【新車&NEWS】HONDA e (ホンダ イー)
東京モーターショーのコンセプトカーがほぼそのままで

 昨年の東京モーターショーのホンダブース、もっとも人目をひいたのは市販間近のフィット(世界初公開)やアコードではなく、中央のステージに展示されていたツルンとしたデザインのコンセプトカーだった。その名を「ホンダ イー」と呼ぶ。このネーミングからもわかるように完全な電気自動車(EV)である。

エクステリアにドキ! インパネにドキ、ドキ!!

 EVというパワートレーンもさることながら、注目を集めた最大の理由はそのボディデザインだ。クルクルッとした左右の丸いヘッドランプ、ボディを覆うラウンドライン、全体の印象としてはとってもカワイイ(社内では“つるぴか”デザインと呼ぶらしい)。どことなく新しい時代を予感させる市販予定車だった。シンプル化は、未来へのひとつのパスポートかもしれない。
 発売は10月30日からだ。公表された資料によるとボディの3サイズは3875×1750×1510mm。全長と全高は見た目の印象とあまり変わらないが、1750mmの全幅は思ったより大きかった。室内は広いとは言いがたいが、さりとて軽自動車のようなことは当然ながらない。乗車定員は4名、リアシートの乗員は多少足を曲げなければならないかもしれない。
 インスツルメントパネルを見て驚いた。違和感ありありだ。これは良くも悪しくもパイオニアの宿命だろう。これまでのようなメーターではなく、5つのスクリーンを水平に配置する。中央に12.3インチのワイドスクリーンHonda CONNECTディスプレイが二つ、ステアリングホイールの奥にスピードなどのモニター、両端にはそれぞれのサイドカメラミラーシステム(東京モーターショーの時はなかった)の画面が並ぶ。中央の二つのディスプレイは表示項目を入れ替えたり自分好みの壁紙に変えたりすることもできる。
 以上は標準仕様のeの仕様。上級のアドバンスになると、死角を補うマルチビューカメラ、液晶にもなるセンターカメラルームミラーシステム、8スピーカーのプレミアムサウンドシステムなどが加わり、アルミホイールのサイズは17インチに上がる。

万全の安全対策、高めの価格、年販たった1000台

 クラウドAI技術を使う通信機能のパーソナルアシスタントも備えている。「OK、ホンダ」と呼びかけると、モニター画面上で顔のイラストが動き、口頭で用件を依頼したり音声による返答を得られたりする。緊急サポートセンターへの接続も可能だ。
 駆動方式はRR(後輪駆動)で、後部にモーターを積む。前輪の最大切れ角が大きいから、小回りは軽自動車並みに利く。最小回転半径は、たとえば日産のリーフの5.4mに対してホンダeは4.3m(17インチタイヤのアドバンスでも)と、他モデルを圧倒する。その分、1回の充電で走れる距離は、ホンダe標準仕様が283km、アドバンスが259kmだからそんなに長いとは言えない。ただシティコミューターとしては十分だ。プラットフォームはEV専用。最高出力は標準仕様で136馬力、eアドバンスで154馬力。
 安全・安心装備にも抜かりはない。Honda SENSINGを標準装備する。ホンダeアドバンスにはホンダパーキングパイロットも標準装備。従来のタイプに比べて操作は簡単になった。モニター画面で駐車したい場所を選択してスイッチを押すと、この後は車両がアクセル/ブレーキ/ステアリング/シフト切り替えの操作を代行する。
 最後にもうひとつビックリ! それはプライスだ。標準仕様が451万円、アドバンスだと495万円。リーフよりもかなり高い。どんな人が買うのかもう一つ見えてこない。根っからのホンダ・ファンか、環境問題重視派か、それとも単なる新しモノ好きか? 販売計画台数は年に1000台。これもちょっと少なすぎる気がする。スタイルも含めてとっても魅力的な存在であるだけにそのあたりが気になる。
報告:神谷龍彦
写真:週刊カーアンドレジャー

昨年の東京モーターショーのプロトタイプにはサイドカメラミラーシステムはなかったような。

この「つるぴか」デザインはやはり新しさを引き連れてく来る。シンプル・イズ・モダーン?

5つのディスプレイを横に並べた。ちょっと戸惑うが新しい。手前のウッドパネルがシブイ

リアシートはこんな具合だから十分とはいえない。ロングドライブはきついかもしれない。

EV専用のプラットフォーム。すぐに台数が増えるわけではないから高くなるのはやむをえず。

リアにモーターを積み後輪を駆動する。フロアは少し高めになるが最小回転半径は小さい。


最終更新日:2020/09/06