MINIクロスオーバー(2)
MINI CROSSOVER (2)

さみだれを集めて速しMINIクロス 

もはや昔のゴーカートフィールカーではない。もっと大人のクルマ。日本販売はゴルフを抜いた。

ミラーの位置などで継続性をアピール。Dのグリルはシンプルな六角形。SDなどは「への字」。

ラゲッジルームは100ℓ増えて450ℓに。後席は20:40:20の分割可倒式。リクライニングもする。


260km/h刻んだ速度計の右横に赤い燃料メーターが配されているが、ちょっと見にくい。

ガソリンエンジンはONEやSE、ワークス(ハイオク)。ディーゼルの完成度も高い。

5月に発表されたジョンクーパー・ワークス。ダークグリーンの特別色なども心をそそる。


※画像クリックで拡大表示します。

 MINIクロスオーバーの発表は2月だった(納車はミニの日=3月2日)。その後、5月にホットなジョンクーパー・ワークス、7月にPHEVのSEが発表された。
 これらはあくまでも発表であって、試乗の機会は大抵あとにずれこむ。つまりクロスオーバーはさみだれ式にぼくたちの前に姿を見せる。しかも、みんなけっこう速い。そんな中、クロスオーバーにまとめて乗れる機会があった。
 と思ったら、この「さみだれミニ物語」はまだ続いた。10月に入って入門モデルのワンとバッキンガムが発表されたのである。今回はこの2モデルの試乗記は間に合わないけど。
 MINIはモデルチェンジのたびに大きくなる。そりゃあそうだ。誕生したのは1959年。60年近く前のことだ。この時のサイズは全長3050mm×全幅1410mm。今とは隔世の感がある。
 BMW傘下での初代MINIは3625×1690mm(2001年)。2006年に登場した2代目MINIシリーズは、モデルによって違いはあるが、全長は4000mmを、全幅は1700mmを越えた。カントリーマンという名でミニ初のSUV(SAV)がデビューしたのは2010年。クロスオーバーと名を変えて日本に入ってきたのは翌2011年だ。サイズは4105×1790mm。よく売れた。
 そんな環境の下での2代目への突入。全長だけをとっても先代比195mmも成長した。が、もはやサイズの面で英国時代と比較するのは無意味だろう。これだけ大きくなってなお好評というのは、新たなジャンル、BMW流に言えばプレミアム・コンパクトとして受け入れられたということだ。昔と比べて大きくなったなどと嘆いているのは自動車評論家くらいかもしれない。
どんどん良くなる新作MINIの質感
 この日乗ったのは、クーパーD、クーパーD ALL4、クーパーSD ALL4、クーパーSE ALL4。 “D”はディーゼルを、”ALL4“は4WDを、”SE“はプラグイン・ハイブリッドを表す。しかし、ジョンクーパー・ワークスも用意されていたのに気づかなかった。何たる迂闊。大いに自己嫌悪! 
 DとSDのエンジンは2.0ℓディーゼルターボでそれぞれ110kW(150馬力)、140kW(190馬力)。SEはフロントに3気筒1.5ℓガソリンターボ、リアにモーター。出力は100kW(136馬力)と65kW(88馬力)でトータルは165kW(224馬力)。ジョンクーパー・ワークスは2.0ℓ170kW(231馬力)。これらのエンジンはパワー云々よりも大トルクの方が魅力的。ちなみに、ワンとバッキンガムはともに75kW(102馬力)と新人らしく控えめだ。
 MINIは大きくなると同時にその質感も高めてきた。エクステリアだけでなくインテリアもだ。MINIらしくないMINIと言われつつ、しっかりMINIと分かるデザインの妙。BMWは巧妙である。
 プラットフォームはBMWのSUV・X1などと共用する。そのせいか走りにしっかり感が増した。足は先代よりしなやかだし、バンプにも強い。エンジンやトランスミッションもクロスオーバー用に手が加えられた。
 これらの中でとくに新しいのはSE、つまりハイブリッドだ。これも4WDだが、他の4WDと異なりフロントはエンジンでリアはモーターで駆動する。モーターだけで走れるのは約40km。この時の最高速は125km/hまで。走行モードはeDrive、AUTO eDrive、MAX eDriveの三つ。左からバッテリー使用を抑える、エンジンとバッテリー併用、電気のみと分かれる。
 市街地ではクロスカントリー家族の中ではもっともスムーズだ。が、強力なトルクを供給するモーター域を過ぎると加速に若干頭打ち感が出ることに今回気づいた。
 MINIはスイッチが多い。これもMINIらしさの表れだろう。一つのスイッチにいろいろな機能を持たせるよりもこのほうが馴染める。ダッシュ部センターにはトグルスイッチが並ぶ。スターターは中央にあるが、その色がSEだけ黄色にした。他のモデルは赤だ。
ヤンチャ坊主は卒業して大人の視点で
 SEはBMWにとってさしあたり必要なモデルだと思う。しかし、総合的にはベーシックなディーゼルがいい。スタートは悪くないし、約4500rpm以上ラクに回る。ALL4にするかどうかはライフスタイルによる。
 ディーゼル音は室内では無視していい。しかし、外に出るとその存在は分かる。これより静かなのはマツダくらいだろうが、トルク感ではMINIが勝る。電気カミソリでいえば「ブラウン」のようだ。音は少々うるさいがよく剃れる。SDははるかにパワーもトルクもある。しかしそれと一緒に微妙な振動まで連れてきたかもしれない。ちょっとラフな印象があった。パワステも重い。
 0-100km/h加速タイムは、Dが8.8秒、SDが7.4秒、SEが6.8秒、ワークスが6.5秒。いずれもけっこう俊足だ。だからと言ってクロスオーバーに「ゴーカートフィーリング」を求めるのは無理がある。ステアリングはシャープな方だし、エンジンレスポンスもいい。シート位置はSUVとしては低い。でも何と言っても大き過ぎる。いつまでも大人にヤンチャ坊主を期待するのは如何なものか。
 価格は335万円から556万円。足を下に入れるだけでテールゲイトの開閉ができるシステムはリアビューカメラなどとのセットオプションで19万8000円。ボディはともかくプライスが”ミニ“だともっといいけど。
報告:神谷龍彦
写真:怒谷彰久

最終更新:2017/10/09