スズキ・イグニス

新しいジャンルだけに煮詰めの甘さが気になった 

ランプはすべてLED(MZ)。ヘッドランプ下周りのポジションランプ、丸いフォグランプ、それにワイドなオーバーフェンダーなどが個性的だ。

左右にフォグランプを配した黒いバンパー。Cピラーの造形はフロンテクーペを意識したもの。タイヤは前後左右ともボディいっぱいに配される。

山道では少しパワーに欠けることがあった。ステアリングももう少し落ち着いたフィールが欲しい。エンジン自体は4気筒らしくスムーズである。


インテリアの質感はまずまずのレベル。MZの本革巻きのステアリングホイールはサイズ感触ともに不満なし。パドルシフトもMZだけの標準装備。

1.2ℓエンジンは91ps、モーターは3.1ps。FFのJC08燃費は28.0〜28.8km/ℓ。最近のクルマのエンジンルームにしては珍しく地面が見えた。

MZのリアシートは前後に165mmスライドする。最前部に移動すると子供でも座れない。シートバックは5:6、もしくは6:4可倒式だ。


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 ヘッドランプを取り囲むユニークなポジションランプ群、その下の丸いフォグランプ、リアのフォグも可愛い(ランプ類はLED)。ただし、これらは最上級グレードのMZの話で、それ以下のMX、MGにはポジションランプもなければ、リアフォグもない。LEDでもない。悪くはないけど、ちょっと地味だ。
 それでも、しっかり張り出したオーバーフェンダー、さらには全長3700mm全幅1660mmという扱いやすいサイズ、ついでに言えば900kgを切る車重(FF)も魅力的だ。何よりもコンパクト・クロスオーバーという提案そのものがスズキらしい。SUVはこのところ輸入車も含めて急激に増えているが、コンパクトというのは非常に少ない。だから、昨年の東京モーターショーでイグニスを見たときこれはイケそうだと思った。それだけに箱根の試乗会に臨む期待値は高かった。
 「イグニス」は初代スイフトのヨーロッパでの呼称だが、このイグニスはスイフトとは別物。プラットフォームやサスペンションは先に登場したソリオと基本的には共通だ。ちなみにイグニスの最低地上高は180mm、スポーティハッチバックのスイフトのそれは130mm、ソリオは140mmだ。イグニスというのは、“点火する”とか“燃え上がる”という意味。イグニションをイメージしてもらえばいい。
 メーターはソリオのセンターメーターと違い、ステアリングの奥、つまり普通の配置だが、見え方が想像以上にクリーンで、このあたりもマル。デザインも本革巻きステアリングホイールの感触も悪くない。ただ、内装全体の仕上がりは標準的レベルにとどまる。
 リアシートが165mmスライドするのはいいが、一番前に出すと子供でも苦しい。じゃあ何のためのスライドかというと、おそらく荷室のスペースを稼ぐためだろう。後席バックはグレードによって5:5か6:4分割比の差はあるが、シートバッグを倒せばほぼフラットな床ができる。FFはトランクの床下にわりと広い空間があり、日常必要なものはここに入れておける。ゴルフバッグはトランクに入る。165mmのスライドはモアスペース用である。

もう少し煮詰めてほしい操舵感と乗り心地

 さて、肝心の走り。これは残念ながら期待を上回るものではなかった。このところのスズキ車はアイデアもさることながら、走りのレベルも高水準だったことを考えると惜しい。具体的に言おう。まず加速。とりたてて遅いわけではないが、発進時のアクセルワークに対して微妙にタイムラグがある。何でもかんでもパワーがあればいいとは思わない。でも、楽しそうなジャンルであることや、1.2リッター・ハイブリッド(アシストするのみ)ということを考えると不満が残った。1.2リッター4気筒エンジン自体はスムーズで振動も少ない。この点は同クラスの3気筒車に勝る。
 次はステアリングの反応。切り込んだ時に微妙なゴリゴリ感を抱かせるケースが時にあった。また、これはソリオでも感じたことだが、切り戻しの際にもゴリッとする。もうひとつ気になったのは乗り心地。これはソリオでは問題なかったが、イグニスでは弱点を見せた。最低地上高が高いせいかもしれないが、快適とは言い難い。新プラットフォームとのマッチングはもう少し煮詰めが必要なのではないだろうか。ただ、自動ブレーキ(50km/hまで)やセーフティパケージの歩行者感知機能などの安全装備は、その対応速度においてライバルを凌駕する。試乗したのはFF車だけだが、各グレード4WDもある。トランスミッションは全車CVTである。
 間もなく登場するバレーノやこのイグニスなど、このところのスズキは小型車に対して意欲的な取り組みが目立つ。好調とは言え軽自動車はやはり日本だけのガラパゴス的な存在であることは否めない。目の前の軽自動車戦争に勝つことはもちろん重要だが、グローバルに見れば小型車は欠かせない。ということも考えた上で、あえて厳しい評価をした。

写真:佐久間健

<神谷 龍彦> 最終更新:2016/02/15