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日本ではさほどではないけど世界的に見れば人気ブランドだ。A4の前身である80から数えれば1200万台も売れたという。しかし、ライバルであるメルセデスCクラスやBMW3シリーズと比べるとちょっと弱みがあった。それはFFという駆動方式だ。今やBMWもSUV系ではFFプラットフォームを使うようになったが、日本ではちょっと前までFR神話が一部では異様に強かった。もっとも、アウディには伝家の宝刀“クワトロ”という4WDシステムがあったけれど。
これまでA4には、いやA4に限らず、FFとクワトロの間には操縦性に違いがあった。コーナリングは、ウデによると面もあるから、まあいい。でも、高速直線安定性はクワトロの方が良かった。FFは時にピタッとはいかないことがあった。この点が、ニューA4では劇的に改善されていた。若干トルクステアが出る場面もあったが、概ね安定している。それが、このニューモデルのもっとも大きな美点だ。
さらに感じるのは、室内がとても静かになったこと。とかく耳に付きがちなサイドミラーからの風切り音もほとんど入ってこない。遠目にはあまり変わったように見えないボディも近寄るとエッジを始めとして大きく変わっているのがわかる。Cd値は何と0.23。旧A4と比べて0.3も小さくなった。圧倒的に小さな空気抵抗係数だ。
静かに感じるもう一つの要因はエンジン音だ。FF、クワトロともに排気量は2リッターの直4ターボで、パワーはFFが190馬力、クワトロが252馬力。このエンジンはどちらも6000回転のレッドゾーンを越えて滑らかに回り切る。しかも高回転域まで騒音がほとんど変わらない。中回転まで静かなエンジンは珍しくないがここまで寡黙なのはあまりない。
FFの190馬力はまったく不満のないレベル。252馬力は普通の走りには必要ないレベルまでカバーする。メーカーによる0-100km/h加速はFFが7.3秒、クワトロは5.8秒。この5.8秒は実感としてはかなり速いし、厚みがある。ただ、変速の際に微妙なショックが出ることがあった。
後席も広くなった。自動運転を見据えた安全装備も。
これにはトランスミッションも多少影響しているかもしれない。今回からCVTをやめて7速Sトロニックになった。このセミAT(VWのDSGと同じ)も改善されて超低速での扱いにくさは減った。ともかく、Sトロニックのダイレクト感と変速の速さは大きな魅力だ。操舵感はFFとクワトロの比較ではクワトロの方が重い。FFは重めだが軽快さの方が勝る。いずれもスムーズで違和感がない。プラットフォームはアウディが初めてその性能を世に問うMLBエポ(従来はMLB)。
アウディが高品質なのは周知の事実。いわく、ボディパネルの間隔が少ない、インテリアの仕上げが良い……などなど。これらの美点は今回さらに磨きがかかった。正確に測定したわけではないが、ボディパネルの間はさらに詰められたようだし、室内のクオリティも上がっている。
インパネデザインは水平基調になり、先代よりもずいぶんすっきりした。簡潔にまとめようというのがコンセプトらしい。でも、機能が増えた分かスイッチ類はまだ多い。
マトリクスLEDヘッドライトとセットオプション(34万円)となるバーチャルコクピット──ナビやメーターや情報を表示──発想は面白いがまだ馴染みきれない。ただ、最初に採用されたTTにはなかった8.3インチの液晶モニターがダッシュボードセンターに用意されている。視線の移動云々よりもこの方が見やすいと思うのは私だけだろうか。
車内も広くなった。室内長が17mm、後席レッグルームが23mm増えた。数字的には大して広がったとは思えないが、実際にはかなりゆったりした。
もうひとつ付け加えておかなければならないのは、安全装備の充実。標準で付くのは①アクティブレーンアシスト ②アクティブクルーズコントロール(自動的に前方車との距離を調整、渋滞時に操舵をアシスト)③ターンアシスト(交差点での右折時に直進車がある場合は自動的に停止)など。パークアシストなどはオプションになる。
A4は大きく成長した。充分速いし、十分静かだし、装備も充実している。快適なリビングルームのようだ。ボディはライバルのCクラスやBMW3シリーズよりも少しだけ大きい。もしかしたら、A6すらライバルの対象になるかもしれない。価格は518万円〜624万円。
協力:ブリストルヒルゴルフクラブ