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ソリオはスズキの中では少し地味な存在だ。その理由のひとつは、どことなく軽自動車の香りが漂っていたこと。もともとワゴンRとパーツを共用した小型車「ワゴンRワイド」としてデビューした(1997年)。その後、「ワゴンR+」、「ワゴンRソリオ」とネーミング遍歴を続けた。車名からワゴンRが消えて「ソリオ」として完全独立したのは2005年だ。2012年にはスポーティイメージをアピールする「バンディット」が加わる。エンジン排気量は1ℓ、1.3ℓ、そしてシリーズ3代目からはスイフトと同じ1.2ℓになった。
地味と言ったが、その実、販売台数は年間3万台を軽く超えて右肩上がりである。スイフトとあわせて小型車年間販売10万台をもくろむスズキにとってはとっても重要なモデルなのだ。現在の両車の合計年販台数は8万台程度だから、今回のフルモデルチェンジにはとくに力が入る。それは、新しいプラットフォームの採用、エンジンの大幅改良(詳しくは新型車解説コーナーをご参考に)、実用性の飛躍的向上などからもうかがい知れる。
ファミリーカー用としては上出来、新プラットフォーム
このプラットフォームは凄い。何が凄いかというと、その軽量化ぶりだ。Aセグメント用に新開発されたもので(スイフトはBセグメントになる)、先代モデルに比べて、何と100kg!も軽い。アルトのプラットフォームも約60kg軽量化されていたが、その良さを実感したのは都内での試乗会ではなくて、その後に箱根で行われたアルトRSの試乗会だった。「ノーマルにも乗って下さいよ」という広報の方の声に従ってドライブした。が、これが思わぬ拾いものだった。コーナーでの粘りが自然で運転しやすい。むしろRSより好印象をいだいたくらいだ。都内の試乗会では感じなかった良さである。
アルトに比べると、ソリオの新プラットフォームは感動が少なかった。その理由。一つは高速道路を主体に走ったこと、言葉を換えればワインディングがほとんどなかった。二つ目、クルマの目指すところが大雑把に言えばファミリーカーであること。だから、感動は少ないが、ファミリーカーとしては納得のパフォーマンスだ。ボディ剛性もあげたと言うが、これはあまり感じられなかった。それよりも乗り心地がいい。小型車らしい落ち着きが増した。
エンジン音も先代よりも静かだ。防音材も改良したとのことだ。ただ、ステアリングのフィーリングは必ずしもスムーズではなかった。クイックとかダルとか言うのではなくて、ゴロゴロ感が消し切れていない。RJCの道田理事によると、先代よりも良くないらしい。ぼくは、先代の操舵感、残念だが覚えていない。
飛躍的に向上したユーティリティ、職人的仕事
エンジンのマイルドハイブリッド(Gグレード除く)は、基本的にワゴンのS-エネチャージと変わらない。まあ、今日風にハイブリッドと呼ぶことにしたというところか。ただ、世間のいわゆるハイブリッドと異なり、モーターはあくまでもエンジンのサポート。つまりEV走行はできない。その代わりと言っては何だが、発進から約100km/hまで最大30秒間、加速をアシストする。ワゴンRのS-エネチャージのサポートは6秒でスピードも15〜85km/hだった。大きな進化である。
低速トルクも増えてはいるが中間加速が大きく向上したという印象はない。データ上の0─400m加速時間は0.5秒速くなっているんだけどね。トランスミッションは全車CVT。あえて80km/h巡航時のエンジン回転数を見たら、Dレンジは約1200回転、Lレンジだとグッと上がって4200回転になった。余談だが、本格的なハイブリッドもすでに用意されている。
軽からのステップアップ、もしくはダウンサイジングのためにソリオを選ぶ人にとって重要なのはユーティリティだろう。この面でもニュー・ソリオは見るべき点が多い。全長、全幅はほぼ先代と同じだが、全高は少し下げた。これはスタイリングや空力を考慮してのことだと言う。
ホイールベースも伸びている。が、それよりも驚くのは室内長が40cmも長くなったことだ。このためにはエンジンルームの縮小、タイヤを四隅に移動など、あらゆる努力をした。そして最小回転半径は先代よりも0.2m短くなって4.8mに抑えた。このあたりは職人的ですらある。
リアのスライドドアの開口部が60mm伸びた。外からも自動開閉できる(一部オプション)。センターウオークスルー機能も継承されている。また、インパネ上部を35mm、同上部前後長を115mmも下げた。確かに視界はよくなった。開放感がある。ただ、ボディ前部のラインが丸っぽいため、見切りが改善されていないのが少し残念だ。月販台数は3500台の予定。
最も安いのはソリオ・Gの2WD(145万4760円)、最も高いのはソリオ・ハイブリッドMZの4WD(196万7760円)。
撮影者:佐久間 健