マツダ・ロードスター

マイルドな人馬一体、新感覚スポーツ車

飯塚 昭三

走りに不満はない。都内の限られた試乗コースでは、ね。やはりワインディングで試したい。

フロントはちょっと怒った顔に見えなくもない。目線を下げると“ニタリ”とするとか。

デザインにも重きを置いた。サイド上部は、前から後ろに向けてユニークなラインが流れる。


インテリアのまとまりはいい。手動式ソフトトップの開閉も簡単。ナビやBoseも選べる。

ミッションは6速のMTとAT。 CX-3ではイマイチだったMTは、はるかによくなっていた。

アクセラと同じ1.5リッターだが、ほとんど専用設計。パワーもトルクもアップ。音もいい。


※画像クリックで拡大表示します。

 4代目となる新型ロードスターは、新しい技術を投入しながらも原点回帰の志をもって開発したという。マツダとして主張したいところはデザイン面やオープンカーとして開放感などもあると言うが、ここでは主にドライビングに関してのインプレッションを簡単ながら報告したい。
 今回の試乗は江東区お台場周辺、しかも降ったり止んだりの雨模様であったので限界領域での操縦性云々などはもちろん評価できないが、実際に運転してみて感じたことはいろいろあった。なお、私は初代のロードスターは発売直後の数ヵ月間足として使っていたこともあるし、メディア対抗レースに何度も出場しているので、筑波サーキットの走行もずいぶん経験させていただいた思い出がある。
 車両はMT車とAT車があるが、最初にMT車から乗る。車両に乗り込んだとき、薄暗い駐車場ということもあって足元が全く見えない。右足でペダルを探ってみるとそれはクラッチであった。FF車ではタイヤハウスの出っ張りがあるためペダルは全体に左に寄りがちであるが、FRのこれは正面を向くようにされているというが、感覚としてはむしろやや外側を向いているくらいに感じる。もちろん一旦着座してしまえば違和感は全くない。外に目をやるとボンネットより高い左右フェンダーが山脈のようにあるのが印象的。これは狭い道での見切りにはいい。
 最初のクラッチミートも全く違和感なく、そろそろと発進して駐車場を出る。マニュアルトランスミッションは新開発の「SKYACTIV-MT」で、6速がオーバードライブでなく、ギヤ比1.000の直結である。これはデフの小型化をも可能にしている。シンクロ機構をすべてメインシャフト上に設け、リンケージの動きに対する摺動抵抗も減らしている。このほかシフトフィーリングにはかなり気を使ったとのことで、確かに短いストロークで「スポッ、スポッ」と吸い込まれるようにギヤが入る。スポーツ車のシフトノブは丸型が最適という私の思想どおりに、やや大きめのまん丸いシフトノブは扱いやすい。その右にサイドブレーキのレバーがあるが、普通の感覚では結構前方に位置している。ステアリングの直ぐ脇で、ジムカーナでサイドブレーキターンするのにはやりやすい位置だ。ただ走りながら引いてみたが、リヤも当然ディスクブレーキであり(低速ではドラムのほうが効きはよい)、カツンとした効きはないので、ジムカーナ走行をするならパッドは交換した方がよいだろう。もちろん通常の駐車用としては充分。

スムーズなデュアルピニオン電動パワステ

 ステアリングは実にスムーズなのが印象的であった。これはパワーステアリングが電動化されたこととともに、デュアルピニオン式としたことが大きいと思う。これはパワーアシストをステアリングシャフトに対してするのではなく、ステアリングラックに直接別のピニオンでするものだ。ステアリングシャフトのねじれを減らせるため剛性感が高まるのでスポーツドライビングには最適な機構。ただ、この日はサーキットやワインディング路を走ったわけでなく、しかもウェット路面であったので限界での剛性感は確かめられなかったが、フィーリングは滑らかで舵角に忠実に転舵してくれる感じは伝わってきた。
 最近は女性ユーザーを意識してか軟らかすぎるブレーキフィールのクルマもあるが、ロードスターはやはりスポーツ車ということでしっかりした踏み応えがあってよかった。ブレーキが軟らかいと、トーアンドヒールがやりにくくなる。つまり、かかとでアクセルをあおったときにつま先のブレーキ踏力が変化しやすいのだ。
 新型ロードスターは軽量化を図ったとはいえ、燃費の良い自然吸気の1.5Lエンジンで、果たしてよい走りが出来るのだろうかとの思いを抱いていたが、それは杞憂であった。エンジンはアクセラと同じ「SKYACTIV-G 1.5」だが、ロードスター用にほとんどの部品を専用設計しており、トルクのアップやレスポンスの向上が図られていたからだ。フライホイールの軽量化もそのひとつ。エンジン許容回転数は7500rpmまで高められて高回転型にされている。ただし低速トルクも上がっており、いわゆる高回転型の特性ではない。むしろ感じるのはトルクのフラット感で、低い回転から高回転までリニアな感じで回転が上がっていく感じだ。
 それもそのはず。フルアクセル時は別として加速度の変化を計算しながらスロットルコントロールしているのだ。かつてはアクセルでじかにスロットルをコントロールしてたわけだが、今はアクセルの踏み具合は信号化され要求加速を計算しながらエンジンコントロール、それもロードスターでは加速度の変化まで計算している。つまり、速度の微分が加速度だが、その加速度をさらに微分しているわけだ。
 ただ、逆にいうとこれらの制御やフラットトルクは、トルクの山を感じながらシフトするという旧来の感覚ではないので、人によっては物足りなさを感じるかもしれない。しかし、加速感、ステア感、ブレーキ感の3要素ともよくまとまっており、乗って楽しいスポーツ車に仕上がっていると思う。
 なお、AT車のトランスミッションは縦置きであり、いわゆる「SKYACTIV-Drive」ではない。ただ、トルコンの改良やロックアップ領域の拡大を図ってダイレクト感を高めている。「SPORT」モードのスイッチを入れると、より低いギヤ領域を使うことで、エンジン性能をさらに引き出しやすくなる。とはいえ、ロードスターを楽しむならやはりMTがお薦めだ。

PHOTO:佐久間 健

<飯塚 昭三> 最終更新:2015/06/29