※画像クリックで拡大表示します。
第一印象は「大きいなあ」だった。で、諸元を見ると、先代比で伸びたのは全長(50㎜)と全高(5㎜)とホイールベース(15㎜)。全高は約1665㎜だから日本立体駐車場はもともと念頭にない。ただ1900㎜の全幅はまったく同じだった。
それよりも注目すべきは、ボディ幅を増やさずに後席の左右の幅を約10㎝広げたこと。見た目にも広いし、実際に座ってもその印象は変わらない。エアクステリアの幅を広げないで室内を大幅に広くするなんて理屈に合わない。この点はアウディ側から明確な説明はなかったが、勝手に想像すると、こんなことではないか。
A4などと同じMLB進化タイプのプラットフォームを採用し各コンポーネンツに複合素材を用いた(Q5で60kg、SQ5で70kgの軽量化)。インテリアのデザインも素材も見直した。基本骨格がしっかりしているからこそできる技だ。
そう言えば前席下部への足の出し入れもしやすくなった。というかレッグスペースに余裕がある。単純な数値だけじゃないところがいい。別にQ5だけの特徴ではないが、最近のアウディ車はATシフトレバーの上がちょっと手を休めるのにちょうどいい感じだったりもする。派手じゃないけど、ユーザーにとってはありがたい配慮だ。
しかしシフトレバーの前にあるMMI(マルチ・メディア・インターフェイス)用の操作パッドは左ハンドル仕様のままで、あまり使い勝手はよくない。だからと言ってどう改善すればいいか思いつかないが……。
もう一つほめると、運転席からの視界。まずボディパネルのベルトラインが低くて死角そのものが少ない。加えてドアミラー付近にヌケのいいデザインが採用されている。これも実際の運転ではメリットが大きい。いい意味ですぐ慣れるが、美点として挙げておきたい。
Q5のクワトロ・システム進化。低負荷時はFFに
世界的に見ればQ5は数あるアウディSUVのなかで稼ぎ頭である。先代は2008年から160万台も売れた。アウディでは、A3とA4に続く。メキシコ産だが、品質に不安はない。今回も質感を含めてまったく破綻はない。“不安”と言えば対トランプ対策くらいのものだ。ついでに触れると、Q5は密閉性がすこぶる高い。この精度の高さも外界との遮断感の一因だろう。
Q5のボディサイズは、BMWならX5ではなくてX3に近い。同じアウディの中では上級のQ7(5070×1970㎜)よりも一回り小さいのは当然だが、注目したいのは東京モーターショーでコンセプトモデルが見られるQ8だ。このモデル、コンセプトとはいえ実にスタイリッシュ。うっとりするくらいである。Q7の上らしく全幅は2040㎜もあるが、全長は5020㎜でQ7よりもわずかだが短い。
Q5のエンジンは、2.0ℓ直4 ( 185kwW=252ps)、SQが3.0ℓV6(260kW=354ps)。意外だったのはSQの販売台数が先代では25%もあったということ。エンジンはパワーもトルクも十分だ。0-100km/h加速タイムはQ5が6.9秒、SQ5は5.4秒。とまあ、動力性能は十分以上だし、乗り心地も悪くない。ただ、コーナーでは乗用車と異なり腰高感を感じさせることがあった。
アウディと言えばクワトロ。Q5はA4 allroad クワトロから新しくなったシステムが採用された。トランスミッション後端とリアデファレンシャル内のクラッチによる駆動力断絶機構を持つ。この結果。低負荷時にはFF走行が可能だし、4WDが必要となるようなときはそれを予測して直前にクラッチをつなぐ。運転していてその変化を感じることはない。
ドライブモードを「auto」から「dynamic」に切り替えれば4WDへの切り替えがより早くなり、後輪へのトルク配分も多めになる。燃費と機能を両立させる進化だが、これはQ5のみ。
自動運転アシストもよくそろっている。ただし、試乗車には65km/h以下で操舵まで行う「トラフィックジャムアシスト」や車線維持を行う「レーンアシスト」はついていなかった。この二つのシステムは12月まで待たなければならないそうだ。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健