報告/写真:篠原 政明)
■ フィアット 600ハイブリッド ラ・プリマ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4200×1780×1595mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1330kg
●エンジン:直3 DOHCターボ+モーター
●総排気量:1199cc
●最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
●最大トルク:230Nm(23.5kgm)/1750rpm
●モーター最高出力:16kW/4264rpm
●モーター最大トルク:51Nm/750−2499rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:FWD
●燃料・タンク容量:プレミアム・44L
●WLTCモード燃費:23.0km/L
●タイヤサイズ:215/55R18
●車両価格(税込):419万円











