昨年暮れに発表されたBMWのフラッグシップクーペに4ドアモデルが追加された。その名を「グランクーペ」という。なにがグランかというと、まずボディ。全長は2ドアモデルよりも230mmも長い。ホイールベースは205mm増の3025mmになる。
このロングボディを支えているのがセンタートンネル内部のカーボンコア構造だ。これなくしてここまでのロングボディは生まれなかっただろう。カーボンだから強度はたっぷり。クーペモデルとは感じられないほどの鋭い走りを実現したという。
「このクーペは4ドアクーペ・カテゴリーに革命を起こします。スタイリングと走り、どちらもまったく犠牲にしていません」プロダクトマネージャーの御舘康成氏は、誇らし気に、そう本当に誇らし気に語った。
どういうことか? スタイルだけでなく室内空間の確保に長〜いホイ−ルベースが効いているのは言うまでもない。8グランクーペはさらに天井にもこだわる。外から見るといかにもクーペといったスタイルなのに、密かに天井を高くしてリアの居住空間を多くしているのだ。
それだけではない。 サスペンションも専用設計だ。2ドアに対してリアのトレッドを30mm広げている。さらにインテグラル・アクティブステアリングやアダプティブMサスペンション・プロフェショナルを採用している(M850xDriveに標準装備、他モデルにはオプション)。
レベル2でもハンズオフ可能。50m自動後退も
安全支援技術では「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能」がある。これは高速道路での渋滞時にステアリングホイールから手を離せる機能だ。ただし、現段階では自動運転レベル2であり、前方注意が必要になる。当然事故の時の責任もドライバーに課せられる。
ユニークなのはパーキング・アシストに装備されている「リバース・アシスト」。この機構自体は3シリーズにも組み込まれていた。しかし、ボディのより大きい8シリーズだとその有効性はさらに増す。
時速35km/h以下で走行中、そのコースを記憶しておき、たとえばすれ違いが難しいような所や、行き止まりになったようなときに、自動で操舵を行い最大50ⅿ戻る。ただし、アクセルやブレーキ操作は自分でやらなければならない。
エンジンは3種類。最上級のM850i xDriveはクーペと同じ4394ccV型8気筒(390kW=530ps)、840i xDriveが2992ccディーゼル直6(235kW=319ps)、 840iが2997cc直6(250kW=340ps)。駆動方式は840iのみがFR、他は4WDである。税込み価格は1152万円(840i)から1715万円(M850i xDrive)。
レベル4のモデルに乗れるチャンスだったのに
この日はクリスチャン・ヴィードマン新社長のお披露目があった。さらに自動運転レベル4の実験車の体験試乗が組まれていたがこちらの方は悪天候のため中止になった。
自動運転には5段階ある。レベル4はではドライバーが運転に直接関わる必要はないし、事故の時に責任を問われることもない。試乗車は7シリーズで、各部に多くのセンサーを示す突起があった。さてその機能。たとえば、スマートフォンのアプリによって空車を呼び出すとオーナーが希望する場所まで迎えに来る。
運転席には誰もいなくていい。走行を始めるためは乗員全員がシートベルトを締めなければならないが、車内で自由に過ごすことができる。娯楽だって会議だって。目的地に着いて乗員が降りるとクルマは自動的に駐車場に入る。この間、ドアのロック&アンロックなどは自動で行われる。
今回の試乗予定車はまだ市販車ではなくてあくまでもデモンストレーション車。センサーなどの突起の多くは2023年頃の市販時にはグ〜ンと減ってはるかにスマートになると思われる。天気のためだから仕方ないとはいえ、乗れなかったのはやはり残念だった。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健
クーペスタイルのセダン──発想は珍しくないが、ドアはやはり4枚あった方が使い勝手はいい。
このスタイルで居住性は大幅にアップ。ホイールベースを一挙に205mm延長した効果は大きい。
全幅はクーペより30mm増えたが、このクラスになればまあいいか。堂々とした面構えだ。
リアのくびれが美しい。クーペの泣き所だった後席の居住性をカーボンコアの採用などで解決した。
最上級のM850iのインパネ周り。基本的にはクーペと変わらないが、視認性などは向上している。
オプションのパノラマサンルーフ。サンルーフは珍しくないが、ここまで広いのは例がない。
エンジンは3種類。M850iの4.4リッターV8の最高出力は390kW=530ps。0-100km/h加速は3.9秒。十分速い。ディーゼルやガソリンの直6も用意される。xDrive が多いがガソリンの直6はFR。
レベル4体験デモカーは発展途中を示すように各所にセンサーが目立った。でも乗ってみたかった。