メルセデス・ベンツCLAシューティングブレーク

ワゴンをクーペに見せる。デザインマジック。

一般走行なら180で充分すぎるほど。250なら大満足。デザインだけでなく走りも素晴らしい。

4ドアクーペボディ+ラゲッジルームというシューティングブレークの御約束事に忠実に。

真横から見るとルーフラインとガラスの上端ラインの違いが分かりやすい。大胆ステキ!


インパネはすっきりまとまっている。トランスミッションは7速のダブルクラッチ(7GーDCT)。

リアシートのヘッドクリアランスは、外から見るよりもたっぷりある。このモデルの美点だ。

ラゲッジスペースは495ℓから1354ℓ。後席は分割可倒式。リアゲートは開閉ともにオート。


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 「行くときゃあBMWがいい。でも、帰ってくるときはベンツだな」
ゴルフ好きの有名レーサーが言った。十年ほど前だったか。つまりこういうことだ。期待にワクワクしてる時はBMWのアクティブさがピッタリくる。少々疲れている際はクルマ任せにできるベンツがいい、と。
 ベンツというと当然のように出てくるのが「最善か、無か」。このフレーズ自体はカッコいいが、世の中、そう甘くはない。ベンツだって失敗はある。初代のSLに、日本車を意識してドアミラーを採用した。が、当初はこれがよく壊れた。当然だ。ドアミラー裏の配線がむき出しだったのだから。色々な社会事情の影響で、全体のクオリティが明らかに落ちたこともある。
 それでもプレミアムクラスでは相変わらず強い。イメージと実力との乖離がほとんどなくなったからかもしれない。昨年の世界での販売台数は165万台。プレミアムカー・メーカーとしては、BMW(181万台)、アウディ(174万台)に続く。日本でも昨年は6万台以上売れた。ただし、当初4種類だった車種はいまや26にも増えている。もっとも、これはひとりメルセデス・ベンツに限ったことではない。BMWもアウディも似たようなものだ。
 で、ここに登場したのがCLAシューティングブレークである。CLAという4ドアクーペが先に出ているが、これのステーションワゴン版だ。4ドアクーペのCd値は凄い。なんと0.23。シューティングブレークは0.26。これも立派だ。ちなみにシューティングブレークというのはスタイリッシュなワゴンのこと。イギリスの貴族御用達の呼称である。
 ベンツにはCLS(後輪駆動)というモデルがあるが、これはCLAとは別の系統。CLAはAクラスやBクラスの延長線上で生まれた前輪駆動車だ。余談だが、モデルの呼び方がちょっと変わる。AとかBとかいうアルファベット1文字のモデルには従来のように“クラス”を付けるが、複数のアルファベットのモデルにはクラスを付けないことにしたという。だから、CLAは“CLAクラス”とはならない。
 CLAシューティングブレーク最大の特徴はスタイルにある。スタイリッシュなだけならとくに驚きはしない。けれど、ここまでクーペっぽく(猫背っぽくさえ)見えるワゴンはあまり例がない。なのに後席のヘッドクリアランスは42mmも増えている。分割可倒式シートを倒して得られるラゲッジスペースも広い。人も荷物もしっかり積み込もうという欲張りステーションワゴンだ。うまい! これを可能にしたのはベースのCLAクーペのデザインが優れていることと、経営陣の大胆な決断だろう。
 CLAシューティングブレークは、最近TV・CMでのやたら目につくが、それも故なきことではない。ドイツ、イタリアに次いで、日本は3番目のマーケットとして期待されているのだ。1780mmという狭めの全幅も、理由はそんなところにあるのかもしれない。

180で100%、250なら120%。高い走りの満足度

 エンジンは1.6リッター(122PS)、2リッター(211PS)、それに2リッターAMG(360PS)。すべて4気筒ターボである。
 まずベースグレードの180に乗る。さすがに室内の質感は高い。最近の輸入車に多い、ダッシュボードの上に少し突き出た大型のディスプレイも見やすい。慣れればこの方がいいかもしれない。ステアリングホイールは太めですわりがいい。
 というような印象は大して重要ではない。予想外だったのは、いや感動的だったのは走りの逞しさだ。たった122PSしかないのに何という走りをするのだろう。「え! これで本当に122PS?」。助手席の仲間が聞いた。同感。もしかしたら、スペックを見間違えたのかもしれない、と心密かに思ったくらいだ。このあたりはパワーよりもターボの大トルクのおかげだろう。180で200Nm、250で350Nm、AMGに至っては450Nmもある。 
 当然ながら211PSの250だとその走りはもう2段くらい迫力を増す。当日は運悪く激しい雨で、高速道路もあまり走れなかったが、このクルマでゴールド免許を維持するのは難しいかもしれない。どこまで自制心が働くか自信はない。「少なくとも日本ではこれ以上の性能は必要ない」と言いつつ、そのあとに試乗した、510PSのAMG・GTの腰ごとシートに押しつけられるような加速感にシビレル自分がいることを否定はできない。
 乗り心地はクーペよりも少しだけソフトだ。が、軽薄さはまったくない。エンジニアは「積載時を意識してサスペンションをセッティングしましたからね」とシタリ顔で言う。確かに。重めで自然な操舵感もあくまでも重厚さを失ってはいない。前輪駆動でこの安心感。いかにもベンツらしい。
 しかし、安定・安全第一だった一昔前の同社のクルマ作りとははっきり異なる。最近の同社のテレビコマーシャルでも分かるように、ベンツはFUN、つまり操る楽しさを前面に押し出している。この点ではBMWと似てきたとも言える。半面、BMWもある種の重厚感を備えて来た。10年連続で世界のプレミアム市場での首位を守っているとは言え、ベンツやアウディの追い上げも厳しい。それでもなおかつ、シートに座った瞬間に、走りだした瞬間に違いを感じさせる。スポーティになったベンツ、ゴルフに行く時の足としても悪くない。単に利便性が高いだけではなく、それだけ高揚させるものがCLAシューティングブレークの走りにはあった。
 車両本体価格は、180=360万円、180スポーツ=428万円、250(受注生産)=492万円、250シュポルト4MATIC=545万円、250オレンジアートエディション=567万円、AMG45・4MATICオレンジアートエディション=862万円。

PHOTO:飯塚昭三

<神谷 龍彦> 最終更新:2015/07/11