売れ行き絶好調 スバル新型フォレスターに試乗

ワインディングを走る、オータムグリーン・メタリックのボディにクリスタルブラック・シリカのルーフを組み合わせた2トーンカラーの新型フォレスター「X-BREAK S:HEV EX」グレード。

最高出力118kW(160PS)/5600rpm、最大トルク209Nm/4000〜4400rpmを発生する2.5Lの水平対向16バルブ「FB25」型エンジンと、2モーター(駆動用モーターは88kW・119PS/270Nmを発生)を組み合わせた、トヨタTHSシステム由来となるシリーズ・パラレル式を採用したストロングハイブリッドを搭載する。

クリスタルホワイト・パールカラーに、バンパーやサイドプロテクター、ホイール、リアマフラーが専用のブロンズカラーに塗られた1.8Lターボの「スポーツEX」グレード。左右2本出しマフラーが特徴だ。


パワートレーンは、最高出力130kW(177PS)/5200〜5600rpm、最大トルク300Nm/1600〜3600rpmを発生する水平対向1.8L直噴ターボエンジン(DIT)を搭載する。

「X-BREAK S:HEV EX」グレードのインテリア。凹凸のないフロンガラス下部の水平線や、一段下げられた左右のウエストラインによる見切りの良さなど、視界の良さが売り。撥水ポリウレタン/合成皮革のX-BREAK専用シートやダッシュボード、ドア内側トリムなど、仕上がりのレベルも高い。

鋸南町の内陸部にある採石場跡地に設定された、アップダウンのあるオフロードを走る新型フォレスターのストロングハイブリッドモデル。オプション品を装着しているので、顔つきがよりワイルドになっている。


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 スバルの屋台骨を支えるミドルサイズSUVのフォレスター。フルモデルチェンジを果たした新型のS:HEV(ストロングハイブリッド)と1.8Lターボの両モデルに、千葉県館山周辺の一般道、高速、オフロードで試乗し、その出来栄えを確かめてみた。

スタートダッシュは決まった

 新型フォレスターの先行予約は今年の4月3日から始まり、たった1ヶ月で受注台数が1万1466台に達したそうだ。その数字は歴代フォレスターでは過去最多。他モデルと比べても、2〜3代目レガシィに次ぐ実績(1997年3月の2代目レガシィが単月最多となる1万4509台を記録)になっているという。さらに5月31日までを累計すると、受注台数はすでに1万5000台となっていて、当初の販売計画(2400台/月)の3倍以上という好調なスタートダッシュを決めている。

 S:HEVと1.8Lターボのパワーユニット構成比を見ると、4月は8.5割:1.5割、5月は6割:4割で、累計では8割:2割。先行予約を開始した4月はS:HEVに受注が偏ったせいで納期が1年以上となってしまったため、5月になると約3ヶ月で手に入る1.8Lターボが4割へと増加。スバルではS:HEVの納期を短縮するため、増産に向けて調整中とのことだ。
 またボディカラー別では、クリスタルホワイト・パール(有償色)が3割を占めて予想通りトップ。ついで、リバーロック・パール(有償、2トーン含む)2.3割、マグネタイトグレー・メタリック(2トーン含む)1.4割、クリスタルブラック・シリカ1割、オータムグリーン・メタリック0.9割と続いている。

 新型フォレスターのボディーサイズは、全長4655mm、全幅1830mm、全高1730mm。先代から15mmほど幅が広くなったぐらいで、ホイールベースの2670mmは変更していない。新型になるたびに肥大化する最近のクルマの傾向の中で、この大きさがフォレスターのキャラクターとしてベストだと判断したスバル。まことに好ましいではないか。

質感も燃費もアップしたストロングハイブリッドモデル

 最初に乗ったのは、注目のストロングハイブリッドモデル。その証である「e-BOXER」バッジがフロントドアとリアゲートにあしらわれ、試乗した「X-BREAK S:HEV EX」グレードにはエナジーグリーンカラーが、フロントグリルの横バーと、リアピラーの「シンメトリカル4WD」バッジに使われて差別化されている。
 インテリアは、8角形のセンターコンソールを中心としたスバルらしいデザインを踏襲していて、着座すると何よりも四方の見切りの良さに感心する。そして、撥水ポリウレタン/合成皮革のX-BREAK専用シートやダッシュボード、ドアトリムなど、各パーツの仕上がり具合のレベルが一段上がったのに気がつく。

 ストロングハイブリッドシステムは、最高出力118kW(160PS)/5600rpm、最大トルク209Nm/4000〜4400rpmを発生する2.5Lの水平対向16バルブ「FB25」型エンジンと、2モーター(駆動用モーターは88kW・119PS/270Nmを発生)を組み合わせたもので、トヨタTHSシステム由来となるシリーズ・パラレル式を採用している。
 走り出せば、30km/hあたりまではモーターだけでの走行が続き、アクセルを踏み込んで加速しても水平対向エンジンは遠くで囁くだけ。車内は圧倒的に静かなままだ。とはいえ、0-100km/h加速は先代より2.8秒速い9.6秒。ワインディングに乗り入れると、「フルインナーフレーム構造」を採用したスバルグローバルプラットフォームや、ルーフ部分に振動を吸収して抑える接着剤の採用、“仙骨”を支えて頭の揺れを低減するフロントシートなどと共に、コーナーでは内側ブレーキを軽くつまむアクティ・トルク・ベクタリングと適切なアシスト量を供給する2ピニオン電動パワステのおかげで、結構なスポーツドライビングが楽しめた。そんな走りを確かめつつ、テストドライブ終了時のメーター燃費は15.7km/Lを表示していたので、これまでスバル車の唯一とも言える弱点だった燃費性能がしっかりと改善されているのが証明できた。

さらに速い1.8Lターボモデル

 左右2本出しマフラーが目印となるターボモデル「スポーツEX」グレードにも乗った。搭載する水平対向1.8L直噴ターボエンジン(DIT)は、最高出力130kW(177PS)/5200〜5600rpm、最大トルク300Nm/1600〜3600rpmを発揮。新排ガス規制や70kgの重量増を補う燃費改善のため、リーン燃焼(理論空燃比より空気が多い燃焼)や低燃費エンジンオイル、高効率オルタネーターを採用しており、加速はS:HEVより速い0-100km/h加速8.6秒というパフォーマンスを見せる。
 走り出すと、トランスミッションケースカバーの面積を広げたことや、ケースの剛性強化が功を奏して、ゆったり走る時の車内の静粛さとと、加速時に聞こえる「トロロローン」という水平対抗4気筒の耳をくすぐるビート音が心地よい。シンプルなパワートレーンは加減速のレスポンスが優れていて、S:HEVと同じワインディングを走ってみると、路面の入力に対してスムーズな動きをみせる「超飽和バルブ付きダンパー」が効果的に足回りを支えているのがわかる。ちなみに帰着時の燃費は10.3km/Lと表示されていた。

新旧フォレスターでオフロードを走る

 今回は、鋸南町の内陸部にある採石場跡地の特設オフロードコースで新(2.5Lストロングハイブリッド)・旧(2.0Lマイルドハイブリッド)のフォレスターに乗り、その違いを確かめるプログラムも用意されていた。結論から言うと、どちらも走破性が優れていてよかったのだが、あえていえば新型の方がトルクフルな印象で、凹凸の大きなところや急坂の場面でも、アクセルの付きがよくてボディがススッと前に出るような動きを見せてくれた。また、プロペラシャフトに電磁クラッチ付きのカップリングを持つ新型の4WD機構には、ネガなところが全く見つからなかった。

 総じて素晴らしい出来栄えを見せてくれた新型フォレスター。最大のライバルとなるのは、先ごろワールドプレミアされたばかりの新型トヨタ「RAV4」になるのは間違いない。3種類のボディとSDVの「Arene(アリーン)」という“飛び道具”を引っ提げて登場したRAV4はどんな値付けになるのか。そのあたりに勝負の分かれ目があるのかもしれない。(了)
報告:石原 彰

最終更新:2025/07/08