ジャガーXE

クルマとしては文句なし。でもジャガーらしさは……

一般道での乗り心地はいいが、時にしっとり感にやや欠ける場面があった。ハンドリングも自然だ。

アルミを多用しているがクラス最軽量ではない。高級車にはある程度の重さも必要だから。

改めて写真を見ると確かにエクステリアの高級感は高い。ただ、後席の頭上はややキツイ。


ポートフォリオ(写真)のダッシュボードは問題ないけど、プレステージは質感が少し劣る。

メーターはオーソドックスで見やすい。メーター間の表示も数が多い割には分かりやすい。

2リッターは200馬力と240馬力。340馬力の3リッターV6搭載車に乗れなかったのは残念。


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 ジャガーXE。ヨーロッパのセグメントで言うと「Dクラス」になる。ライバルはBMWの3シリーズ、メルセデスのCクラスなど。最も競争の激しいジャンルでもある。だからこそ、何をアピールできるかが最重要になる。それが成功不成功のカギを握る。
 ジャガーにとってはこのセグメント、初めてではない。少し古い話になるが、Xタイプ(2001年のジュネーブショーでデビュー、2008年生産終了)というモデルがあった。フォード傘下に入った時に(今はインドのタタ傘下)、ヨーロッパ仕様のモンデオと部品を共有しながら造られたモデルだ。ただし、モンデオはFF(前輪駆動)だったから駆動方式は4WDにした。後にFFを追加したが、結局のところあまり売れなかった。このフォード・ジャガー、クルマとしてはとくに悪くはなかった。でも、ジャガーとして見るとやはり物足りなかった。中途半端だった。それ以来のことだ、ジャガーがこのクラスに出撃するのは。
 で、何が物足りなかったかというと、ジャガーらしさだ。もともとジャガーは高級車メーカーではない。しかし年月をかけて英国の、そして世界の高級車メーカーに成り上がった。では、ジャガーらしさの要素とは何か? 人によって色々あるだろうが、“猫足”と呼ばれるしなやかな乗り心地と、内外の高級感だと思う。
まず問題になるのはこの猫足というヤツ。もちろんゴツゴツは問題外だ。衝撃の吸収はあくまでもソフトに、なおかつスムーズに納めなければならない。地面に吸いつくように。ガサツではいかんのだ。
 たとえば80年代後半に発売されたXJシリーズ(40系)。回転半径はイヤになるくらい大きかったし、ボディサイズから考えると室内も狭かった。トルクも期待したほど太くはなかった。でも、乗り心地は泰然自若たるものがあった。現在のジャガーに比べると頼りない部分もけっこうあったが、この乗り心地が他のマイナスを許す気にさせた。高級車とは必ずしも合理性の延長に存在するものではない。
 で、今回のXEはどうか? 悪くはない。さすがと思わせる部分も多々ある。剛性感も高い。当然のようにまっすぐ走るし、コーナーでの姿勢も安定している。その裏にエレクトロニクスの存在があるのは言を俟たない。しかし、何かが足りないような気がした。何だろう? 考える……そうだ、やはり猫足フィールだ。以前に比べればもちろん大きく進化している。ただ、この間にメルセデスもBMWもアウディも大幅な成長を遂げた。重厚さ、軽快さなど、それぞれ過去の延長線上で、もしくはその反対線上も含めて、だ。  
 そういうことを考えると、乗り心地に関してのXEのアドバンテージは相対的に減っている。もっとも、これはXJなみの性能を期待するからであって、前述のXタイプと比べれば十分すぎるほどではある。起伏やコーナーの多いイギリスのカントリーロードを走れば、その爽快感に「ワオー!」と声を上たくなるかもしれない。でも、日本独特とも言うべき首都高速道路の継ぎ目は思ったより拾っていた。残念!

2種類のターボにスーパーチャージャー。速さに不満なし

 ついでに言えばダッシュボードの質感にも不満が残る。ガソリンエンジン車のグレードは、下から順に2.0ピュア(477万円)、2.0プレステージ(515万円)、2.5ポートフォリオ(642万円)、3.0S(769万円)になる。2.0はダッシュボード面の素材感がジャガーとしては少々安っぽい。ポートフォリオにはそういう弱みはない。買うなら、ここは少しがんばって642万円だ。それもこれもジャガーゆえの不満であり要望だ。それを受け止めるのが高級車メーカーの使命であり宿命である。それ満たさない限り、この競争の激しいクラスでの勝利はおぼつかない。
 エンジンは、2リッター4気筒ターボ(PureとPrestige=200馬力、Portfolio=240馬力)と3リッターV6スーパーチャージャー(3.0S=340馬力)。ただし、今回試乗できたのは2.0と2.5。最上級の3リッターは用意されていなかった。かえすがえすもそれが残念だった。というのは、3リッターはエンジンだけでなくサスペンションもスポーツタイプを標準装備するからだ。Dセグメントのクルマに769万円の出費は痛いが、この大出力と固められた足のバランスがいったいどうまとめられているか試してみたかった。ちなみにトランスミッションはすべて8速ATである。
 速さに関してはどのモデルでもまず不満は出ないだろう。0→100㎞/h加速は、200馬力が7.7秒、240馬力が6.8秒、340馬力が5.1秒だと言う。7.7秒は標準の上、6.8秒はスポーティ、5.1秒はスポーツカーの領域に迫る。エンジン音はとくに静かではないが、かといって気に障るほどでもない。近々、3グレードのディーゼルエンジン搭載モデルも発売される(497〜549万円)。
 少し色あせたブランド力をはたしてどこまで高めることができるか。「何に乗っているの?」と聞かれて「ジャガー!」と自信もってこたえられるようになれば大成功だ。XE、細かい不満はあるが、秘めたる潜在能力は高い。
撮影:佐久間 健

<神谷 龍彦> 最終更新:2015/10/24