7月15日、日産がまったく新しいクロスオーバーEV(電気自動車)を登場させた。これがワールドプレミアでもある。「アリア(ARIYA)」──エクステリアは昨年の東京モーターショーでアリア・コンセプトとして展示されたモデルとほとんど変わらない。おそらくインテリアもそうだろう(ショー時にはっきり見なかった)。
パワープラントはもちろんエンジンではなくてモーターだ。65kWh仕様と90kWh仕様が用意されており、駆動方式はFFとAWD(e-4ORCE)の2種類。出力はFFが160kWと178kW、AWDは250kWと290kW。WLTCモードの走行距離は65kWのAWDが430mm、65kWのFFが450kW、95kWのAWDが580mm、95kWのFFではなんと610mm。これはリーフに比べると約3割多い。
充電にも凄業を見せる。30分の急速充電で最大375km走ることができるのだ。これにはバッテリーの温度を一定に保つ水冷式の温度コントロールシステムも貢献している。2021年度内に国内でCHAdeMOの急速充電器を公共性の高い場所に設置できるように関係施設と交渉中だと言う。
走る速さも一級品だ。FFの最高速は160km/h、AWDは200km/h。FF の0-100km/h加速は7秒台と一応俊足だ。まあこの辺は驚かないが、AWDは凄い。65kWのAWDが5.4秒、90kWのAWDに至っては5.1秒。これはフェアレディZに勝るとも劣らない。低回転からトルクの太いEV(500Nm/600Nm)の長所がこんなところにもあらわれている。スタートから胸のすくような加速が味わえるのは間違いないだろう。
一見とってもシンプル。使い勝手は良さそう
ボディサイズは、全長4595×全幅1850×全高1655mm。ほぼエクストレイル(4690×1820×1740mm)と同じようなサイズだが、エクストレイルよりも短く背が高い。ただ、全体のイメージはエクストレイルよりも滑らかだ。これは、加速などのスムーズさを表現するためでもあると言う。EVだから基本的に冷却は必要ないからグリルはパネルでカバーされる。その中央にLEDの新しいブランドロゴが輝く。ついでにいえば、グリルの外側に配された白いVモーションはシーケンシャルウインカーとしても機能する。
プラットフォームはEV専用設計。新開発のバッテリーをボディのほぼ中央に置く。バッテリーケース内にXメンバーで採用強度を確保しつつ、床をフラットにした。リアにトンネルはない。フロントのトンネルは低い。
Cセグメントのボディなのに室内はDクラス並み。これに大きく役立っているのが、モーターだけでなく、これまで室内に配置されていた空調ユニットをモータールームに入れたことだ。
まず目立つのはステアリングホイール奥の左右に二つ並んだ角形のディスプレイ(12.3インチ)だ。向かって右側に速度などの表示、左側にエアコンなどの表示がされる。この手のものとしては分かりやすい。
ダッシュボードやセンターコンソールには、(ぼくの好きな)スイッチやメータはほとんど見当たらない。ちょっとつれない印象も受ける。ただ賢いのは、このアイコンスイッチは単なるタッチセンサーではなく、触れると振動する。運転中でも操作感がわかる。
コネクテッドやプロパイロット2.0も選べる
最近よく耳にするようになった自動車用語に「CASE」がある。これは、Connected Autonomous Shared&Service Electric Connected Carのことで、アリアは日産がリーフで蓄えてきたEVのノウハウを活用するだけでなく各メーカーが取り組んでいるコネクテッド技術の大幅な導入もある。つまりクルマとの“会話”がしやすい。
例えば、スマートフォンでドライブブランを立て、クルマの情報を確認しながらルートをクルマに転送。エアコンを乗り込む前にONにする。インテリジェントキーを持ってクルマに近づくと、前後のライトと日産の新デザインのエンブレムが光ってオーナーを迎え、ドアロックが解除される。
クルマの電源を入れると、二つ並んだ12.3インチのディスプレイが起動し、インストルメントパネルにはエアコンなどの操作スイッチが白く浮かび上がる。地図や音楽情報などを映すセンターのディスプレイはスワイプ操作が可能で、ナビゲーションのルートなどをメーターディスプレイに表示させられる。
空調やナビゲーションも音声操作可能だ。自然な言葉で操作できるハイブリッド音声認識機能は「ハローニッサン」と呼びかければドライバーの操作をサポートする。インターネットをつなげることでより自然な言語での音声認識を実現している。日産で初のリモート・ソフトウェア・アップグレードと呼ばれる、無線でクルマのソフトウェアをアップデートする機能を備える。アマゾンAlexaにも対応する。
7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーで、白線、標識、周辺車両を検知し、ナビゲーションシステムと3D高精度地図データを使うことで、制限速度をはじめとした道路状況を把握しながら、同一車線内でハンズオフ走行を可能な「プロパイロット2.0」を装着するモデルも用意されている。
スペースを自動で検知し、駐車に必要な操作の支援もする。簡単な3つのステップで前向き駐車、後向き駐車、縦列駐車に対応する。車外からの操作で駐車する機能「プロパイロット リモート パーキング」(日本市場に設定)も搭載している。さらに、アクセル操作だけで発進、加速、停止がこなせるeペダルも付く。この装備、慣れれば思った以上に便利だ。
日本での発売は2021年中頃の予定。価格は約500万円からになるらしい。欧州、北米、中国では、2021年末までの発売を予定している。
報告:神谷龍彦
写真:日産自動車
アリアのイメージカラーである暁(あかつき)はこのカッパー(銅)とブラックの2トーン。一日の始まりと電気を流す銅を表現したという。比較的新鮮なイメージカラー選びだ。
プロパイロット2.0搭載モデルは、二つのルーフのシャークフィンアンテナが装備される。
サイドビューは流れるよう。シームレスでスムーズなキャラクターをカタチで表現した。
二つの大きな(12.3インチ)のディスプレイがインパネの特徴。物理的突起はほとんどない。
左がオーディオやナビ、右がスピード中心だが、左右の表示項目を変えることもできる。
ダッシュボードのエアコン関係スイッチ。押すと振動するから運転中でも分かりやすい。
環境把握は万全だ。7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーで、白線、標識、周辺車両を検知し、ナビゲーションシステムと3D高精度地図データを使って走りをサポートする。