メルセデス・ベンツGLC 4 MATIC

思いがけず超傑作に出会えた。どこでも、どこまでも。

神谷 龍彦

フルタイム4WD。ステアリングはやや軽めだが、これはSUVの基本。ハード走行ではしっとり重くなる。オフロードでも乗り心地はいい。

最低地上高はSUVとしては標準的な180㎜。視点は高くなるが、コーナーでも高速道路でも不安は一切感じさせない。見事なセッティングだ。

このシルエットはもはや単純なSUVではない。一流ホテルに乗りつけてもまったく問題はない。オール・イン・ワンカーと名付けたい。


当然ながら安全装備も充実している。歩行者検知機能付レーダーセイフティパッケージや360度カメラシステムなど。部分自動運転ができる。

インテリアはCクラスを踏襲する。余計な緊張を強いない。しかも視点はCクラスより高いから見切りは思いのほかいい。

後席のレッグルームは57㎜増えた。その差、実感できる。リアシートは40:20:40分割可倒式。ラゲッルームもかなり広くなった。


※画像クリックで拡大表示します。

 GLKの後継車である。ということは、GLAとGLEの中間を受け持つSUVということだ。2リッター直4ターボの最高出力は211馬力。GLA250と同じエンジンだ。GLCのGLはSUV、CはCクラスの属することを、メルセデス流に表現したものである。
 しかしGLCは、実際にはGLKとはほとんど関係ない。またSUVであるという点でCクラスからも遠く離れる。便宜的に比較すれば、全長と全幅はGLKよりもそれぞれ110㎜&50㎜長い。Cクラス比では全長が30㎜短く全幅が80㎜広い。よく言えば新たに隙間市場を狙ったモデル、悪く言えば中途半端なクルマではないか、というのが試乗前の予断だった。
 ところが、プレゼンテーションを聞いて少し認識が変わり、試乗してみてグッと評価が上がった。これはイイ、イケる!と。敢えて気に入らない点を挙げればグリルのやたらと目立つベンツエンブレムだが、まあこれは「だからいいというマニアも多いだろうし、本社の戦略だからここで触れても意味はない。
 まず外観。最低地上高はSUVらしく180㎜とたっぷりあるのに、クーペライクなボディシルエットゆえにSUVとはあまり感じさせない。全高の1645㎜はある意味SUVの宿命のようなものだから高くても仕方ないが、武骨さはない。それが新鮮だ。
 最近増えてきた、足を下に入れるだけで開閉ができるハンズフリーテールゲートが標準装備というのも親切だ。全長4660㎜は日本で使うのに便利なサイズである。ただ、全幅1890㎜は少し大きい。とはいえ、SUVの場合は視点が高いから見切りはしやすい。最小回転半径5.7mはSUVとしては標準的である。

乗り心地も操安性も───文句つけようがない。

 インパネはほとんどCクラスのまま。だから使いやすいし違和感がない。GLKはこれまで左ハンドル仕様だけだったが、GLCで右ハンドルになったのがありがたい。足元も広くなった。とくに後席のレッグルームは57㎜広くなった。これは実感としてもはっきり分かる。ラゲッジルームも広くなり、通常時でGLKより100リッター多い550リッター、後席を完全に倒せば1600リッターまで増える。
 でも本当に凄いのはここから──走りと乗り心地だ。いかにもSUVっぽかったGLKに比べてはるかにスタイリッシュになったのはすでに述べた。しかし、走りは外観以上に洗練されていた。エンジンはGLA250と同じなのにもっと“力”があるように感じさせる。
 これにはエンジンのチューニングもさることながら、新たに採用された9Gトロニック(9速AT)によるところも大きい。多段化は燃費対策でもあるが、同時においしいところを細かくつまみ食いができるわけで、それはパフォーマンスにも貢献する。さらに言えば、ひとつのギアが受け持つ速度域が狭いから、変速ショックも小さく、回転数も抑えられる。そのせいばかりではないが、GLCはとても静かだった。
 乗り心地も非常にいい。曖昧さはほとんどない。不快な振動もない。軽快さと重厚さが見事に同居している。サスペンションは、ベースグレードがショックアブソーバー内のオイル量によって減衰力をコントロールするタイプ。メーカーの言うとおり一般走行では快適でハード走行時には高い減衰力を発揮する。この傾向はスポーツサスペンションを採用するスポーツグレードでもあまり変わらない。
 ステアリングの設定はSUVらしく少しダルだが、高速では重くなる。さらに標準装備のダイナミックセレクトで好みの操舵力を選ぶこともできる。このステムはコンフォート、スポーツなど5モードあり、操舵力と同時にエンジンやトランスミッションも変化する。メルセデスお得意のシステムだ。
 GLCはどの領域でも違和感がない、安心感が高い。スタイル、性能、乗り心地、ハンドリング、質感──どれをとっても一流の仕上がりだ。この1台でオフロードはもちろん一流ホテルにだって乗りつけられる。いっそ、SUVというよりオール・イン・ワンと呼びたい。価格は628〜745万円。今回は納得である。

写真:佐久間 健

<神谷 龍彦> 最終更新:2016/03/06