日産 スカイライン クーペ

圧巻の動力性能と抜群の走行安定性

渡辺 陽一郎



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 06年にスカイラインセダンがフルモデルチェンジを実施し、07年に入るとクーペが一新された。今や日本のクーペ市場は極端に冷え込み、先ごろ投入されたGT-Rや軽自動車のコペンを含めても、国産クーペのバリエーションは10車種に満たない。その中でスカイラインクーペは、スポーツカーのフェアレディZやGT-Rに対してラグジュアリーな性格を与えられている。スポーツカーではなく、ツーリング指向のクーペは今やとても貴重だ。

 「スカイライン」の名称は付くが、ボディパネルはセダンと別設計。プラットフォームや内装のデザインは基本的に共通だが、エンジンはセダンが搭載しないV型6気筒の3700ccになる。VVELと呼ばれるバルブの作動角度とリフト量を連続的に可変させる機能を採用。吸気抵抗の低減と、吸入時の応答性を大幅に向上させた。その結果、333馬力の最高出力と37kg-mの最大トルクを得ている。
 これだけのパワーがあれば、動力性能に不満はない。発進直後に軽くアクセルを踏んだ1300回転付近でも十分なトルクが感じられ、大排気量エンジンらしい余裕がある。そこからアクセルを踏み込むと力強い加速が開始され、4700回転付近から吹き上がりが一層鋭さを増す。ここから最高出力が発揮される7000回転の間が、最もダイナミックな加速を体感できる回転域だ。日本の道路環境では、十分過ぎる動力性能だろう。

 一方、サスペンションは、18インチタイヤを装着したノーマルタイプと、19インチタイヤに4輪アクティブステアを組み合わせたスポーティなタイプがある。  4輪アクティブステアは、後輪操舵の4WSにステアリングのギヤレシオを可変させる機能を組み合わせたもの。ステアリングのギヤ比は低速でクイック、高速ではスローになり、スポーティな操舵感覚と走行安定性の両立を図った。クーペではセダンの4輪アクティブステアに比べてクイックな領域を拡大し、ステアリングギヤ比の変化を抑えることで、操舵時の違和感を抑えた。

 この機能の目的は、あくまでも走行安定性の向上だ。つまり後輪を踏ん張らせる4WSにある。ただし、4WSを付けただけでは安定指向の曲がりにくい感覚になるから、低速域ではステアリングのギヤ比をクイックにして、俊敏な動きも楽しめるようにした。

 従って、ひとたび旋回状態に入ると、そこからステアリングを切り込んでクルマを強引に内側に向けるような走り方は難しい。旋回中には4WSの働きで徹底した安定指向になるからだ。コーナーに進入する段階でフォームを決めておく必要がある。
 もっとも、その分だけ走行安定性は抜群に高い。コーナリングの最中にアクセルを閉じたりブレーキングを強いられても、ほとんど後輪が横滑りを起こさない。かなり強いアクションを入れない限り、横滑り防止装置のVDCが作動することは稀だ。VDCをカットしてタイトなコーナーでアクセルを踏み込めば、LSDの働きでスピンもするが、アクセルを閉じた状態で行われる危険回避の性能は際立って高い。

 個人的には、3700ccエンジンの動力性能は過剰だが、この優れた走行安定性は欲しいと思う。先代型では19インチタイヤ装着車の乗り心地は劣悪だったが、それも現行型では改善されている。販売台数は少ないが、注目度の高いクルマだ。

<渡辺 陽一郎> 最終更新:2010/04/23