ボルボ VOLVO
V90 クロスカントリー T5 AWD V90 CROSSCOUNTRY T5 AWD

『人生最後の一台』に新しいライバル登場

実際に行くかどうかはともかく、どこでも行けるという性能の安心感は大きい。ボルボの‟冒険旅行“モデルとしては20年目にあたる。

最低地上高は高くなったが全高はこの手のモデルとしては低い。フロントグリルや前後パンパー、ホイールアーチは専用装備だ。

なだらかなリアエンドはボルボのレンガのイメージを過去に追いやった。V90 より大きいがXC90よりは小さい、。車名はバンパーに。


T5のエンジンは2.0ℓターボ(254ps)。T6はターボとスーパーチャージャーを備える(320ps)。ただし、現在市販されているのはT5のみ。

室内は十分高級。12.3インチディスプレイ(メーター)とセンタのー9インチタッチパネル。車速等はヘッドアップディスプレイにも。

操舵も行う自動運転の出来は上々。前車に追従していて3秒以上止まると追従はOFFになるが、アクセルを踏む等すれば再開する。


※画像クリックで拡大表示します。

 2017年次『RJC Bulletin』でカーオブザイヤー・インポート受賞のボルボXC90を担当執筆させてもらった手前、年が明けて、引き続いて登場したプラットフォーム共有の新型セダンS90の試乗会には、ともかく足を運んだ。
 舞台は春まだ浅き富士山麓の御殿場をベースに、路面の滑らかな新東名高速を下って、駿河湾沼津SAで一服してから新富士ICでいったん下道に降り、今度は沼津ICからチョイ荒れ路面の東名で戻る設定だった。このステージの狙いは走りの性能チェックより、ボルボが独自に開発し進化させつつある運転支援技術の確認だった。
 採点は二重丸。前車との追従速度が時速140km/h以内なら、従来のアクセル・ブレーキ機能が稼働し、それに加えて、前車がいなくなっても単独で車線を検知し、走行車線をキープしながら自動でステアリングを操作してくれる。
 「率直に言って、イヤーカーに加えてテクノロジーオブザイヤーまで手中にした日産のプロパイロットが、いささか《元服前の稚児さん》に思えるほどの、頼もしい《若武者》ぶりだったよ」

 試乗車を返還する際に、広報部チーフにその感想を伝えると、いやいや、この後をもっと期待してくださいよ、と胸を張った。V90のCross Countryのデリバリーも間近い、ということか。

モチベーションの高さに感動すらおぼえた。
 5月代連休のさなかに、ボルボからの招待状が届いた。V90をベースに、悪路走破性を高めるため最低地上高を55mmアップ、新開発の専用サスペンションの採用をはじめ、Cross Country専用のエクステリア デザインを与えたクロスオーバーモデルを用意したので、6月1日に成田富里のラディソンホテルに集合されよ、という。
 今回はT5エンジン+AWDの組み合わせとなる「T5 AWD Summum」(2.0ℓ Turbo/254ps 7540000円=T5の上級グレード)が用意されていて、東関東自動車道を中心に90分間の試乗枠を設けているのだが、どうやら3人一組とあって高速道路のチョイ乗り程度で我慢することになりそうだった。
 お決まりのプレゼンテーションの洗礼を受けた後、ホテルの庭園に陣取ったCross Countryのプロポーション鑑賞からスタートする。ともかくSUV特有の腰高で大ぶりなはずのボデイが、バランスよく引き締まって見えるのはなぜだろうか。これはまずステアリングを握るよりも、後部座席、ナビシートと位置を替えてインプレッションを楽しんだ方が、有効かもしれない。
 志願して後部座席から、北欧生まれのCross Countryの味見を始めた。ホテルから東関東自動車道・富里ICまでの一般道は大型トラックなどのお往来も激しく、結構、荒れた路面で、リアサスの衝き上げや収縮具合を感じ取るのに絶好のステージ。決して滑らかとは言い難いが、厚みの感じられるシートのサポート感は、これが北欧の味、と受け止めれば、悪くはないはず……。
 これはもっと時間をかけてこのクルマと親しんでみたい。
 それにしても、ボルボがこの新型V90シリーズに注入したモチベーションの高さには、一種の感動すらおぼえる。2020年までに、新しいVOLVO車に搭乗中の交通事故による死亡者や重症者をゼロにするプロジェクトにも……。 
 と、こんな具合にVOLVOと向き合う時間を重ねていくうちに、傘寿を超えた筆者の「最後の一台」をPORSCHE MACANにする夢に、また新しいライバルが加わってしまった。さて……。

報告:正岡貞雄
写真:佐久間健

最終更新:2017/06/10