フォード・フィエスタ

静かで軽快。BEST OF FORD!



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●1リッター3気筒、そのデキはすばらしい

もしかしたらビッグスリー(この呼称も今や懐かしい)は、日本の小型車をナメていたのかもしれない。たぶんそうだ。大きいクルマを作れるのだからコンパクトカーなんて簡単さ──と。もっとも、それも故なきことではない。かなり古い話だが、日本車はなかなかアメリカ市場で認められなかった。格好がどうこうという前に性能的にだ。ところが、ある日ふと気がつくと周りの小型車は日本車ばかり(現在はコンパクトな韓国車も)。
じゃあ、小さいクルマでも作って日本に売ってやろうと思った。が、時すでに遅し。小型車における日本車の優位は、日本でもアメリカでも揺るがない。もっとも、アメリカ車の名誉のために言っておけば、道が広くてコーナーが少なく、制限速度もさほど高くない彼の国で乗る限り、アメリカ車はヒジョーに快適である。それに、たとえばフォードは一時マツダのオーナーだったから、そこで得たノウハウも大きい。で、このフィエスタは世界企業のフォードらしくヨーロッパ製である。
先に発売されたフォーカスに続く日本デビューだが、世界的にみればフィエスタの方がワールドデビューは早く(2008年)、12年にはマイナーチェンジも受けている。日本では馴染みの薄かった4代目フィエスタだが、12年には世界では72万台以上も売れている。エンジンは12年と13年連続してインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞。勲章がすべてだとは思わないが、なるほどこのエンジンは想像した以上にデキがいい。
排気量1リッター3気筒・ターボ。最高出力は74kW(100PS)。しかも最大トルク17Nm(17.3kgm)を1400から4000rpmと低回転域から広範囲で発生する。当然ながら一般走行で走りに不満を感じることはない。JC08モード燃費は17.7km/L。最近では驚くほどの低燃費ではないが、決して悪い数字ではない。さらに感心したのは、エンジン音と振動の低さ。エンジン音は4500回転付近から多少は耳についてくるが、振動はアイドリングから高回転までほとんど出ない。回転の上昇もいたってスムーズだ。
トランスミッションはMT運転も楽しめる6速AT。繋がりも滑らかでとくに文句はないけど、マニュアル運転をするためにはシフトレバー右上のスイッチをおさなければならない。慣れればいいのかもしれないが、最初はちょっと戸惑う。

●このクラスとしては装備充実。ただ値段は……

ハンドリングはドイツ車から乗り換えた直後だと軽めに感じるが、それは最初だけ。速度が上がればじっとり重くなるし、2、3分もすれば低速での軽さにも慣れる。というか、意識しなくなる。やや軽めだけど正確だ。人間の感覚というのはけっこういい加減のもので、このキャラクターは扱いやすくスポーティという印象さえ受けるようになる。
乗り心地も悪くない。ただ、時にやや硬めに感じられる。路面によってはロードノイズがやや耳につく。これには韓国のハンコック製タイヤの影響もあるかもしれない。なぜかと言うと、フィエスタに採用されているタイヤは、ハンコックの中でももっともスポーティなモデル(ヴェンタスS1エヴォ2)だからだ。サイズは195/45R16と少し珍しい。下に緊急用タイヤを備えたトランクの広さも、ポロ並みで合格だ。
見方によってはアストンマーティンを連想させるフロントグリルをはじめ、キネティック(躍動的)なエクステリアは派手だが好感がもてる。1720mmの全幅も最近では抑えた方だろう。インテリアデザインは逆に少々遊びすぎのような気がする。特にSONY製のオーディオスイッチなどはもう少しシンプルにまとめられるのではないだろうか。まあ、個人の好みの範囲ですけどね。
装備はとても充実している。30km/h以下での衝突回避機能をもつアクティブ・シティ・ストップ、インパネセンターのディスプレイで後ろが確認できるリアビューカメラ、オートエアコン、ヒルスタート、スマートキーレスエントリーなどほぼフルラインアップだ。ただし、アイドリングストップが付いていないのはいいとしても、ナビがオプションにも設定されていないのは残念だ。ついでに言えば「装備を充実させたから」という理由はあるにしても、229万円という価格設定は日本ではやや高い。多少の出血覚悟で、もう一声下げてもらいたい。それだけの価値がある、世界的Bセグメントカーだ。   
(2014JAIA試乗会より 撮影:佐久間 健)

<神谷 龍彦> 最終更新:2014/03/10